株式の相続は、預貯金の相続とは異なる注意点があります。
証券会社への連絡や名義変更だけでなく、株価変動や税金、売却タイミングなど、株式特有の問題が関係するためです。
特に近年は、ネット証券やペーパーレス化が進み、家族が証券口座の存在に気付かないケースも増えています。
また、被相続人の死亡を証券会社へ連絡すると、原則として証券口座は凍結されます。
そのため、株価急落時に売却できなかったり、TOBや上場廃止リスクに対応できないこともあります。
さらに、株式は相続税の対象になるだけでなく、相続後に売却すると譲渡所得税が発生する場合もあります。
この記事では、株式相続の流れから、
- 証券口座の探し方
- 必要書類
- 名義変更
- 売却時の注意点
- 相続税・譲渡所得税
まで、実務ベースで分かりやすく解説します。、落ち着いて一つずつ対応していきましょう。

目次
①株式相続とは?まず知っておきたい全体像
株式の相続は、預貯金の相続とは異なる注意点があります。
預金であれば金額は基本的に変動しませんが、株式は日々価格が変動するためです。
また、証券会社ごとに手続き方法が異なり、相続税や売却時の税金も関係してきます。
さらに近年は、ネット証券やペーパーレス化が進み、家族が証券口座の存在に気付かないケースも増えています。
株式相続では、
- どこの証券会社に口座があるのか
- どの銘柄を保有しているのか
- 誰が相続するのか
- 売却するのか保有するのか
を整理しながら進める必要があります。
また、被相続人の死亡を証券会社へ連絡すると、原則として証券口座は凍結されます。
そのため、相続手続き中は自由に売買できなくなり、株価急落やTOB(株式公開買付け)などの市場変動へ対応できないケースもあります。
TOBでは、市場価格より2割前後高い価格で買付けが行われることも少なくありません。
一方で、TOBに応じなかった場合は、その後に上場廃止となり、市場で自由に売却できなくなるケースもあります。
相続手続き中は、こうした重要な判断や売却対応が間に合わない可能性もあるため注意が必要です。
まずは、株式相続が「単なる名義変更」ではなく、税務や市場リスクも関係する手続きであることを理解しておくことが大切です。
株式相続は預貯金の相続より複雑になりやすい
株式は、預貯金より相続手続きが複雑になる傾向があります。
理由の一つが、「価格が常に変動する資産」であることです。
例えば、遺産分割協議の時点では公平に分けたつもりでも、その後の株価変動によって相続人間で不公平感が生じることがあります。
また、相続税評価や売却時の譲渡所得税など、税務上の論点も多くあります。
さらに、証券会社ごとに必要書類や手続き方法が異なるため、複数の証券会社に口座がある場合は想像以上に時間がかかることもあります。
証券口座が分からないケースも増えている
近年は、ネット証券やペーパーレス化の普及により、家族が証券口座の存在に気付かないケースも少なくありません。
以前のように大量の郵送物が届かないことも多く、
- スマートフォンの証券アプリ
- Gmailなどのメール履歴
- 配当金通知書
- 確定申告書
などから、初めて証券口座の存在が判明することもあります。
また、証券会社のカレンダーやタオルなど、ノベルティが手がかりになるケースもあります。
株式相続では、まず「どこに口座があるのか」を把握することが重要です。
株式相続は「時間との戦い」になりやすい
株式相続では、時間が経つほど不利になるケースがあります。
被相続人の死亡を証券会社へ連絡すると、原則として証券口座は凍結され、相続手続きが完了するまで売却できなくなることが一般的です。
その間に、
- 株価が急落する
- 監理ポスト入りする
- TOBが実施される
- 継続企業の前提に関する注記(GC注記)が開示される
といったことが起こる可能性もあります。
監理ポスト入りは、上場廃止リスクが高まっている状態を指し、GC注記は企業の経営継続に重要な不確実性がある場合に付されるものです。
これらが公表されると、株価が大きく下落することも少なくありません。
相続手続き中は売却や対応ができない状態になることもあるため、こうした市場リスクにも注意が必要です。
また、相続税申告は原則として10か月以内、準確定申告は4か月以内と期限が決まっています。
株式相続では、証券会社の確認や必要書類の収集に時間がかかることも多いため、早めに全体像を整理して動き始めることが大切です。
②株式相続でまず確認すること
株式相続では、まず「どこの証券会社に口座があるのか」を確認することが重要です。
証券口座が判明しないままでは、保有株式や投資信託の内容も確認できず、相続手続きを進めることができません。
特に近年は、ネット証券やペーパーレス化が進み、家族が証券口座の存在を把握していないケースも増えています。
そのため、まずは証券口座の有無や、利用している証券会社を整理するところから始めましょう。
証券口座を把握している場合
