親が亡くなったとき、相続人になるはずだった兄弟がすでに亡くなっている場合、その兄弟の子どもが代わりに相続人になることがあります。これを「代襲相続」といいます。
たとえば、父が亡くなり、次男は存命しているものの、長男が父より先に亡くなっており、長男に子どもがいるケースです。この場合、長男の子、つまり父から見た孫が、長男に代わって相続人になる可能性があります。
ただし、遺言で長男に財産を相続させると指定していた場合、長男の子が当然にその内容を引き継ぐとは限りません。法定相続における代襲相続と、遺言で指定された人が先に亡くなった場合の扱いは、分けて考える必要があります。
この記事では、親の相続で兄弟がすでに死亡している場合を中心に、誰が代襲相続人になるのか、相続分はどうなるのかをわかりやすく解説します。あわせて、「遺言と代襲相続の関係」や、「世襲と代襲相続は同じ意味なのか」という疑問にもお答えします。
目次
①代襲相続とは
代襲相続とは、本来相続人になるはずだった人が、被相続人より先に亡くなっている場合などに、その人の子どもが代わって相続人になる制度です。
たとえば、父が亡くなり、長男と次男が相続人になるはずだったものの、長男が父より先に亡くなっていたとします。長男に子どもがいれば、その子どもが長男に代わって父の財産を相続します。
代襲相続を理解するには、「被相続人」「相続人」「被代襲者」「代襲相続人」の関係を整理することが大切です。
相続人と被相続人の違い
被相続人とは、亡くなって財産を遺す人のことです。
一方、相続人とは、被相続人の財産や権利、義務を引き継ぐ人をいいます。
たとえば、父が亡くなり、妻と子どもが財産を引き継ぐ場合は、亡くなった父が被相続人、妻と子どもが相続人です。
家族であれば誰でも相続人になれるわけではなく、民法によって相続人になる人の範囲や順位が定められています。
代襲相続では、「誰が亡くなったのか」「本来は誰が相続人になるはずだったのか」を最初に確認すると、家族関係を整理しやすくなります。
相続人になれる人の範囲や順位、法定相続分については、「相続人とは?法定相続人の範囲・順位・法定相続分をわかりやすく解説」で詳しく説明しています。
本来の相続人に代わって子どもが相続する制度

代襲相続では、本来相続人になるはずだった人の子どもが、その人の立場を引き継ぎます。
父の相続で長男がすでに亡くなっている場合、長男の相続分がそのまま次男に加算されるわけではありません。長男に子どもがいれば、その子どもが長男に代わって相続人になります。
長男の子どもは、亡くなった父から見ると孫です。存命の次男から見ると、甥または姪にあたります。
つまり、「親の相続で兄弟がすでに死亡している」という場合には、亡くなった兄弟の子どもが相続に加わる可能性があります。
被相続人の兄弟姉妹が相続人になるケース全体については、兄弟姉妹だけが相続人になる場合の相続分で整理しています。
被代襲者と代襲相続人の意味
代襲相続では、先に亡くなった本来の相続人を被代襲者、その人に代わって相続する人を代襲相続人といいます。
父より先に長男が亡くなり、長男の子どもが相続するケースでは、次のように整理できます。
- 被相続人:亡くなった父
- 被代襲者:父より先に亡くなった長男
- 代襲相続人:長男の子ども
専門用語だけを見ると難しく感じますが、「財産を遺した人」「先に亡くなった本来の相続人」「その人に代わって相続する子ども」の3者に分けて考えると理解しやすくなります。
代襲相続が起こる基本条件
代襲相続の代表的なケースは、本来の相続人が被相続人より先に亡くなっている場合です。
そのほか、相続人が相続欠格となった場合や、相続人から廃除された場合にも、代襲相続が発生することがあります。
一方、相続放棄をした人の子どもには、原則として代襲相続は発生しません。また、被相続人が亡くなった後に相続人が亡くなった場合は、代襲相続ではなく、別の相続が続けて発生する「数次相続」として扱われます。
そのため、代襲相続に該当するかを判断するには、家族関係だけでなく、誰がいつ亡くなったのかも確認する必要があります。が大切です。
相続人の確認だけでなく、相続で引き継ぐ財産や借金、遺言書、相続放棄などの基本については、「相続とは?意味・種類・法律上の基本を簡単にわかりやすく解説」で詳しく説明しています。
②親の相続で兄弟がすでに死亡している場合はどうなる?

