非上場株式評価の完全ガイド!計算方法・注意点・最新の評価基準を解説

目次

1. 非上場株式評価とは?基本概念を解説

1-1. 非上場株式とは?上場株式との違い

非上場株式とは、証券取引所に上場していない企業の株式を指します。上場株式は市場で自由に売買されるため、市場価格が明確に存在しますが、非上場株式は市場での取引が限定されており、客観的な価格が存在しません。そのため、適正な評価方法を用いて株価を算定する必要があります。

上場株式と非上場株式の主な違いは以下の通りです。

項目上場株式非上場株式
売買の自由度高い(市場で自由に売買可能)低い(取引制限があることが多い)
価格の透明性高い(市場価格がある)低い(客観的な価格が不明確)
評価方法市場価格を基準に評価特定の算定方式で評価

1-2. 非上場株式の評価が必要となるケース

非上場株式の評価は、以下のようなケースで必要となります。

  • 相続・贈与の際の税務評価
  • M&Aや事業承継時の株価算定
  • 役員や従業員への株式譲渡
  • 投資家や金融機関向けの企業価値算定

税務上の評価が関わる場合は、財産評価基本通達に基づいた評価方法を採用する必要があります。一方、M&Aなどの場面では、DCF法やマルチプル法といった別の評価手法も用いられることがあります。

DCF法とは、ディスカウントキャッシュフロー法の略語で、日本語では「割引現在価値法」と訳されます。DCF法は、株式価値を算定するうえで広く用いられており、主要な方法の一つです。

DCF法とは? M&Aキャピタルパートナーズ株式会社

マルチプル法とは、企業価値評価(バリュエーション)手法のひとつで、上場している類似企業の株価などを参考に、売上や利益などのKPI(重要業績評価指標)に倍率をかけて、企業の相対的な価値を求める方法。マーケットの価格を反映しているマーケットアプローチをとることから、比較的客観性が高いと考えられている。

マルチプル法 グロービス経営大学院大学

1-3. 非上場株式評価の重要性と影響

非上場株式の評価は、税務申告の正確性や事業承継のスムーズな進行に大きく影響します。例えば、相続税や贈与税の計算において株式の評価額が適正でないと、税務調査の際に追徴課税を受けるリスクがあります。また、M&A時には評価額の違いが買収価格や交渉結果に影響を与えるため、適正な評価が不可欠です。

2. 非上場株式の評価方法と計算基準

2-1. 財産評価基本通達とは?評価の基本ルール

財産評価基本通達とは、国税庁が定める相続税や贈与税の計算における財産の評価ルールです。非上場株式の評価も、この通達に基づいて行われます。

評価方法として、以下の3つの方式が定められています。

  1. 類似業種比準方式(同業種の上場企業と比較する方法)
  2. 純資産価額方式(会社の純資産を基準にする方法)
  3. 併用方式(上記2つを組み合わせる方法)

会社の規模や状況に応じて、適用される方式が異なります。

2-2. 類似業種比準方式とは?計算方法と適用条件

類似業種比準方式は、評価対象の会社と類似する上場企業の財務指標をもとに株価を算定する方法です。具体的には、以下の指標を比較して評価します。

  • 配当金額
  • 利益額
  • 純資産額

これらを基準に、国税庁が公表する「類似業種の比準価額」を用いて計算します。この方式は、主に中規模以上の企業に適用されます。

2-3. 純資産価額方式とは?計算方法と適用条件

純資産価額方式は、企業の純資産(資産-負債)を基に評価する方法です。企業の実態を反映しやすいため、小規模企業や資産保有型企業に適用されます。

計算式は以下の通りです。

純資産価額 =(総資産 − 総負債) ÷ 発行済株式数

2-4. 併用方式とは?適用されるケースと計算例

併用方式は、類似業種比準方式と純資産価額方式を組み合わせて評価する方法です。

例えば、中小企業の場合、類似業種比準方式を70%、純資産価額方式を30%の割合で評価するケースが一般的です。

2-5. 企業の特殊性による評価の調整方法

企業ごとの特殊性(赤字経営、業種特性、成長性など)を反映させるため、一定の調整を行うことがあります。

3. 非上場株式の評価に影響を与える要因

非上場株式の評価額は、さまざまな要因によって変動します。財務状況、事業内容、経営権の割合、株主構成 など、評価の基準となるポイントを理解することが重要です。本章では、非上場株式の評価に影響を与える主要な要因について詳しく解説します。