すでに利用している証券会社が分かっている場合は、まず証券会社へ相続発生を連絡します。
被相続人が亡くなったことを証券会社へ伝えると、原則として証券口座は凍結されます。
その後、証券会社から相続手続きに必要な書類が案内される流れが一般的です。
なお、証券会社によって、
- 必要書類
- 手続き方法
- 手続き完了までの期間
は異なる場合があります。
また、相続人が証券口座を持っていない場合は、新たに口座開設が必要になるケースもあります。
証券口座が分からない場合の探し方

どこの証券会社を利用していたか分からない場合は、被相続人の身の回りを確認していきます。
近年はネット証券利用者も多いため、「紙の通帳や証券資料が見当たらない=口座がない」とは限りません。
まずは、
- 過去の郵便物
- メール履歴
- スマートフォン
- 確定申告書
などを確認していきましょう。
また、遺言書やエンディングノートに証券口座が記載されているケースもあります。
行政書士へ遺言作成を依頼していた形跡がある場合は、遺言書が作成されている可能性もあります。
配当金通知書や株主優待が手がかりになる
株式を保有している場合、企業から配当金通知書や株主優待案内が届くことがあります。
これらの郵送物から、
- どの会社の株式を持っているか
- 株主番号
- 管理信託銀行
などが分かるケースがあります。
また、企業のIR部門や株主名簿管理人へ相続人として問い合わせることで、手続き先の案内を受けられる場合もあります。
さらに、証券会社のカレンダーやタオル、メモ帳などのノベルティが残っているケースもあり、利用していた証券会社を推測する手がかりになることがあります。
スマホアプリやメール履歴も確認する
ネット証券では、スマートフォンアプリが証券口座の手がかりになることもあります。
被相続人のスマートフォンに、SBI証券や楽天証券、マネックス証券などのアプリがインストールされていれば、証券口座を保有している可能性があります。
また、「取引報告書」「配当金のお知らせ」「特定口座年間取引報告書」といったメールが届いていないかも確認してみましょう。
ほふり(証券保管振替機構)へ照会する方法
どうしても証券会社が分からない場合は、「ほふり(証券保管振替機構)」へ照会する方法もあります。
ほふりでは、被相続人名義の証券口座が、どこの証券会社で開設されているかを確認できる制度があります。
ただし、
- 手数料がかかる
- 回答まで時間がかかる
- 口座の詳細までは分からない
といった点には注意が必要です。
そのため、まずは郵送物やスマートフォン、メール履歴などから確認を進め、それでも不明な場合に利用を検討するとよいでしょう。
③株式相続の流れ

株式相続では、証券会社への連絡、相続人の確認、必要書類の準備、名義変更や売却、税務対応を順番に進めます。
まずは全体の流れを把握しておきましょう。
口座が分からない場合は郵便物・メール・スマホアプリなどを確認
相続発生を伝えると口座が凍結されるのが一般的
戸籍収集や遺言書の有無を確認
誰が株式を相続するか決める
戸籍謄本、印鑑証明書、遺産分割協議書など
相続人名義の証券口座へ移す
実務上は換価分割も多い
相続税は10か月、準確定申告は4か月以内
このように、株式相続は単に証券会社へ連絡すれば終わる手続きではありません。
また、相続税申告は原則として10か月以内、準確定申告は4か月以内と期限が決まっているため、早めに全体像を整理することが大切です。
各ステップのうち、特に重要なポイントについては、以下の章で詳しく解説します。
また、名義変更や売却手続きは証券会社ごとに進め方が異なるため、個別の証券会社ごとの手続きについては関連記事もあわせて確認してください。
STEP1:口座のある証券会社を確認する
証券口座の有無を確認します。詳細は前セクション「どこの証券会社に口座があるのか」をご確ください
STEP2:証券会社へ連絡して口座を凍結する
証券口座が判明したら、まず証券会社へ相続発生を連絡します。
被相続人が亡くなったことを伝えると、原則として証券口座は凍結され、売買や出金ができなくなります。
これは、相続人間のトラブルや不正取引を防ぐためです。
口座凍結による注意点や市場リスクについては、後述する「すぐ売れない問題」で詳しく解説します。
STEP3:相続人と遺言書を確認する
株式相続では、誰が相続人になるのかを確認する必要があります。
戸籍謄本などを取得し、法定相続人を確定していきます。
また、遺言書がある場合は、その内容に従って相続手続きを進めることになります。
遺言書によっては、特定の株式を誰が相続するか指定されているケースもあります。
遺言書の有無によって必要書類や手続きの流れが変わることもあるため、早い段階で確認することが重要です。
STEP4:遺産分割協議を行う
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行います。