親が亡くなった時点で、相続人になるはずだった兄弟がすでに亡くなっている場合、その兄弟に子どもがいれば、子どもが代わりに相続人になることがあります。これが代襲相続です。
たとえば、父に長男と次男がいたものの、長男が父より先に亡くなっていたとします。長男に子どもがいれば、その子どもが長男に代わって父の相続人になります。
読者本人から見ると、亡くなった兄弟の子どもは甥や姪です。一方、亡くなった親から見ると孫にあたります。
このケースでは、亡くなった兄弟の相続分が、そのまま存命の兄弟に加算されるとは限りません。亡くなった兄弟に子どもがいるか、何人いるか、親と兄弟のどちらが先に亡くなったかによって、相続人と相続分が変わります。
親の遺産を複数の子どもで相続する場合の基本的な分け方や、兄弟間での遺産分割の進め方については、「親の遺産を兄弟で相続する場合の分け方と進め方」で解説しています。
親の相続では、前妻との子と後妻との子のように母親が異なる兄弟姉妹が相続人になることもあります。腹違いの兄弟の法定相続分については、以下の記事で具体的に解説しています。
腹違いの兄弟の相続分は半分?
亡くなった兄弟に子どもがいれば甥・姪が代襲相続する
父が亡くなり、長男と次男が相続人になるはずだったものの、長男が父より先に亡くなっていたとします。
長男に子どもがいる場合、その子どもが長男に代わって父の相続人になります。
家族関係を整理すると、次のとおりです。
- 被相続人:亡くなった父
- 被代襲者:父より先に亡くなった長男
- 存命の相続人:次男
- 代襲相続人:長男の子ども
長男の子どもは、父から見ると孫です。次男から見ると甥または姪ですが、相続では「亡くなった長男の子ども」という立場で代襲相続人になります。
そのため、次男だけで父の遺産分割を進めることはできません。長男の子どもも相続人として遺産分割協議に参加する必要があります。
父の妻・次男・亡くなった長男の子がいる場合の相続分
次の家族構成を例に考えてみましょう。
- 父が死亡
- 父の妻は存命
- 次男は存命
- 長男は父より先に死亡
- 長男には子どもが1人いる
この場合の相続人は、父の妻、次男、長男の子どもの3人です。
法定相続分は、原則として次のようになります。
- 父の妻:2分の1
- 次男:4分の1
- 長男の子ども:4分の1
まず、配偶者である妻が2分の1を相続します。残りの2分の1を、長男と次男の2つの系統で分けます。
長男はすでに亡くなっているため、長男が本来受け取るはずだった4分の1を、長男の子どもが代襲相続します。
ここで大切なのは、長男が先に亡くなっていたからといって、次男の法定相続分が増えるわけではないという点です。
亡くなった兄弟に子どもが複数いる場合の相続分
亡くなった長男に子どもが複数いる場合は、長男が本来受け取るはずだった相続分を、その子どもたちで分けます。
先ほどの例で、長男に子どもが2人いる場合は、長男の相続分である4分の1を2人で分けます。
それぞれの法定相続分は、次のとおりです。
- 父の妻:2分の1
- 次男:4分の1
- 長男の子どもA:8分の1
- 長男の子どもB:8分の1
代襲相続人が2人になっても、次男の相続分が減るわけではありません。長男の系統に割り当てられた4分の1を、その子どもたちで分けることになります。
亡くなった兄弟に子どもがいない場合
父より先に亡くなった長男に、子どもや孫などの直系卑属がいない場合、長男の系統では代襲相続は発生しません。
たとえば、父の妻と次男が存命で、先に亡くなった長男に子どもがいない場合は、原則として妻と次男が相続人になります。
この場合の法定相続分は、次のとおりです。
- 父の妻:2分の1
- 次男:2分の1
また、亡くなった長男に配偶者がいたとしても、その配偶者が長男に代わって父の財産を代襲相続するわけではありません。