3-1. 企業の財務状況と純資産の影響

企業の財務状況は、株式の評価額に大きな影響を及ぼします。特に、純資産価額方式を採用する場合は、企業の純資産(資産総額-負債総額)がそのまま評価額に反映 されるため、財務状態の健全性が重要です。

(1)純資産が多い場合

企業が多くの資産を保有しており、負債が少ない場合、純資産価額方式による評価額は高くなります。例えば、不動産や金融資産を多く持つ企業では、株式の評価額が高騰する傾向にあります。

(2)負債が多い場合

一方で、負債が多い場合は純資産が減少するため、評価額は低くなります。特に、銀行借入や社債などの負債が多い企業は、純資産価額方式での評価額が低くなる傾向 があります。

(3)利益の推移と将来性

類似業種比準方式では、企業の利益額も評価に影響 します。利益が増加傾向にある企業は、評価額も高くなります。一方で、赤字が続く企業では評価額が下がる ことが多いため、経営改善が求められます。

3-2. 事業内容と業種ごとの評価基準の違い

非上場企業の事業内容によっても、評価額に違いが生じます。特に、業種ごとに利益率や成長性が異なるため、評価基準が変わる点に注意 しましょう。

(1)利益率の高い業種は評価が高くなる

例えば、IT企業や製薬業界など、高い利益率を持つ業種は、類似業種比準方式で評価額が上がる傾向 にあります。これらの企業は、少ない投資で高い利益を生み出せるため、投資価値が高いと判断されるからです。

(2)資産保有型企業の評価は純資産に依存する

不動産業や金融業など、資産を多く保有する企業は、純資産価額方式での評価が高くなりやすい です。そのため、業種ごとに適用する評価方法を見極めることが重要です。

(3)成長性の高い業種は評価方法の選定が重要

成長産業(例:AI、バイオテクノロジーなど)では、利益よりも将来の成長性が評価されるため、DCF法やベンチャーキャピタル方式が用いられることもあります。

3-3. 経営権・議決権の割合による評価の変動

非上場株式の評価において、経営権や議決権の割合も重要な要素 です。同じ企業の株式でも、経営権を持つ株式と、単なる少数株主の株式では評価額が大きく異なる ことがあります。

(1)支配権のある株式は評価が高くなる

企業の経営権を握る株式(発行済株式の50%以上を保有するなど)は、通常の評価額にプレミアムが加算される ケースが多いです。支配権を持つ株式には、会社の意思決定に直接関与できるメリットがあるため、価値が高くなります。

(2)少数株主の株式は評価が低くなる

一方で、少数株主(10%未満など)の株式は、市場で売却が困難なため、評価が低くなる 傾向にあります。特に、非上場企業では市場流動性が低いため、少数株主の株式を売却するのが難しいことが要因です。

(3)株主間契約の影響

企業によっては、株主間で「売却制限」や「優先買取権」を定めた契約がある場合があります。このような契約がある場合、株式の流動性が低くなるため、評価額にマイナスの影響を与える可能性 があります。

3-4. 株主構成と市場での取引可能性

非上場株式の評価には、株主構成や市場での取引可能性も大きな影響 を及ぼします。

(1)オーナー企業の株式は市場性が低い

非上場企業の多くは、創業者やその家族が株式を保有しているケースが一般的です。このようなオーナー企業の株式は、第三者への売却が難しいため、評価額が下がることが多い です。

(2)株式の流動性が評価額に影響する

市場で売買しやすい株式は評価が高くなりますが、非上場株式は市場での流動性が低いため、市場流動性リスクを加味して評価が低くなるケースが多い です。

(3)上場準備中の企業の株式は評価が上がる

非上場企業でも、IPO(株式上場)を予定している企業の株式は、市場性が高まるため、評価額が上がることが多い です。IPO予定企業の株式は、将来的に上場株式として取引できる可能性があるため、高い評価がつくことがあります。