株式は預貯金と異なり価格が変動するため、「誰がどの株式を取得するか」で意見が分かれることも少なくありません。
分け方としては、株式を売却して現金化したうえで分配する方法や、特定の相続人がそのまま引き継ぐ方法などがあります。
実務上は、売却して現金化し、相続割合に応じて分配する「換価分割」が選ばれるケースも多く見られます。
また、一人が株式を取得し、他の相続人へ現金を支払う「代償分割」が行われることもあります。
STEP5:必要書類を準備する
遺産分割協議がまとまった後は、証券会社へ提出する必要書類を準備します。
一般的には、戸籍謄本、印鑑証明書、遺産分割協議書、本人確認書類などが必要になります。
ただし、必要書類や手続き方法は証券会社によって異なる場合があります。
証券会社ごとの相続手続きについては、以下の記事で詳しく解説しています。
STEP6,7:名義変更または売却手続きを進める
遺産分割協議がまとまった後は、証券会社で名義変更や移管手続きを進めます。
名義変更や移管手続きが完了した後は、相続人名義でそのまま保有を続けることもできますし、売却して現金化することもできます。
実務上は、相続人同士で分けやすくするため、売却して現金化するケースも少なくありません。
なお、相続後に株式を売却した場合は、譲渡所得税が発生するケースがあります。
特に、被相続人の取得費が分からない場合は、税負担が大きくなる可能性もあるため注意が必要です。
STEP8:相続税申告・準確定申告を行う
株式は相続税の対象財産です。
相続税が発生する場合は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納税を行う必要があります。
また、被相続人の所得税については、準確定申告を4か月以内に行う必要があります。
株式相続では、株式評価や残高証明書の取得、譲渡所得の確認などに時間がかかることも少なくありません。
特に、複数の証券会社に口座がある場合や、古い株式で取得費が不明な場合は、想定以上に手続きが長引くケースもあります。
できるだけ早めに全体像を整理して進めることが大切です。
④株式相続で必要な書類一覧
株式相続では、証券会社へさまざまな書類を提出する必要があります。
必要書類は証券会社によって多少異なりますが、多くの場合、戸籍関係書類・本人確認書類・遺産分割に関する書類などが求められます。
特に株式相続は、預貯金の相続より必要書類が多くなる傾向があります。
これは、
- 相続人確認
- 遺言書確認
- 名義変更
- 相続税対応
など、複数の手続きを並行して進める必要があるためです。
一般的に必要となる書類は、以下のとおりです。
| 書類 | 主な用途 | 注意点 |
|---|---|---|
| 戸籍謄本 | 相続人の確定 | 出生から死亡まで必要な場合あり |
| 印鑑証明書 | 実印確認 | 発行期限が指定される場合あり |
| 遺産分割協議書 | 分割内容確認 | 相続人全員の実印押印が必要 |
| 遺言書 | 相続内容確認 | 自筆証書遺言は検認が必要な場合あり |
| 本人確認書類 | 本人確認 | マイナンバー提出を求められる場合あり |
| 証券会社所定書類 | 名義変更・移管 | 証券会社ごとに異なる |
遺言書がある場合は、遺産分割協議書が不要になるケースもあります。
また、法定相続情報一覧図を利用することで、戸籍謄本提出を一部省略できる場合もあります。
なお、相続人が海外在住の場合や、未成年者がいる場合などは、追加書類が必要になるケースもあります。
証券会社ごとに必要書類や手続き方法が異なるため、詳細は各証券会社の案内を確認することが重要です。
証券会社ごとの相続手続きについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
⑤株式相続で注意したい「すぐ売れない」問題

株式相続では、被相続人が亡くなったことを証券会社へ連絡すると、原則として証券口座は凍結されます。
口座凍結後は、相続手続きが完了するまで売買や出金ができなくなることが一般的です。
預貯金の相続ではあまり意識されませんが、株式は日々価格が変動する財産です。
そのため、相続手続き中に株価が大きく変動し、相続人に不利益が生じるケースもあります。
株式相続では、「名義変更の手続き」だけでなく、「売却できない期間が発生する」という点も理解しておくことが重要です。
口座凍結後は売却できなくなる
証券会社へ相続発生を連絡すると、被相続人名義の証券口座は凍結されます。
これは、相続人間のトラブルや不正取引を防ぐためです。
一方で、相続手続きが完了するまでは、原則として株式を自由に売却することができません。
特にネット証券では、家族がIDやパスワードを把握しているケースもありますが、正式な相続手続きを経ずに取引を行うことには注意が必要です。
状況によっては、不当利得や不法行為に該当すると主張されるリスクもあります。
株価下落リスクと相続税評価額のズレ
