遺言書の保管、どこが正解?|法務局・自宅・弁護士など4つの方法を比較

これで安心!遺言書の正しい保管方法とは?よくある失敗とトラブルも紹介

遺言書を書いたからといって、それだけで安心してはいけません。

実は、せっかく作成した自筆遺言書が「見つからなかった」「無効になった」などの理由で、まったく効力を発揮できなかったというケースは少なくありません。

「ちゃんと遺言を残したのに、家族が困ってしまった」そんな本末転倒な事態を避けるために大切なのが、「保管方法」です。

本記事では、
✅ 自筆遺言にありがちな保管トラブルの実例
✅ よくある保管方法の比較と注意点
✅ 特におすすめしたい「法務局による遺言書保管制度」
をわかりやすく解説していきます。

「遺言書をちゃんと残したい」と考えている方にとって、この記事を読むことで“確実に家族に遺志を届ける”ための道筋が見えるはずです。ぜひ最後までご覧ください!

なぜ遺言書の保管方法が重要なのか?

実際によくあるトラブル事例

せっかく自筆で書いた遺言書でも、保管の仕方ひとつで「存在しなかったこと」になってしまうことがあります。以下は実際によくあるトラブルの一例です。

  • 家族が遺言書を発見できなかった
     → 遺言書がタンスや金庫の中にしまわれていて、家族にその存在を知らせていなかったため、相続手続きが通常通り進んでしまった。
  • 遺言書が破損・汚損して無効に
     → 水漏れや火災、紙の劣化で内容が判別できなくなり、法的効力が認められなかった。
  • 誰かに改ざん・廃棄されてしまった
     → 自宅に保管していた遺言書が、特定の相続人によって意図的に隠された、または破棄された疑いがあるケース。

トラブルが起きるとどうなるか?

こうしたトラブルが起きると、遺言書の内容どおりに遺産分割が行われないだけでなく、相続人同士の信頼関係も壊れてしまうことがあります。

  • 法定相続通りの分配となり、遺言者の意思が反映されない
  • 財産をめぐって親族間の対立・裁判に発展
  • 結果的に、相続が長期化し家族全体が疲弊する

「書いたはずの遺言が使えない」そんな事態を防ぐためには、正しい保管方法を選ぶことが何より大切です。

自筆遺言の主な保管方法3つを比較!

① 自宅で保管する

もっとも手軽なのが、自宅に保管する方法です。

タンスや書棚、金庫、仏壇の引き出しなどにしまう方が多いですが、リスクも高いことを知っておきましょう。

メリット

  • 費用がかからない
  • 書いたあとすぐに保管できる
  • いつでも見直せる

デメリット

  • 火災・水害・盗難などの物理的リスクがある
  • 発見されず、そのまま無効になることも
  • 他人による改ざん・破棄の恐れがある

実際に、「親が書いた遺言書がどこにあるかわからず、結局見つからなかった」というケースは少なくありません。

② 銀行の貸金庫を利用する

「安全に保管したい」と考えて、銀行の貸金庫を利用する方もいます。

確かにセキュリティ面では優れていますが、意外な落とし穴もあります。

メリット

  • 高度なセキュリティで紛失・改ざんの心配がほぼない
  • 管理が徹底されている

デメリット

  • 相続が開始された後、相続人がすぐに貸金庫を開けられない可能性がある(名義人本人でないと開けられない)
  • 銀行によっては、遺言書の保管を目的とした利用を認めていないことも
  • 利用料がかかる(月額数千円〜)

「安全だけど、肝心なときに取り出せない」リスクを理解して使う必要があります。

③ 法務局の遺言書保管制度を利用する(おすすめ)

2020年からスタートした、法務局による「遺言書保管制度」は、自筆証書遺言を安全かつ確実に保管するための国の制度です。

メリット

  • 国家機関が保管するため、信頼性と安全性が非常に高い
  • 検認(家庭裁判所での手続き)が不要
  • 改ざん・紛失・未発見のリスクを大幅に軽減
  • 死後、相続人が検索・閲覧しやすい

デメリット

  • 本人が法務局に出向いて提出する必要がある
  • 提出時に形式不備があると受け付けてもらえない(ただし形式チェックがあるので安心)

現在では、もっともおすすめされている保管方法です。

「遺言を書いたけど、どう保管しよう…」と悩んでいる方は、まずこの制度を検討する価値があります。保管には事前の予約と手数料(3,900円程度)が必要ですが、安心して保管できるメリットは大きいでしょう。法務局での手続き後には「保管証明書」が発行され、これが遺言書の存在証明として役立ちます。

もうひとつの選択肢が、弁護士や行政書士など、法律の専門家に遺言書の保管を依頼する方法です。

④ 弁護士・行政書士など専門家に保管を依頼する

特に、「法的に正確な内容にしておきたい」「誰かにきちんと管理してもらいたい」という方におすすめです。

メリット

  • 法的に有効な形式での作成・チェックまで一括で依頼できる
  • 第三者による管理で改ざん・隠蔽リスクを防げる
  • 亡くなった後の開封・相続手続きのサポートも期待できる

デメリット

  • 保管や作成にかかる費用(数万円〜)が発生
  • 信頼できる専門家選びが重要(後から連絡が取れないなどのリスク)

「相談→作成→保管→死後の対応」まで、すべてワンストップで任せられる安心感が魅力です。特に高齢者や家族との関係が複雑な場合は、専門家を頼ることも現実的な選択肢です。

法務局の遺言書保管制度とは?

