相続が発生すると、「遺産は誰がどれくらい受け取るのか」「不動産や預貯金はどう分ければいいのか」と迷う方も多いのではないでしょうか。
こうした相続財産の分け方を決めることを「遺産分割」といいます。
遺産分割では、相続人や相続財産を確認したうえで、誰がどの財産を受け取るのかを決めていきます。遺言書の有無や財産の内容によって、進め方が変わることもあります。
この記事では、遺産分割とは何かという基本から、相続割合、代表的な分け方、手続きの流れまでわかりやすく解説します。
目次
①遺産分割とは
遺産分割とは相続財産の分け方を決めること
遺産分割とは、亡くなった方が残した財産について、相続人のうち誰がどの財産を、どのくらい受け取るのかを決めることです。
相続財産には、預貯金や不動産、株式などさまざまなものがあります。相続人が複数いる場合、それらをそのまま共有し続けるのではなく、
- 自宅は配偶者が相続する
- 預貯金は子どもが相続する
- 不動産を売却して代金を分ける
といった形で、具体的な分け方を決めていきます。
この「誰が何を受け取るのか」を決めることが、遺産分割の基本です。
「遺産分配」「相続分配」と遺産分割の関係
遺産を相続人ごとに分けることは、一般には「遺産分配」「相続分配」と表現されることもあります。
意味としては近いですが、相続手続きでは「遺産分割」という言葉が一般的に使われます。
ただし、遺産分割は単純に「財産を人数で均等に分配すること」ではありません。
たとえば、相続人が3人だからといって、自宅や土地を必ず3分の1ずつ共有しなければならないわけではありません。
誰か一人が不動産を取得し、他の相続人は預貯金を取得するなど、財産の種類や相続人の希望に応じて分け方を決めることができます。
遺産分割では「公平=均等」とは限らない
遺産分割を考えるときに重要なのが、金額を同じにすることだけが公平ではないという点です。
たとえば、亡くなった方の自宅に配偶者が住み続けている場合、その自宅を単純に売却して現金で分けることが、必ずしも家族にとって最適とは限りません。
一方で、一人だけが価値の高い不動産を相続すると、他の相続人から「自分の取り分が少ない」と感じられることもあります。
そのため遺産分割では、
- 財産の価値
- 財産を分けやすいか
- 誰がその財産を必要としているか
- 相続人同士の取得額に大きな差が出ないか
- 将来その財産をどう管理するか
といった点を確認しながら、分け方を考えることが大切です。
遺言書がない場合は相続人全員で分け方を決める
遺産分割を進める際は、まず遺言書の有無を確認します。
遺言書で財産の承継先が指定されている場合は、原則としてその内容をもとに相続手続きを進めます。
一方、遺言書がない場合や、遺言書だけでは分け方が決まらない財産がある場合は、相続人同士で話し合って分け方を決めます。
この話し合いが「遺産分割協議」です。
遺産分割協議では、誰が参加するのか、何を話し合うのか、どのように全員の合意をまとめるのかといった点も重要になります。具体的な進め方については、「遺産分割協議とは?相続人全員での話し合い・進め方・まとまらない場合を解説」で詳しく説明しています。
つまり遺産分割では、単に法律上の割合を確認するだけではなく、「誰が、どの財産を、どのような方法で受け取るのか」まで具体的に決めることが重要になります。
このあと、実際の家族を想定したモデルケースを使いながら、遺産の分配割合や具体的な分け方を見ていきます。
②モデルケースで考える遺産分割

遺産分割は、制度の説明だけでは実際の分け方をイメージしにくいことがあります。そこでこの記事では、ひとつの家族を例にしながら考えていきます。
父が亡くなり、相続人は妻と長男、次男の3人だったとします。相続財産は、自宅が3,000万円、預貯金が1,000万円で、遺産総額は4,000万円です。遺言書は残されていませんでした。
この場合、法定相続分を基準にすると、妻は2分の1、長男と次男はそれぞれ4分の1です。金額にすると、妻が2,000万円、長男と次男がそれぞれ1,000万円ずつという計算になります。
ただし、実際の財産は現金4,000万円ではありません。自宅が3,000万円を占めているため、法定相続分どおりにきれいに分けるのは簡単ではありません。
もし妻がそのまま自宅に住み続けたいのであれば、自宅を売却して現金化する方法は現実的ではないかもしれません。一方で、妻が自宅をそのまま相続すると、長男と次男との取得額に大きな差が出る可能性があります。
このような場合は、次のような点を整理しながら分け方を考えます。
- 誰がどの財産を必要としているか
- 不動産を残すのか、売却するのか
- 相続人ごとの取得額にどのくらい差が出るか
- 差額を現金などで調整できるか
- 将来、その財産を管理しやすいか
遺産分割では、「法律上の割合どおりに分けること」だけが目的ではありません。
法定相続分をひとつの基準にしながら、財産の内容や相続人それぞれの事情を踏まえて、現実的な分け方を考えることが大切です。
このモデルケースを使いながら、次の章で法定相続分と実際の分配割合について見ていきます。
③遺産は誰がどの割合で相続する?