株式相続では、「相続税評価額」と「実際に売却できる価格」が一致するとは限りません。
相続税は、原則として死亡日時点や、その前後数か月の株価を基準に評価されます。
しかし、相続手続き中に株価が大きく下落した場合でも、すぐに売却して対応することはできません。
その結果、
- 相続税は高い株価で計算された
- 実際に売却した時には大幅に値下がりしていた
というケースも起こり得ます。
特に、相続税の納税資金を株式売却で確保しようとしている場合は注意が必要です。
上場株式の評価方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。
相続における株式評価のすべて
TOBや上場廃止リスクに対応できないことがある
相続手続き中は、TOB(株式公開買付け)などの重要な市場イベントへ対応できないケースがあります。
TOBでは、市場価格より2割前後高い価格で買付けが行われることも少なくありません。
一方で、TOBに応じなかった場合は、その後に上場廃止となり、市場で自由に売却できなくなるケースもあります。
また、監理ポスト入りや、継続企業の前提に関する注記(GC注記)が開示されるケースもあります。
監理ポスト入りは、上場廃止リスクが高まっている状態を指し、GC注記は企業の経営継続に重要な不確実性がある場合に付されるものです。
これらが公表されると、株価が大きく下落することも少なくありません。
相続手続き中は売却や対応ができない状態になることもあるため、こうした市場リスクにも注意が必要です。
納税資金が不足するケースもある
株式相続では、相続税の納税資金をどのように確保するかも重要です。
相続税申告は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。
一方で、株式相続では、
- 証券会社ごとの手続き
- 必要書類収集
- 遺産分割協議
- 名義変更
などに時間がかかるケースも少なくありません。
そのため、「株式を売却して納税しよう」と考えていても、売却まで間に合わないケースがあります。
特に、株価下落が重なった場合は、「相続税評価額より安い価格でしか売れない」という状況になることもあります。
株式相続では、手続きだけでなく、納税資金や市場変動リスクも含めて全体を整理しておくことが大切です。
⑥株式はどう分ける?揉めやすいポイント
株式相続では、「誰がどの株式を取得するか」で相続人同士の意見が分かれることがあります。
預貯金であれば単純に分けやすい一方で、株式は価格が日々変動するため、不公平感が生じやすい財産です。
また、
- 売却して現金化したい
- そのまま保有したい
- 配当収入を継続したい
など、相続人ごとに考え方が異なるケースも少なくありません。
そのため、株式相続では「どう分けるか」を慎重に検討する必要があります。

株式の主な分け方
株式相続では、株式を売却して現金化したうえで分配する方法や、株式をそのまま特定の相続人が引き継ぐ方法があります。
実務上は、株式を売却して現金化し、相続割合に応じて分配する「換価分割」が選ばれるケースも多く見られます。
株式は価格が日々変動するため、そのまま分けると不公平感が生じやすく、遺産分割後の値動きによってトラブルになることもあるためです。
特に、相続人が多い場合や、株式投資に詳しくない相続人がいる場合は、現金化して分けた方が話し合いを進めやすいケースがあります。
また、相続税の納税資金を確保したい場合や、特定銘柄を継続保有する予定がない場合にも、売却による分配は現実的な選択肢になります。
一方で、将来的な値上がりを期待して長期保有したい場合や、配当収入を継続して受け取りたい場合には、株式をそのまま引き継ぐケースもあります。
さらに、非上場株式や自社株の場合は、事業承継の観点から後継者がそのまま取得することも少なくありません。
また、一人が株式を取得し、他の相続人へ現金を支払う「代償分割」が行われることもあります。
非上場株式の相続については、以下の記事で詳しく解説しています
非上場株式の相続と評価のすべて
株式相続で揉めやすいポイント
株式相続で特に揉めやすいのが、株価変動による不公平感です。
例えば、遺産分割協議の時点では公平に分けたつもりでも、相続後に株価が急騰したり、大きく値下がりしたりすることで、「あの時こう分けるべきだった」と不満につながるケースがあります。
また、相続手続きが長引いている間に株価が大きく変動することもあります。
株式は預貯金のように金額が固定されている財産ではありません。
そのため、どの時点の価格を基準にするのか、売却して現金化するのか、それとも現物のまま引き継ぐのかを、相続人全員が理解した上で話し合うことが大切です。
また、被相続人の証券口座にログインできる状態だったとしても、相続手続きが完了する前に勝手に売却することは避けるべきです。
相続開始後の財産は、原則として相続人全員の共有財産になります。
そのため、一部の相続人だけで売却を進めてしまうと、遺産分割トラブルや使途不明金問題、税務上の問題へ発展する可能性があります。
