エレベーターや機械式立体駐車場、工場の大型設備などを設置する工事は、機械器具設置工事業に該当する場合があります。
こうした工事を請け負うために建設業許可を取得するには、どのような資格や実務経験が必要なのでしょうか。
この記事では、機械器具設置工事業の許可取得に必要な条件や、対象となる工事の範囲についてわかりやすく解説します。
目次
① 機械器具設置工事業の建設業許可を取得するための条件

機械器具設置工事業の建設業許可を取得するには、建設業法で定められた要件を満たす必要があります。
主な要件は、次の5つです。
| 要件 | 主な内容 |
|---|---|
| 経営業務の管理体制 | 建設業の経営経験を持つ常勤役員等を配置するなど、適切な経営体制を整えていること |
| 営業所技術者等 | 機械器具設置工事業に対応する資格や実務経験を持つ技術者を、営業所ごとに配置すること |
| 誠実性 | 請負契約の締結や履行に関して、不正または不誠実な行為をするおそれがないこと |
| 財産的基礎 | 請負契約を履行できる財産的基礎または金銭的信用があること |
| 欠格要件 | 建設業法で定める欠格要件に該当しないこと |
また、許可を取得するには、建設業の営業所としての要件や、適切な社会保険への加入なども確認されます。
一般建設業と特定建設業の違い
建設業許可には、一般建設業と特定建設業の2種類があります。
発注者から直接工事を請け負う元請業者が、1件の工事について下請業者と締結する契約の総額が5,000万円(税込)以上となる場合は、原則として特定建設業の許可が必要です。
それ以外の場合は、一般建設業の許可で対応できます。
ただし、特定建設業では、営業所技術者等や財産的基礎について、一般建設業より厳しい要件が設けられています。
機械器具設置工事業の許可を検討する際は、まず一般建設業と特定建設業のどちらが必要かを確認しましょう。
建設業許可に共通する経営業務の管理体制や財産的基礎などの要件については、建設業許可の取得条件を解説した記事で詳しく紹介しています。
② 機械器具設置工事業の営業所技術者等になるための要件

機械器具設置工事業の建設業許可を取得するには、営業所ごとに、この業種に対応する営業所技術者等を配置する必要があります。
一般建設業の場合、主に次の方法で技術要件を満たすことができます。
- 対象となる国家資格を持っている
- 指定学科を卒業し、必要な実務経験がある
- 機械器具設置工事について10年以上の実務経験がある
資格がある場合
機械器具設置工事業では、次の技術士資格が営業所技術者等の要件に対応しています。
| 資格 | 対象となる部門・選択科目 |
|---|---|
| 技術士 | 機械部門 |
| 技術士 | 総合技術監理部門(機械部門に係るもの) |
技術士資格を利用する場合は、部門や選択科目が機械器具設置工事業に対応しているか確認しましょう。
なお、機械器具設置工事業では、施工管理技士の資格があれば必ず営業所技術者等になれるわけではありません。 他の建設業種と資格要件が異なるため、注意が必要です。
指定学科を卒業している場合
対象となる資格がなくても、指定学科を卒業し、卒業後に一定期間の実務経験があれば、営業所技術者等の要件を満たせる場合があります。
| 学歴 | 必要な実務経験 |
|---|---|
| 大学・高等専門学校などの指定学科を卒業 | 卒業後3年以上 |
| 高等学校などの指定学科を卒業 | 卒業後5年以上 |
機械器具設置工事業の指定学科には、建築学・機械工学・電気工学に関する学科があります。
ただし、学校や学科の名称だけで判断せず、履修内容なども含めて確認する必要があります。
資格・指定学科の学歴がない場合
対象となる資格や指定学科の学歴がない場合でも、機械器具設置工事について10年以上の実務経験があれば、一般建設業の営業所技術者等の要件を満たせる可能性があります。
ただし、機械の搬入や運搬、点検・保守などの経験が、すべて機械器具設置工事の実務経験として認められるわけではありません。
また、機械の据付工事であっても、施工内容によっては別の建設業種に該当する場合があります。
実務経験を証明する際は、工事請負契約書や注文書などをもとに、実際にどのような工事を行っていたかを確認することが重要です。