4. 非上場株式の評価に関する実務と注意点

4-1. 税務上の評価と実際の売買価格の違い

非上場株式の評価は、税務上の算定額と実際の売買価格が大きく異なることがよくあります。その理由を理解し、適切に対応することが重要です。

本記事は一般論に基づいて記述されています。個別案件ごとの対応に関しては税理士業務の範囲となります。

(1)税務上の評価額の算定方法

税務上、相続税や贈与税の計算において、非上場株式の評価は「財産評価基本通達」に基づいて行われます。主な評価方法は以下の3つです。

  • 類似業種比準方式:類似する上場企業の株価を基準に評価
  • 純資産価額方式:企業の純資産を基準に評価
  • 併用方式:上記2つの方式を組み合わせた評価

これらの方法は、企業の市場価値ではなく、税務上の基準に従って評価されるため、実際の売買価格と差が生じやすい です。

(2)実際の売買価格との違い

非上場株式の実際の売買価格は、市場での需要や交渉によって決まるため、税務上の評価額より高くなることも低くなることもあります。特に以下の要因が価格に影響します。

  • 買い手の意向:M&Aでは、買収企業が戦略的に高い価格を提示する場合がある。
  • 企業の将来性:成長性が高い企業は、DCF法などを用いた評価で高額になるケースが多い。
  • 支配権の有無:株式の持分割合によって価格が変動する。

特に、M&Aや事業承継における株式売買では、税務評価額と実際の売却額が大きく異なることが多いため、慎重に対応する必要があります。

4-2. M&Aや事業承継時の株価算定のポイント

M&Aや事業承継の際の非上場株式の評価には、税務上の評価とは異なるアプローチが求められます。

(1)M&Aにおける評価ポイント

M&Aでは、企業の将来性や収益力を重視 して評価が行われます。主な評価方法には以下があります。

  • DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法):将来のキャッシュフローを現在価値に割り戻して評価
  • マルチプル法(倍率法):EBITDA(税引前利益+減価償却費)などの指標に業界平均の倍率を掛ける
  • 純資産法:企業の純資産を基準に評価

特に、成長企業やスタートアップ企業ではDCF法が用いられることが多く、税務上の評価額よりも高額になることが一般的 です。

時価純資産法とは、企業買収における主たる企業評価方法のひとつであるコストアプローチの計算手法である。具体的には、企業が保有する資産及び負債を基準日時点の時価に換算し、資産から負債を差し引いた純資産を企業価値とみなす。

時価純資産法とは? M&Aキャピタルパートナーズ

(2)事業承継時の評価のポイント

事業承継では、後継者に株式をスムーズに引き継ぐため、評価額のコントロールが求められます。税負担を抑えるためには、以下のような方法が考えられます。

  • 事業承継税制の適用:一定の要件を満たすことで、贈与税・相続税の納税が猶予される。
  • 非上場株式の評価額を引き下げる工夫:配当の抑制、負債の増加などを通じて評価額を下げる方法。

4-3. 相続税・贈与税における非上場株式評価の注意点

相続税や贈与税の計算では、非上場株式の評価額が税額に大きな影響を与える ため、適切な評価方法を選ぶことが重要です。

(1)相続時の評価方法の選定

相続税の計算において、会社の規模に応じた評価方法を選ぶ必要があります。特に中小企業では、類似業種比準方式と純資産価額方式の比率を調整することがポイントです。

(2)贈与税対策

贈与税の負担を軽減するため、事前に株式を分散して贈与する方法 も考えられます。

5. 非上場株式評価に関する最新動向と法改正

非上場株式の評価は、税制改正や経済環境の変化によって大きく影響を受ける分野 です。特に、事業承継に関する税制改正は、中小企業経営者にとって重要なテーマとなります。本章では、最新の税制改正のポイントと、事業承継税制の活用法 について詳しく解説します。

5-1. 最新の税制改正情報

近年、国は中小企業の円滑な事業承継を促進するために、非上場株式の評価や相続・贈与税の取り扱いに関する税制改正を進めています。 特に、以下のポイントに注目する必要があります。

(1)事業承継税制の特例措置の延長・拡充

2018年の税制改正により、事業承継税制の特例措置が創設 されました。この制度は、一定の条件を満たせば、非上場株式の相続税・贈与税の100%納税猶予が認められる というものです。