遺産を誰がどのくらい相続するのかを考えるとき、まず基準になるのが「法定相続分」です。
法定相続分とは、民法で定められている相続割合です。誰が相続人になるかによって割合が変わります。
ただし、法定相続分は「必ずその割合で遺産を分けなければならない」という意味ではありません。実際の遺産分割では、遺言書の内容や相続人全員の合意によって、最終的な分配割合が変わることがあります。
法定相続分は相続人の組み合わせによって変わる
配偶者は常に相続人となり、誰と一緒に相続するかによって法定相続分が変わります。
代表的な割合は次のとおりです。
| 相続人 | 法定相続分 |
|---|---|
| 配偶者と子 | 配偶者1/2・子全体で1/2 |
| 配偶者と父母などの直系尊属 | 配偶者2/3・直系尊属全体で1/3 |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者3/4・兄弟姉妹全体で1/4 |
| 子のみ | 子で均等に分ける |
| 父母などの直系尊属のみ | 同順位の相続人で均等に分ける |
| 兄弟姉妹のみ | 兄弟姉妹で均等に分ける |
たとえば、相続人が妻と子ども2人であれば、妻が遺産の2分の1、子ども2人が残りの2分の1を分けるため、子どもはそれぞれ4分の1が法定相続分になります。
このように、法定相続分は「遺産をどのように分配するか」を考える際の基本的な目安になります。
法定相続分は、誰が相続人になるかによって変わります。配偶者・子・父母・兄弟姉妹の相続順位や、それぞれの法定相続分を詳しく確認したい方は、別記事で整理しています。
法定相続人の範囲・順位・法定相続分を詳しく見る
モデルケースに当てはめるとどうなる?
今回のモデルケースでは、相続人は妻・長男・次男の3人です。
相続財産は、自宅3,000万円と預貯金1,000万円で、遺産総額は4,000万円です。
法定相続分を金額にすると、
- 妻:2,000万円
- 長男:1,000万円
- 次男:1,000万円
となります。
ここだけを見ると、2,000万円・1,000万円・1,000万円に分ければよいように見えます。
しかし、実際の財産は現金4,000万円ではありません。自宅が3,000万円を占めているため、法定相続分どおりの金額に合わせようとしても、財産そのものを簡単に分けることはできません。
そのため、実際の遺産分割では「誰が自宅を取得するのか」「他の相続人との取得額の差をどう調整するのか」といった具体的な検討が必要になります。
法定相続分どおりに遺産を分ける必要はない
法定相続分は重要な基準ですが、実際の遺産分割で必ずその割合どおりに分ける必要はありません。
相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分配することもできます。
たとえば、モデルケースで妻がそのまま自宅に住み続けたいのであれば、妻が自宅を取得し、長男・次男は預貯金や別の方法で取得額を調整することも考えられます。
つまり、法定相続分は分配割合の基準であって、実際に誰がどの財産を受け取るかまで決めるものではありません。
遺産分割では、財産の種類や相続人それぞれの希望を踏まえて、現実的な分け方を考えることが大切です。
遺言書がある場合は遺言の内容も確認する
遺言書で財産の承継先が指定されている場合は、原則としてその内容をもとに相続手続きを進めます。
そのため、遺産の分配割合を考えるときは、法定相続分だけではなく、
- 遺言書があるか
- どの財産を誰に相続させる内容になっているか
- 実際の相続財産はどのような内容か
も確認する必要があります。
法定相続分は遺産分割を考えるうえで重要な基準ですが、最終的な分け方は、遺言書の内容や財産の性質、相続人同士の合意を踏まえて決めていくことになります。
④遺産を分ける3つの方法

遺産分割では、財産の種類や相続人の希望に応じて、分け方を選ぶ必要があります。
特に不動産のように、そのまま人数分に分けにくい財産がある場合は、「誰が取得するか」だけでなく、他の相続人との取得額の差をどう調整するかも考えなければなりません。