代襲相続人になれるのは、原則として先に亡くなった相続人の子どもなど、法律で定められた範囲の人です。
親の死亡後に兄弟が亡くなった場合は「数次相続」になる

兄弟が亡くなった時期によっては、代襲相続ではなく数次相続になります。
数次相続とは、最初の相続手続きが終わる前に相続人の1人が亡くなり、次の相続が続けて発生することです。
たとえば、父が亡くなった時点では長男が生きていたものの、父の遺産分割が終わる前に長男が亡くなった場合を考えてみましょう。
この場合、長男は父の死亡時点ですでに相続人になっています。その後に長男が亡くなったため、長男が持っていた相続上の地位を、長男自身の相続人が引き継ぎます。
長男に妻と子どもがいる場合は、長男の妻と子どもが、父の遺産分割協議に関わることになります。
整理すると、次のような違いがあります。
| 亡くなった順番 | 扱い |
|---|---|
| 父より先に長男が死亡 | 長男の子どもが代襲相続する |
| 父の死亡後に長男が死亡 | 長男の相続人が数次相続する |
数次相続では、長男の子どもだけでなく、長男の配偶者も関係する可能性があります。ここが代襲相続との大きな違いです。
そのため、誰が相続人になるのかを判断するときは、家族関係だけでなく、親と兄弟のどちらが先に亡くなったのかを確認することが重要です。だけでなく、親と兄弟のどちらが先に亡くなったのかを確認することが重要です。
③亡くなった夫の親の遺産を妻は相続できる?
妻は原則として夫の親を代襲相続できない
夫がその親より先に亡くなっていたとしても、妻が夫に代わって夫の親の遺産を代襲相続することは、原則としてできません。
代襲相続では、本来相続人になるはずだった人の子どもなどが、その人に代わって相続人になります。配偶者は代襲相続人には含まれません。
たとえば、夫が父親より先に亡くなっていた場合、夫の妻が義父の遺産を当然に相続できるわけではありません。
この点は、夫の親と長年同居していた場合や、介護をしていた場合でも同じです。家族としての関わりが深くても、それだけで法定相続人になるわけではありません。
そのため、「亡くなった夫の親の遺産を妻が相続できるか」を考えるときは、まず妻自身に代襲相続権があるわけではないことを押さえておく必要があります。
ただし、夫との間に子どもがいる場合は、その子どもが夫に代わって代襲相続することがあります。
夫との間に子どもがいれば子どもが代襲相続することがある
夫が親より先に亡くなっている場合でも、夫との間に子どもがいれば、その子どもが夫に代わって祖父母の遺産を代襲相続することがあります。
たとえば、夫が父親より先に亡くなっており、夫婦に子どもが1人いるケースでは、妻ではなく、その子どもが夫の立場を引き継いで相続人になります。
この場合、子どもは亡くなった夫から見ると子、夫の親から見ると孫です。代襲相続では、亡くなった夫が本来受け取るはずだった相続分を、その子どもが引き継ぎます。
子どもが複数いる場合は、夫が本来受け取るはずだった相続分を、その子どもたちで分けることになります。
つまり、夫の親の遺産については、妻自身には原則として代襲相続権がなくても、子どもには相続権が生じる可能性があります。そのため、家族関係を確認するときは、妻だけでなく、夫に子どもがいるかどうかも重要です。
夫の親が先に亡くなっている場合は妻が数次相続に関わることがある
夫の親が先に亡くなり、その後に夫が亡くなった場合は、代襲相続ではなく「数次相続」になることがあります。
たとえば、夫の父親が亡くなった時点では夫が存命だったものの、遺産分割が終わる前に夫が亡くなったケースです。この場合、夫は父親が亡くなった時点ですでに相続人となっているため、その相続上の地位を夫自身の相続人が引き継ぐことになります。
夫に妻と子どもがいる場合は、妻と子どもが夫の相続人として、夫の親の遺産分割に関わる可能性があります。