当初は2027年12月31日まで に贈与・相続が行われる場合に適用される予定でしたが、2024年の税制改正により、適用期間の延長や条件の見直しが検討されています。

主な変更点は以下の通りです。

項目旧制度(2018年改正)最新の改正ポイント(2024年)
適用期間2027年12月31日まで延長の可能性あり
対象株式数先代経営者の保有株式全て一部制限の可能性あり
継続要件5年間の雇用維持義務緩和の方向性
申請期限2023年3月31日までの計画提出延長の可能性あり

事業承継税制を活用する際は、今後の税制改正動向をチェックし、専門家と相談しながら計画的に進めることが重要 です。

(2)相続税・贈与税の評価ルールの見直し

2024年の税制改正では、相続税や贈与税の負担を適正化するために、非上場株式の評価方法が一部見直される予定 です。特に、類似業種比準方式における評価指標の見直しや、純資産価額方式の算定基準の変更が検討されています。

また、事業承継の際に株式を低い評価額で後継者に譲渡するための方法(株式分割、種類株式の活用など)に対する税務上の取扱いも厳格化される可能性 があります。

このような改正により、過去に用いられていた節税策が適用できなくなるリスクがあるため、最新の税制情報を踏まえた対応が求められます。

(3)M&Aや企業再編に関する優遇税制の拡充

中小企業のM&Aを促進するために、株式譲渡や事業承継に関する税制優遇措置も拡充 されています。例えば、以下のような改正が進んでいます。

  • 事業承継時のM&Aにおける税負担の軽減措置
  • 親族外承継(第三者承継)への支援策の強化
  • ベンチャー企業のM&A促進のための株式評価の柔軟化

これらの動向を踏まえると、事業承継を親族間で行うか、第三者へのM&Aとして実施するかを慎重に検討する必要 があります。

5-2. 事業承継税制の活用法

事業承継税制の特例措置を活用することで、非上場株式の相続税・贈与税の負担を大幅に軽減できる 可能性があります。ただし、適用にはいくつかの要件があるため、事前準備が必要です。

(1)事業承継税制の基本的な仕組み

事業承継税制を適用すると、相続や贈与によって取得した非上場株式の納税が猶予され、一定の条件を満たせば最終的に免除される 仕組みになっています。

具体的には、以下の流れで手続きを進める必要があります。

  1. 事業承継計画の提出(都道府県に申請)
  2. 非上場株式の贈与・相続の実施
  3. 一定期間(5年~10年)の事業継続要件を満たす
  4. 株式を売却せず、後継者が経営を続けることで納税免除

(2)事業承継税制を活用する際の注意点

① 事業承継計画の早期提出が必要

事業承継税制を利用するには、事前に「事業承継計画」を都道府県に提出し、承認を受ける必要 があります。提出期限を過ぎると適用を受けられないため、早めに準備することが重要です。

② 雇用維持要件の緩和の可能性

従来、事業承継税制を適用するには5年間の雇用維持義務(従業員の8割以上の雇用継続)が求められていましたが、経済状況を考慮して要件の緩和が進められています。

③ 株式の売却や事業の廃止に注意

事業承継税制を適用した後、株式を売却したり、事業を廃止したりすると、納税猶予が取り消され、過去の税金を一括納付する必要が生じる可能性 があります。そのため、長期的な視点で承継計画を立てることが求められます。

6. 非上場株式評価に関するよくある質問

Q1. 相続税や贈与税を考えると、できるだけ評価額を低く抑えたいのですが、方法はありますか?

A. はい、いくつかの方法で評価額を抑えることが可能です。 非上場株式の評価額を抑えることで、相続税や贈与税の負担を軽減 できます。以下の方法が有効です。

(1)純資産価額を下げる

非上場株式の評価方法の一つである「純資産価額方式」では、会社の純資産(総資産-総負債)を基準に評価額が決まります。 そのため、以下の対策が考えられます。

  • 余剰資産(現預金・不動産など)を事業投資に活用する
  • 借入を増やして負債を増加させる
  • 役員退職金の支払いなどで資産を減少させる

(2)類似業種比準方式の評価を下げる

「類似業種比準方式」では、配当額・利益額・純資産額を基準に評価が行われるため、これらの指標を調整することで評価額を抑えることが可能 です。

  • 配当を抑える(無配当とする) → 配当が少ないほど評価額は低くなる
  • 利益を調整する → 役員報酬の増額や設備投資を行い、利益額を抑える

相続税・贈与税算定のベースとなる非上場株式の評価額を求める方式。評価対象と類似業種の上場企業株価の平均値に、課税年の類似業種1株当たりの配当金額、利益金額、簿価純資産価額の3項目について各値を評価対象と比較した結果を掛け合わせて評価額を計算する。