代表的な方法は、現物分割・代償分割・換価分割の3つです。
現物分割とは
現物分割とは、相続財産をそのままの形で相続人ごとに分ける方法です。
たとえば、「自宅は妻」「預貯金は長男」「株式は次男」というように、それぞれが別の財産を取得します。
財産を売却する必要がなく、手続きも比較的わかりやすい点がメリットです。
一方で、財産ごとの価値に差があると、相続人ごとの取得額にも差が出やすくなります。
そのため、現物分割は、財産の種類が複数あり、それぞれの価値がある程度バランスしている場合に使いやすい方法です。
代償分割とは
代償分割とは、特定の相続人が不動産などの財産を取得し、その代わりに他の相続人へ金銭などを支払う方法です。
たとえば、一人が自宅を相続し、その取得額が他の相続人より多くなる場合に、差額を「代償金」として支払います。
この方法であれば、不動産を売却せずに残しながら、相続人間の取得額を調整できます。
ただし、財産を取得する相続人に、代償金を支払えるだけの資力が必要です。また、不動産をいくらで評価するかによって代償金の額も変わるため、評価方法について相続人同士で確認しておく必要があります。
換価分割とは
換価分割とは、不動産などの相続財産を売却し、その売却代金を相続人で分ける方法です。
財産を現金に変えるため、取得額を調整しやすく、金額で公平に分けたい場合に向いています。
一方で、自宅や土地を手放すことになるため、「家を残したい」「今後も住み続けたい」という希望がある場合には使いにくい方法です。
また、売却価格や売却にかかる費用によって、実際に分配できる金額が変わる点にも注意が必要です。
モデルケースではどう分けられる?
今回のモデルケースでは、自宅3,000万円と預貯金1,000万円があります。
妻・長男・次男の3人で、この財産を分ける場合、それぞれの方法によって結果が変わります。
現物分割であれば、たとえば妻が自宅を取得し、長男と次男が預貯金を分ける方法が考えられます。
ただし、自宅3,000万円に対して預貯金は1,000万円なので、取得額には大きな差が出ます。
代償分割であれば、妻が自宅を取得し、その代わりに長男・次男へ金銭を支払って取得額を調整する方法が考えられます。
妻が自宅に住み続けたい場合には使いやすい方法ですが、代償金を用意できるかがポイントになります。
換価分割であれば、自宅を売却して現金化し、預貯金と合わせて分配します。
金額では分けやすくなりますが、妻が自宅に住み続けたい場合には、自宅を手放すことになるため希望と合わない可能性があります。
このように、同じ相続財産であっても、どの方法を選ぶかによって結果は大きく変わります。
どの方法を選ぶかは「何を残したいか」で考える
遺産分割では、「どの方法が一番公平か」だけでなく、家族として何を残したいのかを考えることも大切です。
たとえば、自宅を残すことを優先するなら現物分割や代償分割が候補になります。一方、金額で分けやすくすることを優先するなら換価分割が選択肢になります。
ただし、実際の相続では、金額だけでは決めきれないこともあります。
長年住み続けてきた家を残したい人もいれば、管理の負担を考えて売却したい人もいます。親の思い出が詰まった家を手放すことに抵抗がある一方で、共有のまま残すことに不安を感じることもあるでしょう。
そのため、分け方を決めるときは、
- 不動産を残したいか
- 誰がその財産を今後使うのか
- 相続人ごとの取得額にどの程度差が出るか
- 代償金を用意できるか
- 売却した場合に家族が納得できるか
といった点を確認しながら、「数字として公平か」だけでなく、「この分け方なら家族として納得できるか」まで考えることが大切です。
遺産分割に、すべての家族に共通する正解があるわけではありません。だからこそ、それぞれが何を大切にしたいのかを確認しながら、現実的な分け方を探していくことが重要です。しやすくなります。
⑤遺産分割の流れ|手続きの進め方を7ステップで解説
遺産の分け方を考える前に、遺言書や相続人、相続財産を確認しておく必要があります。
順番を飛ばして話し合いを始めると、あとから別の相続人や財産が判明し、分け方を考え直さなければならないこともあります。