つまり、夫の親の遺産について妻が関係するかどうかは、夫とその親のどちらが先に亡くなったかによって扱いが変わります。夫が親より先に亡くなっていれば妻は原則として代襲相続しませんが、親が先に亡くなっていれば、数次相続によって妻が関わる場合があります。
夫と義両親が続けて亡くなったケースでは、どちらが先に亡くなったかによって、代襲相続になるのか、数次相続として整理するのかが変わります。詳しくは、「夫死亡後に義両親が死亡した場合の相続」で、死亡する順番ごとに解説しています。
④代襲相続が発生するケース
代襲相続は、本来相続人になるはずだった人が、被相続人より先に亡くなっている場合に限って起こる制度ではありません。
相続人が相続欠格となった場合や、廃除によって相続権を失った場合にも、その人の子どもが代襲相続人になることがあります。
代襲相続が発生する主なケースは、次の3つです。
相続人が被相続人より先に死亡した場合
最も一般的なのは、本来相続人になるはずだった人が、被相続人より先に亡くなっているケースです。
たとえば、父が亡くなった時点で長男がすでに死亡しており、長男に子どもがいる場合、その子どもが長男に代わって父の相続人になります。
この場合の関係は、次のように整理できます。
- 被相続人:父
- 被代襲者:父より先に亡くなった長男
- 代襲相続人:長男の子ども
代襲相続に該当するかを判断するときは、父と長男のどちらが先に亡くなったのかを確認することが重要です。
長男が父より先に亡くなっていれば代襲相続ですが、父が亡くなった後に長男が亡くなった場合は、先に説明した数次相続になります。
なお、被相続人と相続人が同じ事故などで亡くなり、どちらが先に死亡したかわからない場合には、法律上、同時に死亡したものと推定されることがあります。その場合も、一方が他方を相続する関係にはならないため、代襲相続が問題になる可能性があります。
相続人が相続欠格になった場合
相続欠格とは、法律で定められた重大な行為をした相続人について、相続権を当然に失わせる制度です。
たとえば、被相続人や他の相続人を故意に死亡させた場合や、詐欺・強迫によって遺言をさせたり、遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿したりした場合などが該当する可能性があります。
相続欠格は、家庭裁判所の審判を受けて初めて効力が生じる制度ではありません。法律上の欠格事由に該当すると、原則として当然に相続権を失います。
ただし、相続欠格となるかどうかは事実関係によって判断が難しいことがあります。遺言書を保管していただけなのか、意図的に隠したのかなど、行為の内容や目的によって結論が変わる可能性があります。
相続欠格になった本人は相続できませんが、その人に子どもがいる場合は、子どもが代襲相続人になることがあります。
たとえば、父の長男が相続欠格となり、長男に子どもがいる場合、長男の子どもが長男に代わって父の財産を相続する可能性があります。
相続人が廃除された場合
相続人の廃除とは、被相続人に対して虐待や重大な侮辱をしたり、著しい非行があったりした推定相続人について、家庭裁判所の手続きによって相続権を失わせる制度です。
たとえば、長男が父に対して長期間にわたり暴力を振るっていた、生活費を繰り返し要求して拒否されると脅していた、父の名誉を著しく傷つける言動を続けていた、といったケースでは、廃除が問題になることがあります。
ほかにも、多額の借金を重ねて家族に深刻な負担をかけ続けた、犯罪行為を繰り返して家族関係を著しく壊した、といった事情が「著しい非行」にあたる可能性があります。
ただし、単なる親子げんかや性格の不一致だけで、直ちに廃除が認められるわけではありません。被相続人が「相続させたくない」と思っただけでは足りず、虐待・重大な侮辱・著しい非行といえる具体的な事情が必要です。