類似業種比準方式 野村證券

(3)少数株主割引を活用する

非上場株式は、支配権を持たない少数株主の株式の流動性が低いため、通常より低い評価額が適用されることがある ため、以下の対策が有効です。

  • 複数の相続人に分散して株式を相続させる → 少数株主となり、評価額が抑えられる
  • 議決権のない種類株式を発行する → 支配権を持たない株式の評価額は低くなる

Q2. 相続税対策を考えた場合、非上場株式の評価基準はどのように活用できますか?

A. 相続税対策としては、評価方法を適切に選び、事業承継税制の特例を活用することが重要です。

(1)評価方法の選択

相続税の計算には、企業の規模に応じて評価方法が異なる ため、最適な方法を選択することが重要です。

  • 大規模法人(従業員100人以上) → 類似業種比準方式 が適用されやすい
  • 中小規模法人(従業員100人未満) → 併用方式(純資産価額方式+類似業種比準方式) が適用されることが多い
  • 小規模法人(個人経営に近い) → 純資産価額方式が基本

(2)事業承継税制の活用

相続税の負担を軽減するために、事業承継税制の特例を活用することで、非上場株式の相続税が100%納税猶予される可能性 があります。

  • 5年間の事業継続要件を満たす
  • 雇用維持要件(従業員の8割以上を維持)を満たす
  • 一定期間株式を売却しない

適用条件を満たせば、最終的に相続税が免除されるケースもあるため、計画的な活用が必要 です。

Q3. M&Aを検討しているのですが、非上場株式の評価はどのように行われますか?

A. M&Aの際の株価算定方法は、税務評価とは異なり、企業価値をより市場に近い形で評価する必要があります。 主に以下の方法が用いられます。

(1)DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)

DCF法は、将来のキャッシュフローを現在価値に割り戻して評価する方法 であり、特に成長企業のM&Aでは一般的に採用されます。

企業価値 = 将来のキャッシュフロー ÷ 割引率

将来の事業計画や市場環境を考慮し、成長性の高い企業では高い評価額になる傾向 があります。

(2)マルチプル法(倍率法)

マルチプル法では、企業の利益(EBITDA)や売上高に業界平均の倍率をかけて評価 します。

企業価値 = EBITDA × 業界平均の倍率(マルチプル)

例えば、IT業界ではEBITDAの10倍程度 で評価されることが一般的です。

(3)純資産法(簿価純資産+α)

純資産法では、会社の純資産(資産-負債)を基準に評価 します。これは、資産保有型企業(不動産業など)で採用されることが多い です。

  • 純資産額が大きい企業では評価が高くなる
  • 成長性が低い企業では、純資産価額にプレミアムがつきにくい

(4)市場比較法(上場企業との比較)

類似業種の上場企業と比較し、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)を参考に評価 する方法です。

株価 = 類似企業のPER × 自社の利益

M&Aの際は、これらの評価方法を組み合わせて算定することが一般的です。

まとめ|適正な非上場株式評価を行い、円滑な取引を実現しよう

非上場株式の評価額は、企業の財務状況、事業内容、経営権の割合、株主構成、取引可能性 など、さまざまな要因によって変動します。特に、

  1. 財務状況が良い企業ほど評価が高くなる
  2. 成長産業や高収益企業は評価が上がる
  3. 支配権のある株式はプレミアムがつく
  4. 少数株主の株式は流動性が低く、評価額が下がる
  5. 株主間契約や取引制限がある場合、評価に影響を与える

これらの要素を総合的に考慮し、適正な評価方法を選定することが重要です。適正な評価を行うことで、税務上のリスクを軽減し、M&Aや事業承継をスムーズに進めることが可能になります。