遺産分割は、基本的に次の流れで進めます。

まずは、亡くなった方が遺言書を残していないか確認します。
遺言書で財産の承継先が指定されている場合は、原則としてその内容をもとに相続手続きを進めます。
自宅に保管された遺言書だけでなく、法務局で保管されている自筆証書遺言や、公正証書遺言の有無も確認しておきましょう。
次に、誰が相続人になるのかを確認します。
亡くなった方の戸籍などを収集し、配偶者・子ども・父母・兄弟姉妹など、法律上の相続人を確定します。
相続人が一人でも漏れていると、遺産分割協議をやり直すことになる可能性があるため注意が必要です。
預貯金、不動産、株式、自動車など、亡くなった方が所有していた財産を洗い出します。
借入金などの負債についても確認し、相続財産の全体像を把握しておきます。
財産の内容や評価額がわからないままでは、公平な分け方を検討することが難しくなります。
相続人と財産が確認できたら、誰がどの財産を取得するのかを検討します。
預貯金のように分けやすい財産だけでなく、不動産など分割しにくい財産についても考える必要があります。
状況に応じて、現物分割・代償分割・換価分割などの方法を組み合わせて検討します。
遺言書だけでは分け方が決まらない場合などは、相続人全員で遺産分割協議を行います。
誰が何を相続するのか、どのような割合で分けるのかを話し合い、原則として相続人全員の合意を目指します。
一部の相続人だけで分け方を決めることはできないため、相続人を正しく確定しておくことが重要です。
相続人全員で合意したら、その内容を遺産分割協議書にまとめます。
「誰が」「どの財産を」「どのように相続するのか」がわかるよう、具体的に記載します。
遺産分割協議書は、不動産の名義変更や預貯金の払戻しなどで提出を求められることがあります。
分け方が決まったら、合意内容に沿って各財産の相続手続きを行います。
不動産なら相続登記、預貯金なら金融機関での払戻し・名義変更など、財産ごとに必要な手続きを進めます。
遺産分割は、話し合いがまとまっただけで終わりではなく、実際に財産を各相続人へ移すところまで進めて完了します。
遺産分割は、遺言書・相続人・相続財産を確認したうえで進めることが大切です。途中で確認漏れがあると、話し合いをやり直すこともあるため、順番に整理して進めましょう。
⑥遺産分割の対象になる財産・ならない財産
遺産分割を進めるときは、まず「何を相続人同士で分ける必要があるのか」を整理しておくことが大切です。
亡くなった方に関係する財産であっても、すべてが遺産分割の対象になるわけではありません。対象になる財産と、原則として対象にならない財産があります。
なお、「相続の対象になるもの」と「遺産分割の対象になるもの」は、必ずしも同じではありません。相続では、預貯金や不動産だけでなく、権利や借金などを引き継ぐこともあります。
相続で引き継ぐ財産・権利・義務を詳しく見る
遺産分割の対象になる主な財産
遺産分割の対象になるのは、亡くなった方が所有していた財産のうち、相続人の間で取得する人を決める必要があるものです。
代表的には、次のような財産があります。
- 預貯金
- 土地・建物などの不動産
- 株式・投資信託などの有価証券
- 自動車
- 貴金属や美術品など
- 貸付金などの債権
たとえば、自宅と預貯金が残されていて、誰が取得するのか決まっていない場合は、遺産分割によってそれぞれの取得者を決めていきます。
今回のモデルケースでも、自宅3,000万円と預貯金1,000万円が遺産分割の中心になります。
ただし、この2つは「価値」だけでなく「分けやすさ」が大きく異なります。預貯金は金額で分けやすい一方、不動産はそのまま人数分に分けるのが難しいため、財産の性質によって分割方法を変える必要があります。
遺産分割の対象にならない財産もある
一方で、亡くなった方の死亡をきっかけに受け取る財産であっても、必ずしも遺産分割の対象になるとは限りません。
代表的なのが、受取人が指定されている生命保険金です。