また、状況によっては、不当利得や不法行為に該当すると主張されるリスクもあります。
特にネット証券では、家族がID・パスワードを把握しているケースもありますが、正式な相続手続きを経ずに取引を行うことには注意が必要です。
⑦株式相続の税金|相続税と譲渡所得税

株式相続では、「相続した時」と「売却した時」で関係する税金が異なります。
| タイミング | 主な税金 | 内容 |
|---|---|---|
| 相続した時 | 相続税 | 相続財産全体に対してかかる税金 |
| 相続後に売却した時 | 譲渡所得税 | 株式の売却益に対してかかる税金 |
例えば、相続した株式をそのまま保有しているだけであれば、通常は譲渡所得税は発生しません。
一方で、相続後に株式を売却して利益が出た場合は、相続税とは別に譲渡所得税が発生する可能性があります。
そのため、「相続時の税金」と「売却時の税金」を分けて理解することが重要です。
また、株式は価格が日々変動するため、「どの価格で評価するのか」も重要になります。
ここでは、株式相続で押さえておきたい税金の基本を解説します。おきたい税金の基本を解説します。
相続税の対象になる
株式は、預貯金や不動産と同じく相続税の対象財産です。
相続税が発生する場合は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納税を行う必要があります。
相続税が発生するかどうかは、株式だけでなく、預貯金・不動産・生命保険などを含めた相続財産全体で判断されます。
なお、相続税には基礎控除があり、
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
までは相続税がかからない仕組みになっています。
ただし、株式は評価額が大きくなりやすいため、不動産や預貯金と合わせると基礎控除を超えるケースもあります。
上場株式の評価方法
上場株式は、相続開始日の価格だけで評価するわけではありません。
一般的には、
- 相続開始日の終値
- 相続開始月の月平均
- 前月の月平均
- 前々月の月平均
のうち、最も低い価格を基準として評価します。
株価が下落傾向にある場合は死亡日の終値が、上昇傾向にある場合は前々月平均が有利になるケースもあります。
相続税評価額の算出に必要な過去の株価は、証券会社や日本取引所グループのサイトなどで確認できます。
また、証券会社によっては、残高証明書へ評価額を記載してくれるケースもあります。
上場株式の評価方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。
相続における株式評価のすべて
投資信託・ETF・NISA口座の扱い
証券口座の中では、株式だけでなく、投資信託やETFを保有していることもあります。
投資信託やETFは、株式と同じく相続財産に含まれ、相続税の対象になります。
投資信託は、通常、相続日時点の基準価額をもとに評価します。ETFは証券取引所に上場している金融商品であるため、上場株式に準じた評価方法が用いられることが一般的です。
一方、NISAは金融商品の種類ではなく、株式や投資信託などを非課税で保有するための口座制度です。
そのため、被相続人がNISA口座で株式や投資信託を保有していた場合でも、その金融商品自体は相続の対象になります。
ただし、NISAの非課税枠そのものを相続人が引き継ぐことはできません。相続発生後は、相続人の通常の課税口座へ払い出される扱いになります。
相続後に売却すると譲渡所得税がかかる
株式を相続したあとに売却した場合、譲渡所得税が発生する可能性があります。
これは、相続税とは別の税金です。
譲渡所得は、
売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
によって計算されます。
ここで重要なのが、「取得費は被相続人のものを引き継ぐ」という点です。
例えば、被相続人が非常に安い価格で購入していた株式の場合、相続人が売却すると利益が大きくなり、多額の譲渡所得税が発生することもあります。
株式の売却益には、原則として約20.315%(所得税・復興特別所得税・住民税)の税率がかかります。
また、取得費が不明な場合は、売却価格の5%を概算取得費として計算することになりますが、税負担が大きくなる可能性があります。
取得費加算の特例とは
相続した株式を売却する場合は、「取得費加算の特例」が使えるケースもあります。
これは、相続税として支払った金額の一部を、株式の取得費へ加算できる制度です。
取得費が増えることで売却益が小さくなり、譲渡所得税を軽減できる可能性があります。
例えば、
- 相続した株式を1,000万円で売却
- 被相続人の取得費が300万円
だった場合、通常は差額の700万円が譲渡所得の計算対象になります。
しかし、取得費加算の特例によって、相続税の一部を取得費へ加算できれば、課税対象となる利益を小さくできる可能性があります。