制度の概要と利用条件

2020年7月から始まった「自筆証書遺言書保管制度」は、法務局(法務省管轄)で証書遺言を安全に保管してくれる公的サービスです。

制度の正式名称は「法務局における遺言書の保管等に関する法律」に基づくものです。

利用できるのはこんな人

  • 遺言者本人(代理人不可)
  • 自筆証書遺言のみが対象(公正証書遺言は対象外)
  • 日本国内の法務局に出向くことができる人

保管申請は原則、遺言者本人が法務局に直接持参する必要があります(郵送や代理提出は不可)。遺言書の用紙や封筒には指定はありませんが、法務局のルールに従う必要があります。

メリット・デメリット

主なメリット

  • 国家機関による保管で安全性が高い
  • 家庭裁判所での検認が不要
  • 死後に家族が内容確認しやすい(閲覧・通知制度あり)
  • 遺言者が「保管証」を受け取れる(自分で証拠として残せる)

主なデメリット

  • 書式に不備があると受理されない(事前にガイドラインを確認する必要あり)
  • 法務局まで本人が出向く必要がある(高齢者にとっては負担になることも)
  • 内容チェックはされない(形式の確認のみ)

利用の流れ・必要な手続き

自筆証書遺言の作成(ワープロ不可/全文手書き)

自筆証書遺言の作成(ワープロ不可/全文手書き)

保管申請書の作成(法務省のWebサイトからダウンロード可)

予約・提出

保管を希望する法務局に予約のうえ、遺言者本人が直接提出

本人確認書類(運転免許証など)と手数料(1通につき3,900円)が必要

保管証の交付・登録完了

問題なければその場で「保管証」が交付され、遺言書が正式に保管される

この制度は、「自分の死後、確実に遺言が見つかって読まれる」ことを保証してくれる、数少ない公的サービスです。特に、遺言の内容にこだわりがある方や、相続トラブルを絶対に避けたい方には非常に心強い制度と言えるでしょう。

よくある質問(Q&A形式)

ここでは、自筆遺言の保管について多くの方が疑問に思うポイントをQ&A形式でわかりやすく解説します!

Q1:法務局での保管には費用がかかりますか?

A:はい、1通につき3,900円(税込)の手数料がかかります。

これは遺言書1通ごとの料金で、提出時に現金または収入印紙で納付します。年会費や保管料のような継続的な費用は発生しません。

Q2:保管された遺言書は、誰でも閲覧できますか?

A:生前は、遺言者本人のみが閲覧や撤回を行えます。

死後に内容を確認したい場合は、相続人や利害関係者が「遺言書情報証明書」の交付申請をすることで、法務局での閲覧が可能になります。死亡の事実を証明する戸籍などの提出が必要です。

Q3:保管してから内容を変更したい場合はどうすればいいですか?

A:変更は可能ですが、修正ではなく「新たな遺言書」を作成・保管する必要があります。

古い遺言書は「撤回」手続きをすれば効力がなくなります。手数料は新たに3,900円が発生します。

Q4:法務局に保管しなかった場合、遺言書はどうなりますか?

A:自宅などに保管していた場合、相続開始後に家庭裁判所での「検認」が必要になります。

この手続きには1〜2ヶ月かかることもあり、相続手続きが遅れる原因になります。また、検認中に無効や不備が見つかると、内容が無効になる可能性もあります。

Q5:そもそも、自筆証書遺言と公正証書遺言ってどう違うの?

A:簡単に言うと以下のような違いがあります。

項目自筆証書遺言公正証書遺言
作成方法本人が手書きで作成公証人が作成(本人が口述)
費用ほぼ不要(または低額)数万円〜(公証人手数料)
保管自宅・法務局・専門家など公証役場で保管される
検認の有無必要(※法務局保管なら不要)不要
トラブルの可能性高めほぼなし(法的に厳密)

費用や手軽さを重視するなら自筆証書、安全性・確実性を重視するなら公正証書がおすすめです。

正しい保管が、家族への最後の思いやり

遺言書を書くという行為は、「自分が亡くなったあとも、家族が困らないようにしたい」という優しさの表れです。

しかし、保管が不適切だったために、その思いが届かずに終わってしまうケースが実際に多くあります。

  • 遺言書が見つからなかったことで、兄弟間の相続争いに発展
  • 有効だと思っていた遺言書が、形式不備で無効と判断された
  • 家族が「そんな書類、見たことない」と混乱したまま手続きを進めた

これらはすべて、保管の方法を一つ間違えたことによって起こった悲劇です。

せっかく遺言を書くなら、「どう残すか」ではなく「どう届けるか」までを考えることが大切です。

家族が遺言書をスムーズに発見し、安心して手続きを進められるようにする。そのために、法務局の制度や専門家への依頼といった「信頼できる保管手段」を選ぶことは、遺された人への最後の思いやりなのです。

まとめ

遺言書を書くことは、将来の安心のための第一歩です。

しかし、保管の方法まで考えてこそ、はじめてその遺言が「意味のあるもの」になります。

  • 自筆遺言の保管で起こりやすいトラブル
  • 主な保管方法4つ(自宅・貸金庫・法務局・専門家)
  • 特におすすめの「法務局による保管制度」の仕組みとメリット

について詳しくご紹介しました。

どの方法が最適かは、状況や考え方によって異なりますが、少なくとも自宅に放置だけは避けてください。そしてもし迷ったら、まずは最寄りの法務局へ問い合わせてみることをおすすめします。

この記事のポイントおさらい

  • ✅ 保管を誤ると、せっかくの遺言書が無効になることもある
  • ✅ 法務局の保管制度は、安全・確実でコストも低い
  • ✅ 弁護士や行政書士など、信頼できる専門家の活用も選択肢のひとつ
  • ✅ 「どう届けるか」を考えることが、家族への最後の優しさにつながる

「遺言書を書きたい」と思った今が、最初のアクションのチャンスです。ぜひ保管方法までしっかり考えて、大切な思いをきちんと家族に届けてください。