生命保険金は、一般に指定された受取人が自分の権利として受け取るため、通常は相続人全員で分ける遺産には含まれません。
死亡退職金についても、勤務先の規程などによって受取人が定められている場合があり、必ず遺産分割の対象になるとは限りません。
そのため、「亡くなった後に受け取ったお金=すべて遺産」と考えず、財産ごとに扱いを確認する必要があります。
借金は相続人同士の話し合いだけで自由に分けられない
借入金などの負債についても注意が必要です。
たとえば、相続人同士で「父の借金は長男がすべて負担する」と決めたとしても、その合意だけで債権者との関係まで当然に変更できるわけではありません。
債権者にとって重要なのは、相続人同士がどのように負担を決めたかではなく、誰からならより確実に債権を回収できるかという点です。
そのため、長男だけが借金を引き受ける形に変更したい場合でも、債権者がその内容に同意しなければ、相続人が期待したとおりの負担関係にはならないことがあります。
たとえば、他の相続人にも十分な資力がある場合、債権者としては回収先を限定せず、より安全に回収できる状態を維持したいと考えることがあります。
つまり、
- 相続人同士で誰が負担するか
- 債権者に対して誰が支払義務を負うか
は、分けて考える必要があります。
遺産分割ではプラスの財産ばかりに目が向きやすいですが、借金がある場合は、家族内の合意だけでなく、債権者がその負担変更を認めるかどうかまで確認することが大切です。
「金額」だけでなく「分けやすさ」まで確認する
遺産分割では、財産の総額だけを把握すればよいわけではありません。
同じ1,000万円の価値でも、預貯金1,000万円と不動産1,000万円では、分け方の自由度が異なります。
そのため財産を整理するときは、
- いくらの価値があるか
- そのまま分けられるか
- 誰かが使い続ける必要があるか
- 売却できる財産か
といった点も確認しておくと、後の遺産分割を考えやすくなります。
遺産分割では「何があるか」を調べるだけでなく、「その財産をどう分けられるか」まで見ておくことが重要です。
⑦遺産分割はいつまでにする?
遺産分割そのものには、「相続開始から○か月以内に必ず終えなければならない」という一律の期限はありません。
そのため、相続人同士で時間をかけて話し合うこと自体は可能です。
ただし、相続に関係するほかの手続きには期限があります。遺産分割を長期間そのままにしていると、税金や登記などの手続きに影響が出ることがあるため、「期限がない=急がなくてよい」と考えるのは注意が必要です。
遺産分割そのものに一律の期限はない
遺産分割協議は、相続人全員が納得できるまで話し合って進めることができます。
たとえば、不動産の評価について意見が分かれたり、自宅を誰が取得するか決まらなかったりして、すぐに結論が出ないこともあります。
そのような場合でも、一定期間を過ぎたからといって、直ちに遺産分割そのものができなくなるわけではありません。
ただし、時間がたつほど話し合いが難しくなることがあります。
相続人の一人が亡くなれば、その人の相続人が新たに関係者になることもあり、当初より相続関係が複雑になる可能性があります。
そのため、結論を急ぐ必要はなくても、遺言書・相続人・相続財産の確認は早めに始めておくことが大切です。
相続に関するほかの手続きには期限がある
遺産分割そのものに一律の期限がなくても、相続手続きにはそれぞれ期限があります。
代表的なものは次のとおりです。
- 相続放棄など:原則として自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内
- 相続税の申告・納付:原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内
- 相続登記:相続によって不動産を取得したことを知った日から原則3年以内
また、相続開始から長期間が経過すると、特別受益や寄与分を考慮した遺産分割が制限される場合もあります。
遺産分割の話し合いだけを見ていると期限を意識しにくいですが、実際にはこうした周辺手続きと並行して進める必要があります。
特に「10か月」はひとつの重要な目安になる