原則として、被相続人が家庭裁判所へ申し立て、廃除が認められる必要があります。遺言によって廃除の意思を示すこともできますが、その場合も家庭裁判所の手続きが必要です。
廃除された本人は相続できませんが、その人に子どもがいる場合は、その子どもが代襲相続人になることがあります。
たとえば、父の長男が廃除され、長男に子どもがいる場合、長男の子どもは父から見た孫として、長男に代わって相続する可能性があります。
相続欠格との違い
相続欠格は、法律上の重大な行為によって当然に相続権を失う制度です。一方、廃除は、被相続人の申立てなどに基づき、家庭裁判所の手続きを経て相続権を失わせる制度です。
代襲相続が発生するかは原因を確認することが大切
本来の相続人が相続できない状態であっても、その理由によって代襲相続の有無は変わります。
整理すると、次のようになります。
| 本来の相続人が相続できない理由 | 代襲相続 |
|---|---|
| 被相続人より先に死亡した | 発生する可能性がある |
| 相続欠格となった | 発生する可能性がある |
| 廃除された | 発生する可能性がある |
| 相続放棄した | 原則として発生しない |
「相続できない人がいるから、その子どもが代わりに相続する」と一律に考えるのではなく、死亡・相続欠格・廃除・相続放棄のどれに該当するのかを確認することが重要です。
⑤代襲相続が発生しないケース

本来の相続人が相続できない場合でも、必ずその子どもが代襲相続人になるわけではありません。
特に注意したいのは、相続放棄をした場合、配偶者が先に亡くなっている場合、被相続人の死亡後に相続人が亡くなった場合です。
相続人が相続放棄した場合
相続放棄とは、被相続人の財産や権利だけでなく、借金などの義務も含めて、相続を一切引き継がないための手続きです。
相続放棄をした人は、法律上、初めから相続人ではなかったものとして扱われます。そのため、その人の子どもが代わりに相続することもありません。
たとえば、父が亡くなり、長男と次男が相続人になったものの、長男が相続放棄をしたとします。長男に子どもがいても、その子どもが長男に代わって父の財産を代襲相続することはありません。
死亡・相続欠格・廃除では代襲相続が発生することがありますが、相続放棄では原則として発生しない点が重要です。
配偶者が先に亡くなっている場合
配偶者には代襲相続がありません。
たとえば、父より先に父の妻が亡くなっていたとしても、妻の前婚の子や妻の兄弟姉妹が、妻に代わって父の財産を相続することはありません。
代襲相続が認められるのは、被相続人の子の系統や、一定の場合における兄弟姉妹の系統です。配偶者の立場を、その親族が引き継ぐ制度ではありません。
なお、父と妻の間に子どもがいる場合、その子どもは妻の代わりに相続するのではなく、父の子として自分自身の相続権に基づいて相続します。
被相続人の死亡後に相続人が亡くなった場合
被相続人が亡くなった時点で相続人が生きており、その後に亡くなった場合は、代襲相続ではありません。
この場合、その相続人はいったん相続権を取得しています。その後に亡くなったことで、その人自身の相続が発生します。
たとえば、父が亡くなった時点では長男が存命だったものの、父の遺産分割が終わる前に長男が亡くなった場合です。このケースは、長男の子が父の代襲相続人になるのではなく、長男の妻や子どもなどが、長男自身の相続人として関わります。
これは、先ほど説明した「数次相続」にあたります。
代襲相続が発生しない主なケース
整理すると、次のようになります。
| ケース | 代襲相続 |
|---|---|
| 相続人が相続放棄した | 原則として発生しない |
| 配偶者が先に亡くなった | 発生しない |
| 被相続人の死亡後に相続人が亡くなった | 数次相続となり、代襲相続ではない |
代襲相続に該当するかどうかは、「相続できない理由」と「亡くなった順番」を確認することが大切です。
⑥誰が代襲相続人になれる?