この特例を利用するためには、相続や遺贈によって取得した財産であることや、相続税申告を行っていることなど、いくつか条件があります。
また、売却時期にも制限があり、原則として相続開始日の翌日から、相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却する必要があります。
売却予定がある場合は、適用できるか事前に確認しておくことが重要です。
相続税と譲渡所得税は別の話
株式相続では、「相続税を払ったから、売却時の税金はかからない」と誤解されることがあります。
しかし、相続時には相続税、売却時には譲渡所得税というように、税金の種類が異なります。
そのため、相続税申告だけでなく、将来的な売却まで見据えて検討することが大切です。
特に、
- 相続した株式を売却予定
- 取得費が分からない
- 非上場株式が含まれる
- 相続税申告が必要
といったケースでは、早めに税理士へ相談した方が安心です。
⑧証券会社ごとの相続手続きの違い
株式相続では、基本的な流れ自体は共通していますが、必要書類や手続き方法は証券会社によって異なります。
特に近年は、SBI証券や楽天証券のようなネット証券と、野村證券やSMBC日興証券のような対面型証券会社で、対応方法が大きく異なるケースもあります。
また、相続人が証券口座を持っているか、遺言書があるか、相続人が複数いるかによっても、必要書類や手続き期間が変わることがあります。
そのため、株式相続では、まず「どこの証券会社を利用しているか」を早めに確認しておくことが重要です。会社を利用しているか」を早めに確認しておくことが重要です。
ネット証券の特徴
SBI証券や楽天証券、マネックス証券などのネット証券では、郵送中心で手続きを進めるケースが多く見られます。
店舗窓口がないため、電話やWebサポートを利用しながら必要書類を取り寄せる流れが一般的です。
また、相続人側にも証券口座開設を求められるケースがあります。
近年はネット証券利用者が増えている一方で、家族が口座の存在に気付きにくいという特徴もあります。
ネット証券の相続手続きについては、以下の記事で詳しく解説しています。
SBI証券の相続手続き
対面型証券会社の特徴
野村證券やSMBC日興証券などの対面型証券会社では、担当者と相談しながら進められるケースがあります。
相続専用窓口が設けられていることもあり、必要書類や流れについて説明を受けながら進めやすい点が特徴です。
一方で、担当支店とのやり取りが必要になることもあり、相続人が遠方に住んでいる場合は手間がかかるケースもあります。
対面型証券会社の相続手続きについては、以下の記事で詳しく解説しています。
証券会社によって異なるポイント
証券会社によって異なりやすいポイントとしては、
- 必要書類
- 書類の記入方法
- 相続人側の口座要否
- 手続き完了までの期間
- 書類返送方法
などがあります。
また、同じネット証券でも、必要書類の細かい運用が異なることがあります。
特に、相続人が複数いるケースや、未成年者・海外居住者が含まれるケースでは、追加書類が必要になることもあります。
株式相続では、「相続手続きはどこも同じ」と考えず、利用している証券会社ごとの案内を確認しながら進めることが大切です。
⑨株式相続でよくある失敗例

株式相続では、預貯金の相続とは異なるトラブルが発生することがあります。
特に近年は、ネット証券やペーパーレス化の影響で、家族が証券口座の存在に気付かないケースも増えています。
また、株式は価格が日々変動するため、「とりあえず後回し」にしている間に状況が大きく変わることもあります。
ここでは、株式相続で実際によくある失敗例を紹介します。
証券口座の存在に気付かなかった
近年は、ネット証券を中心に郵送物が少なくなっており、家族が証券口座の存在を把握していないケースも少なくありません。
その結果、
- 相続税申告後に証券口座が見つかる
- 配当金通知書や株主優待で初めて気付く
- 特定口座年間取引報告書から判明する
といったケースがあります。
証券口座が後から判明すると、相続税申告の修正が必要になることもあります。
特にネット証券では、紙の郵送物が少ないため、確定申告書や年末に届く書類なども重要な手がかりになります。
名義変更を後回しにしてしまった
株式相続では、「とりあえずそのままにしておこう」と考えてしまうケースもあります。
しかし、名義変更を長期間放置すると、
- 書類収集が困難になる
- 遺産分割協議が複雑化する
- 証券会社との手続き負担が増える
など、手続きがスムーズに進まなくなることがあります。
また、株式は価格が変動するため、放置中に大きく値下がりする可能性もあります。
さらに、被相続人名義のままでは、正式な売却や移管ができない状態が続くことになります。になります。
取得費が分からず税負担が増えた
相続株式を売却する際は、被相続人の取得費を引き継ぎます。