相続税の申告・納付期限は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月です。
相続税の申告が必要なケースでは、この10か月までに遺産の分け方が決まっているかどうかが重要になることがあります。
たとえば、配偶者が自宅に住み続けたい場合に「配偶者居住権」を利用することも選択肢の一つです。
配偶者居住権そのものに「10か月以内に取得しなければならない」という期限があるわけではありません。
ただし、配偶者居住権を設定して、自宅の所有権と住み続ける権利を分け、その内容を相続税申告に反映させたい場合には、10か月という期限を意識して遺産分割を進める必要があります。
今回のモデルケースでも、妻が自宅に住み続けたいのであれば、
- 妻が自宅そのものを取得するのか
- 配偶者居住権を利用するのか
- 長男や次男にはどの財産を取得してもらうのか
といった点を早めに検討しておく必要があります。
「自宅をどうするか」は家族にとって大きな判断です。だからこそ、相続税の期限が近づいてから慌てて決めるのではなく、十分に検討できる時間を確保しておくことが大切です。
急いで決めるのではなく、早めに動き始める
遺産分割は、早く終わらせること自体が目的ではありません。
相続財産を十分に確認しないまま分け方を決めてしまえば、あとから別の預貯金や不動産が見つかり、話し合いをやり直すこともあります。
一方で、何も決めずに時間だけが過ぎると、相続税や登記などの期限が近づき、落ち着いて選択肢を検討できなくなる可能性があります。
大切なのは、結論を急ぐことではなく、必要な確認と検討を早めに始めることです。
特に、自宅など分けにくい財産がある場合や、配偶者居住権の利用を検討する場合は、家族の希望と期限のある手続きを両方見ながら進めていくことが重要です。いを進めていくとよいでしょう。でも、相続人と財産を確認できたら、できるだけ早い段階で分け方を検討するのがおすすめです。
⑧遺産分割がまとまらないのはどんなとき?
遺産分割では、相続人全員が同じ考えを持っているとは限りません。
特に、自宅など簡単に分けられない財産がある場合は、「誰が取得するのか」「いくらで評価するのか」「取得額の差をどう調整するのか」で意見が分かれることがあります。
不動産が多いと分け方で意見が分かれやすい
預貯金であれば金額に応じて分けやすい一方、不動産はそのまま人数分に分けることが難しい財産です。
今回のモデルケースでも、妻が「自宅に住み続けたい」と考える一方で、長男や次男が「法定相続分に近い財産を受け取りたい」と考えれば、単純には決まりません。
さらに、
- 自宅を残すのか売却するのか
- 不動産をいくらと評価するのか
- 代償金を誰がいくら支払うのか
- 誰か一人だけが負担を負いすぎていないか
といった点でも考え方が分かれることがあります。
ここで大切なのは、「誰が正しいか」だけで考えないことです。
妻にとって自宅は生活の場所でも、子どもにとっては相続財産の大部分を占める資産かもしれません。同じ財産でも、立場によって見え方は変わります。

「公平」の考え方は、それぞれの家庭事情でも変わる
遺産分割がまとまらない原因は、単純な金額の問題だけではありません。
相続人にはそれぞれ生活があり、置かれている状況も違います。
今回のモデルケースでも、妻・長男・次男が、それぞれ同じ立場にいるわけではありません。
たとえば長男には、これから教育費がかかる子どもがいて、自宅の住宅ローンも多く残っているとします。その一方で、「将来的には母を自宅に引き取って生活を支えたい」と考えているかもしれません。
次男は、少し前に勤務先のリストラにあい、以前と比べて収入が大幅に減っているとします。そうであれば、「不動産よりも、今すぐ使える現金を受け取りたい」と考えるのも不自然ではありません。
そして妻にとっては、3,000万円という評価額の自宅であっても、単なる資産ではありません。夫と長年暮らしてきた家であり、これからの生活の場所でもあります。
こうなると、それぞれの希望には理由があります。
- 妻は、できれば今の自宅に住み続けたい