なお、特定建設業の営業所技術者等には、一般建設業とは異なる要件が設けられています。
③ 機械器具設置工事業に該当する工事とは?他業種との違いと判断ポイント
機械器具設置工事業は、機械器具の組立てなどによって工作物を建設したり、工作物に機械器具を取り付けたりする工事を対象とする建設業種です。
ただし、機械を設置する工事がすべて機械器具設置工事業に該当するわけではありません。設備の種類や施工内容によっては、別の専門工事業に分類されます。
建設業許可の業種区分については、建設業許可29業種の選び方で詳しく紹介しています。
機械器具設置工事業に該当する主な工事
代表的な工事には、次のようなものがあります。
| 工事の種類 | 主な施工内容 |
|---|---|
| プラント設備工事 | 工場などの生産設備・製造設備の組立てや据付け |
| 運搬機器設置工事 | エレベーターやコンベヤーなどの設置 |
| 内燃力発電設備工事 | エンジンを利用する発電設備の設置 |
| 立体駐車設備工事 | 機械式立体駐車設備の組立てや据付け |
| 集塵機器設置工事 | 工場などで使用する集塵設備の設置 |
| サイロ設置工事 | 穀物などを貯蔵するサイロの設置 |
これらは代表的な工事例ですが、設備の名称だけで許可業種が決まるわけではありません。
例えば、工場の設備工事でも、空調設備や給排水設備の施工が中心であれば、管工事業に該当する場合があります。
大型機械の設置には複数の建設業種が関係する

例えば、工場に大型の生産設備を新設する場合、次のような工程が考えられます。
| 工事の流れ | 関係する主な建設業種 |
|---|---|
| ① 設置場所の基礎工事 | とび・土工工事業など |
| ② 大型機械の組立て・据付け | 機械器具設置工事業など |
| ③ 機械への配管接続 | 管工事業など |
| ④ 電源・制御ケーブルの接続 | 電気工事業・電気通信工事業など |
| ⑤ 試運転・調整 | 作業内容に応じて判断 |
※施工順序は一例です。また、実際の許可業種は設備や工事内容によって異なります。
このように、一つの設備を完成させるために、複数の建設業種に関係する工事が行われることがあります。
ただし、これらを一連の工事として請け負う場合でも、すべてが機械器具設置工事業に分類されるわけではありません。
附帯工事として請け負える場合
機械器具設置工事を主となる工事として請け負う場合、その工事に附帯する基礎工事や配管工事などは、別業種の許可がなくても請け負える場合があります。
附帯工事とは、主となる工事に伴って必要となる従たる工事のことです。該当するかどうかは、工事の目的や内容、主となる工事との関係などから判断します。
なお、許可を受けていない業種の附帯工事を自社で施工する場合は、工事の規模などに応じて専門技術者の配置が必要です。配置できない場合は、必要な許可を持つ建設業者への施工依頼などを検討します。
とび・土工工事業との違い
とび・土工工事業には、重量物の揚重・運搬・配置や、コンクリート基礎工事などが含まれます。
一方、機械器具設置工事業では、機械器具の組立てや据付けによって設備を完成させる工事が対象となります。
例えば、大型機械をクレーンで所定の位置まで運搬・配置する作業と、機械を組み立てて据え付ける工事では、業種区分が異なる場合があります。
そのため、単に「重量物を据え付ける工事」という名称だけで判断せず、実際の施工内容を確認する必要があります。
重量物の揚重・配置やコンクリート工事については、とび・土工工事業の建設業許可を解説した記事も参考にしてください。
管工事業との違い
管工事業は、冷暖房設備や給排水設備、空調設備などを設置し、配管を施工する工事を対象とします。
大型機械の据付けに伴って配管を接続する場合でも、その作業が機械器具設置工事に附帯するものなのか、独立した管工事なのかによって考え方が異なります。
また、機械器具設置工事業に該当するかどうかは、配管の長さや接続位置だけで決まるものではありません。
空調設備や給排水設備などの工事範囲については、管工事業の建設業許可を解説した記事で詳しく紹介しています。
電気工事業・電気通信工事業との違い
電気工事業は、発電設備や変電設備、電気配線などの電気設備工事を対象とします。