しかし、証券会社の移管や長期保有などにより、購入価格がすぐに確認できないケースもあります。
取得費が不明な場合は、売却価格の5%を概算取得費として計算することになります。
その結果、本来より譲渡所得税が高くなるケースがあります。
特に、長期間保有していた株式や、複数の証券会社を経由している株式では注意が必要です。
売却を予定している場合は、取引報告書や年間取引報告書などが残っていないか、早めに確認しておくことが大切です。ないか、早めに確認しておくことが大切です。
相続人同士で意見がまとまらなかった
株式相続では、
- 売却したい
- 保有を続けたい
- 配当収入を維持したい
- 株主優待を継続して受け取りたい
など、相続人ごとに考え方が分かれるケースがあります。
また、株価変動によって不公平感が生じやすいことも、株式相続特有の難しさです。
特に、特定の相続人だけが株式を取得する場合は、他の相続人とのバランスについて慎重に話し合う必要があります。
相続税申告に間に合わなかった
株式相続では、
- 証券会社の確認
- 必要書類収集
- 株式評価
- 遺産分割協議
などに時間がかかることがあります。
特に複数の証券会社に口座がある場合は、想定以上に手続きが長引くケースもあります。
相続税申告は原則として10か月以内、準確定申告は4か月以内と期限が決まっています。
そのため、「まだ大丈夫」と考えているうちに期限が迫ってしまうことも少なくありません。
また、相続税申告が期限に間に合わなかった場合は、延滞税や無申告加算税などの負担が発生する可能性があります。
さらに、小規模宅地等の特例や配偶者控除など、一部の特例が使えなくなるケースもあるため注意が必要です。
株式相続では、証券会社ごとの手続きや株式評価に時間がかかることもあるため、早めに全体像を整理し、必要に応じて専門家へ相談することが大切です。
⑩専門家に相談すべきケース
株式相続では、法律・税務・証券実務がそれぞれ関係するため、「誰に何を相談するべきか」を整理しておくことも重要です。
例えば、相続人同士で意見がまとまらないケースもあれば、相続税申告や株式評価が必要になるケースもあります。
また、証券会社ごとに必要書類や手続き方法が異なるため、想定以上に時間がかかることも少なくありません。
さらに、相続には期限が決まっている手続きもあります。
例えば、相続税申告は原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内、準確定申告は4か月以内に行う必要があります。
株式相続では、証券会社から残高証明書を取り寄せたり、株式評価を行ったりする必要があるため、「まだ大丈夫」と考えているうちに期限が迫ってしまうケースもあります。
そのため、迷った場合は早めに全体像を整理し、必要に応じて専門家へ相談することが大切です。
行政書士へ相談した方がよいケース
株式相続では、
- 遺産分割協議書作成
- 相続関係説明図作成
- 戸籍収集
- 証券会社提出書類整理
など、書類作成や手続きサポートが必要になることがあります。
また、遺言書の作成を生前に行政書士へ依頼していたケースでは、相続発生後の相談先としてつながることもあります。
相続人同士で争いがなく、手続きを整理しながら進めたい場合は、行政書士へ相談するケースもあります。
税理士へ相談した方がよいケース
株式相続では、相続税や譲渡所得税が関係するケースがあります。
特に、
- 相続税申告が必要
- 株式評価が複雑
- 非上場株式がある
- 相続後に売却予定がある
- 取得費加算の特例を検討している
といった場合は、税理士へ相談した方が安心です。
また、株式相続では、相続税だけでなく、売却時の譲渡所得税まで含めて考える必要があります。
相続税申告だけでなく、その後の売却まで見据えて検討することが重要です。
弁護士へ相談した方がよいケース
相続人同士で意見が対立している場合は、弁護士への相談を検討した方がよいケースがあります。
例えば、
- 遺産分割協議がまとまらない
- 遺言書の有効性で争いがある
- 一部相続人が株式を勝手に売却した
- 使途不明金問題がある
といったケースです。
株式は価格変動があるため、「どの時点の価格を基準にするか」で対立することもあります。
また、ネット証券では、家族がIDやパスワードを把握しているケースもありますが、正式な相続手続きを経ずに売却を行うと、後々大きなトラブルへ発展する可能性があります。
相続人同士で話し合いが難しい場合は、早めに専門家を交えて整理した方が、結果的にスムーズに進むケースも少なくありません。
⑪株式相続でよくある質問(FAQ)
Q.株式は相続後もそのまま保有できますか?
はい、可能です。
相続手続きによって相続人名義へ変更した後は、そのまま保有を続けることができます。
ただし、株価は日々変動するため、相続人同士で公平性について十分に話し合った上で進めることが大切です。
Q.株式を相続したら必ず売却しなければいけませんか?