- 長男は教育費や住宅ローンを抱えながらも、将来は母を支えたい
- 次男は収入が減っているため、現金を確保したい
法定相続分だけを見れば、妻2,000万円、長男1,000万円、次男1,000万円です。
しかし、実際の遺産分割では、「その金額に合わせれば全員が納得する」とは限りません。
長男が将来母を引き取るつもりでいることを、どこまで遺産分割の話し合いで考慮するのか。次男の現在の経済状況を、どこまで家族として受け止めるのか。そして、妻のこれからの住まいをどう守るのか。
こうした事情には、法律だけで一つの答えを出せない部分もあります。
だからこそ遺産分割では、「誰がいくらもらうべきか」だけでなく、それぞれがなぜその分け方を希望しているのかまで話すことが大切です。
お互いの事情が見えないまま金額だけを主張すると対立しやすくなりますが、背景まで共有できれば、代償分割や換価分割、配偶者居住権など、別の着地点が見えてくることもあります。
相続人だけでまとまらない場合は家庭裁判所での手続きもある
相続人全員で話し合っても遺産の分け方が決まらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を利用する方法があります。
調停では、裁判官や調停委員を交えて、それぞれの事情を確認しながら合意を目指します。
それでも合意できない場合は、遺産分割審判によって裁判所が分け方を判断することになります。
もっとも、そこまで進むと時間や負担も大きくなりやすいため、意見の違いが小さいうちに「何について折り合えていないのか」を整理しておくことが大切です。
遺産分割は、単に財産を数字で分ける手続きではありません。
誰か一人の希望だけを通すのではなく、それぞれの事情を踏まえながら、家族として納得できる着地点を探していくことが重要です。つ論点を確認していくことが重要です。
⑨遺産分割に関するよくある質問
Q:遺産は法定相続分どおりに分けなければいけませんか?
必ずしも法定相続分どおりに分ける必要はありません。
法定相続分は、民法で定められた相続割合の基準です。遺言書がなく、相続人全員が合意しているのであれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分けることもできます。
たとえば、配偶者が自宅を取得し、子どもが預貯金を取得するなど、財産の性質や家族の事情に合わせて分け方を決めることができます。
大切なのは、単に割合を合わせることではなく、相続人全員がその分け方に納得していることです。
Q:相続人の一人だけで遺産の分け方を決められますか?
遺産分割協議が必要な場合、原則として相続人全員で話し合い、全員が合意する必要があります。
「自分は長男だから」「亡くなった親の面倒を見ていたから」といった理由だけで、一人が勝手に分け方を決めることはできません。
相続人の中に連絡を取っていない人がいる場合でも、その人を除外したまま進めるのではなく、まず相続人を正確に確認することが重要です。
Q:不動産しかない場合はどうやって遺産分割しますか?
不動産をそのまま一人が取得する現物分割、取得した人が他の相続人へ代償金を支払う代償分割、不動産を売却して代金を分ける換価分割などが考えられます。
たとえば、自宅しか大きな財産がない場合でも、「売るか残すか」の二択とは限りません。
配偶者が住み続けたいのであれば、代償分割や配偶者居住権などを含めて検討する余地があります。
どの方法が適しているかは、不動産の価値だけでなく、今後誰が住むのか、代償金を用意できるか、家族が何を優先したいかによって変わります。
Q:一度決めた遺産分割をやり直すことはできますか?
相続人全員が合意すれば、遺産分割の内容を改めて話し合うこと自体は可能です。
ただし、すでに名義変更や財産の移転を行っている場合は、税務や登記など別の問題が生じることがあります。
そのため、「あとで直せばいい」と考えて安易に合意するのではなく、誰がどの財産を取得するのか、取得後にどのような手続きが必要になるのかまで確認したうえで決めることが大切です。
Q:家族の事情は遺産分割で考慮できますか?