一方、電気通信工事業は、情報通信設備や通信ネットワークなどの工事を対象とする業種です。
工場の生産設備では、機械の据付けに加えて、電源ケーブルや制御・通信設備の接続が必要になる場合があります。
こうした工事も、設備の種類や施工内容、主となる工事との関係によって業種を判断する必要があります。
機械器具設置工事業の許可があれば、配管工事や電気工事をすべて自由に請け負えるわけではないことに注意しましょう。
電源設備や配線工事の許可要件については、電気工事業の建設業許可を解説した記事も参考にしてください。
④ 機械器具設置工事業の建設業許可が必要になる金額

機械器具設置工事業では、原則として、1件の請負代金が500万円(税込)以上となる工事を請け負う場合に、建設業許可が必要です。
一方、1件の請負代金が500万円(税込)未満の工事であれば、原則として建設業許可がなくても請け負うことができます。
ただし、許可が必要かどうかは、契約書に記載された金額だけで判断するわけではありません。
500万円の基準は材料費なども含めて判断する
建設業許可の要否を判断する際は、工事の請負代金に消費税を含めて計算します。
また、注文者から材料や機械器具などの支給を受ける場合は、支給された材料などの市場価格や運送費を加えて判断する必要があります。
例えば、次のようなケースです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 機械の据付工事代金(税込) | 400万円 |
| 注文者が支給する材料などの市場価格(税込) | 150万円 |
| 判定に用いる合計金額 | 550万円 |
この場合、工事代金だけを見ると500万円未満ですが、支給材料などを含めた金額は500万円以上となるため、原則として建設業許可が必要です。
注文者から機械器具や材料の支給を受ける場合は、支給物の内容や契約条件によって請負金額の判定が変わることがあるため、事前に許可行政庁へ確認しましょう。
契約を分けても500万円未満になるとは限らない
同じ工事を複数の契約に分けた場合でも、正当な理由がない限り、契約金額を合算して判断します。
例えば、工場の生産ライン設置工事を「機械の組立て」と「据付け」に分けて契約しても、実質的に一つの工事であれば、それぞれの契約金額だけで許可の要否を判断することはできません。
500万円未満の契約に分割すれば、必ず無許可で施工できるというわけではないため、注意しましょう。
建設業許可が必要となる500万円の基準や、材料費・分割契約の取り扱いについては、建設業許可の500万円基準を解説した記事で詳しく紹介しています。
500万円以上の工事を請け負う前に許可を取得する
建設業許可が必要な工事は、原則として許可を取得してから請け負う必要があります。
「契約後に申請すればよい」「着工までに許可が取れればよい」という考え方は適切ではありません。
大型の生産設備やコンベヤーなどの設置工事では、工事金額が500万円以上になるケースも考えられます。
受注を予定している場合は、契約前に許可の必要性を確認し、余裕を持って準備を進めることが大切です。
まとめ|機械器具設置工事業の建設業許可を取得するために
機械器具設置工事業の建設業許可を取得するには、経営業務の管理体制や営業所技術者等の要件を満たす必要があります。
特に重要なのは、請け負う工事が機械器具設置工事業に該当するかどうかを正しく判断することです。
工場の生産ラインやコンベヤーなどの設置工事では、機械の組立て・据付けに加え、基礎工事や配管工事、電気工事などが関係する場合があります。工事内容によって許可業種が異なるため、契約前に確認しておくことが大切です。
また、実務経験を使って営業所技術者等の要件を満たす場合は、過去の工事内容を証明できる資料の確認も欠かせません。
機械器具設置工事業の建設業許可について、工事の業種区分や取得要件の判断に迷う場合は、専門家への相談もご検討ください。
機械器具設置工事業の建設業許可でお困りの方へ
機械器具設置工事業は、管工事業や電気工事業、とび・土工工事業などとの区分が分かりにくい建設業種の一つです。
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