必ず売却する必要はありません。
相続人名義へ変更した上で、そのまま保有を続けることもできます。
一方で、実務上は、相続人同士で分けやすくするため、売却して現金化するケースも多く見られます。
Q.NISA口座の株式や投資信託はどうなりますか?
NISA口座で保有している株式や投資信託も相続対象になります。
ただし、NISAの非課税枠そのものを相続人が引き継ぐことはできません。
相続発生後は、通常の課税口座へ払い出される扱いになります。
Q.投資信託やETFも株式と同じように相続できますか?
基本的な流れは株式相続と同様です。
証券会社へ相続手続きを行い、名義変更や売却手続きを進めます。
なお、投資信託は基準価額、ETFは上場株式に準じた方法で評価されることが一般的です。
Q.iDeCo(イデコ)は通常の証券口座と同じですか?
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、通常の証券口座とは扱いが異なります。
加入者が死亡した場合は、「死亡一時金」として受取人へ支払われる仕組みになっています。
そのため、通常の株式相続とは手続きが異なる点に注意が必要です。
Q.証券口座が複数ある場合はどうなりますか?
証券会社ごとに個別の相続手続きが必要になります。
必要書類は共通する部分もありますが、証券会社ごとに所定書類や進め方が異なる場合があります。
また、口座ごとに残高証明書取得や名義変更手続きが必要になるため、想定以上に時間がかかるケースもあります。
Q.日本に住んでいない相続人でも株式相続できますか?
はい、海外在住の相続人でも株式相続は可能です。
ただし、海外在住者の場合は、在外公館での証明書取得やサイン証明、海外住所確認書類など、追加書類が必要になるケースがあります。
また、証券会社によって対応が異なることもあるため、早めに確認しておくことが重要です。
Q.相続した株式をすぐに売却できますか?
はい、相続した株式を売却することは可能です。
ただし、原則として相続手続きが完了し、相続人名義へ変更された後に売却する流れになります。
被相続人の死亡を証券会社へ連絡すると、通常は証券口座が凍結されるため、すぐに自由な売買はできなくなります。
そのため、戸籍収集や遺産分割協議、名義変更手続きなどを進めたうえで、相続人名義の口座へ移管後に売却することが一般的です。
また、正式な相続手続きを経ずに売却を行うと、相続人間のトラブルへ発展する可能性もあるため注意が必要です。
Q.相続税はいつまでに申告する必要がありますか?
相続税申告は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。
また、被相続人の所得税に関する「準確定申告」は4か月以内に行う必要があります。
株式相続では、証券会社から残高証明書を取り寄せたり、株式評価を行ったりする必要があるため、早めに準備を進めることをおすすめします。

⑫まとめ|株式相続は「早めの整理」が重要
株式の相続では、証券会社の確認や名義変更だけでなく、株価変動や税金、売却タイミングなど、株式特有の問題も関係してきます。
特に近年は、ネット証券やペーパーレス化の影響で、家族が証券口座の存在に気付かないケースも増えています。
また、被相続人の死亡を証券会社へ連絡すると、原則として証券口座は凍結されます。
そのため、相続手続き中は売却できない期間が発生し、株価急落やTOB(株式公開買付け)、上場廃止リスクなどへ対応できないケースもあります。
さらに、株式は相続税の対象になるだけでなく、相続後に売却すると譲渡所得税が発生する場合もあります。
特に、取得費が不明な場合や、複数の証券会社に口座がある場合は、想定以上に時間や手間がかかるケースも少なくありません。
実務上は、株式を売却して現金化し、相続人同士で分けるケースも多く見られますが、そのまま保有を続けるケースもあります。
そのため、株式を売却して現金化するのか、そのまま保有を続けるのか、また誰が相続するのかを、相続人全員で十分に話し合った上で進めることが大切です。
また、相続税申告は原則として10か月以内、準確定申告は4か月以内と期限が決まっています。
株式相続では、証券会社ごとの手続きや必要書類収集、株式評価などに時間がかかることもあるため、「まだ大丈夫」と考えず、早めに全体像を整理することが重要です。
特に、
- 相続税申告が必要
- 非上場株式が含まれる
- 相続人同士で意見が分かれている
- 相続後に売却予定がある
といったケースでは、早い段階で専門家へ相談した方がスムーズに進むこともあります。
株式相続は、単なる名義変更ではありません。
故人が残した大切な資産を、法律や税務に沿って適切に引き継いでいくことが大切です。
まずは、証券会社や保有資産を整理し、落ち着いて一つずつ手続きを進めていきましょう。
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