相続人全員で話し合う遺産分割では、それぞれの生活状況や希望を踏まえて分け方を決めることができます。
たとえば今回のモデルケースであれば、妻が自宅に住み続けたいこと、長男が住宅ローンや教育費を抱えながら将来は母を引き取るつもりでいること、次男が収入の減少によって現金を必要としていることなども、話し合いの背景になります。
ただし、こうした事情があるからといって、法律上当然に相続分が増減するわけではありません。
だからこそ、「誰が一番大変か」を競うのではなく、それぞれが何を必要としているのかを共有し、全員が納得できる分け方を探すことが大切です。
まとめ
遺産分割とは、亡くなった方の財産を、誰がどのように取得するのかを決める手続きです。
法定相続分は重要な基準ですが、実際の相続では、その割合どおりに単純に分けられるとは限りません。
特に、自宅など分けにくい財産がある場合は、
- 誰がその財産を必要としているか
- 不動産を残すのか売却するのか
- 取得額の差をどう調整するのか
- 相続人それぞれがどのような生活状況にあるのか
まで考える必要があります。
今回のモデルケースでも、妻は自宅に住み続けたい、長男は住宅ローンや教育費を抱えながら将来は母を支えたい、次男は収入が減って現金を必要としているという、それぞれ異なる事情がありました。
こうした状況では、単純に「法定相続分どおりだから公平」とは言い切れません。
現物分割・代償分割・換価分割、場合によっては配偶者居住権なども検討しながら、家族として何を優先するのかを確認して分け方を考えることが大切です。
また、遺産分割そのものには一律の期限はありませんが、相続放棄や相続税申告、相続登記などには期限があります。
そのため、結論を急ぐ必要はなくても、遺言書・相続人・相続財産の確認は早めに始めておくと安心です。
遺産分割で大切なのは、単に財産を分けることではありません。
それぞれの事情を共有し、相続が終わったあとも家族が納得できる形を探すことが、円満な遺産分割につながります。
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✅ 実績・対応エリアについて
当事務所では、これまでに数十件以上の遺言・相続サポートを行ってきました。
地域に根ざした対応と、丁寧でわかりやすい説明をモットーに、多くのお客様から喜びの声をいただいています。
- 対応地域:大田区・品川区・近隣エリア(オンライン相談も対応可)
- ご高齢の方やご家族向けの「ご自宅訪問」も可能です
✅ ご相談の流れ
- 【STEP1】お問い合わせ
→ 電話・メールフォームのいずれかでご連絡ください - 【STEP2】日程調整
→ ご都合の良い日程を調整いたします(平日夜・土日対応もOK) - 【STEP3】無料相談(60分程度)
→ ご状況やお悩みをじっくりお伺いします - 【STEP4】ご提案・お見積り
→ ご希望に応じて、最適なプランをご提案。無理な営業は一切しません。
💬 「話してよかった」「気持ちが軽くなった」そんなご感想を多くいただいています。
✅ ご相談方法(選べます!)
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 📞 電話相談 | お急ぎの方や対面が難しい方におすすめ |
| 🖥 オンライン相談 | ご自宅から安心して相談できます(Zoom対応) |
| 🏠 訪問相談 | ご高齢の方、外出が難しい方のために訪問も可 |
✅ 行政書士プロフィール
特定行政書士 野中雅敏(IT行政書士事務所)
- 国家資格:行政書士(登録番号:25080391)
- 経歴:IT業界出身/相続・遺言分野を専門取り組み中
- 趣味:競泳
- メッセージ:
「遺言は“難しいこと”ではなく、“優しさのカタチ”です。
家族を守るために、ぜひ一緒に考えていきましょう。」
📩 お問い合わせはこちら
- ☎ お電話:03-6820-3968
- 📝 お問い合わせフォーム
- 📍 事務所所在地:東京都大田区大森北3-24-27 ルミエールN
あなたの「不安」を「安心」に変えるお手伝いを、私たち行政書士が全力でサポートいたします。
どんな小さなことでも構いません。
今すぐ、気軽にご連絡ください。