代襲相続人になれる人は、法律上の範囲が決められています。
基本となるのは、被相続人の子どもに代わって孫が相続するケースです。さらに、孫も先に亡くなっている場合は、ひ孫が相続することがあります。
一方、被相続人の兄弟姉妹が本来の相続人になるケースでは、その子どもである甥・姪が代襲相続人になることがあります。ただし、兄弟姉妹の代襲相続には範囲の制限があります。
子に代わって孫が相続する
被相続人の子どもが、被相続人より先に亡くなっている場合、その子どもの子、つまり被相続人から見た孫が代襲相続人になります。
たとえば、父より先に長男が亡くなっており、長男に子どもがいる場合は、長男の子どもが父の財産を代襲相続します。
このとき、孫は自分の親である長男が本来受け取るはずだった相続分を引き継ぎます。
長男に子どもが2人いれば、長男の相続分を2人で分けます。孫の人数が増えたからといって、存命の次男など、ほかの系統の相続分まで変わるわけではありません。
孫も先に亡くなっていれば、ひ孫が再代襲する
被相続人の子どもだけでなく、その子どもである孫も先に亡くなっている場合は、ひ孫が代襲相続人になることがあります。これを再代襲相続といいます。
たとえば、父より先に長男が亡くなり、長男の子どもも父より先に亡くなっていたものの、その子どもに子がいる場合です。
この場合、父から見たひ孫が、長男の系統の相続分を引き継ぐ可能性があります。
被相続人の子どもの系統では、条件を満たせば、孫、ひ孫、その先の直系卑属へと再代襲が続くことがあります。
兄弟姉妹の代襲相続は甥・姪まで
被相続人に子どもや父母などがおらず、兄弟姉妹が相続人になる場合にも、代襲相続が発生することがあります。
たとえば、被相続人の兄がすでに亡くなっており、その兄に子どもがいる場合は、兄の子ども、つまり被相続人から見た甥や姪が、兄に代わって相続人になります。
ただし、兄弟姉妹の系統で代襲相続が認められるのは、甥・姪までです。甥や姪も被相続人より先に亡くなっていた場合、その子どもがさらに代襲相続することはありません。
一方、被相続人の子どもの系統では、孫だけでなく、条件を満たせばひ孫以降にも再代襲が続くことがあります。兄弟姉妹の系統では一代限りである点が、大きな違いです。
実際におじ・おばの兄弟姉妹が先に亡くなっており、甥・姪が代襲相続人になる場合には、その後に戸籍で相続人を確定し、財産や借金を調べていく必要があります。
「おじ・おばが亡くなった場合、甥・姪は相続人になる?」では、甥・姪に相続が回ってきた後の具体的な手続きまで解説しています。
なお、ここで説明しているのは、被相続人自身の兄弟姉妹が相続人になるケースです。
先に説明した「親の相続で、自分の兄弟がすでに亡くなっているケース」では、亡くなった兄弟の子どもは、親から見れば孫として代襲相続します。これに対し、この項目では、被相続人から見た甥や姪が代襲相続人になります。
甥や姪が複数いる場合は、先に亡くなった兄弟姉妹が本来受け取るはずだった相続分を、その甥や姪の間で分けることになります。
そもそも兄弟姉妹が法定相続人になる条件や、配偶者と兄弟姉妹の法定相続分については、「兄弟姉妹に相続権はある?相続順位・相続分と甥姪の扱いを解説」をご覧ください。
独身の兄弟が亡くなった場合に、兄弟姉妹や甥・姪が相続人になるかどうかは、子どもや直系尊属の有無によって決まります。相続人を確認した後の勤務先・財産・賃貸住宅の手続きについては、「独身の兄弟が亡くなった場合の相続人と手続き」をご覧ください。
⑦遺言がある場合、代襲相続はどうなる?
遺言がある場合は、法定相続の代襲相続と同じように考えられるとは限りません。
特に注意が必要なのは、遺言で財産を受け取る人として指定されていた人が、遺言者より先に亡くなっているケースです。
たとえば、父が遺言で「自宅を長男に相続させる」と定めていたものの、長男が父より先に亡くなっていたとします。この場合、長男の子どもが当然にその自宅を引き継ぐとは限りません。
法定相続では、長男の子どもが代襲相続人になる可能性がありますが、遺言で指定された財産の扱いは、遺言の文言や内容によって判断が変わります。
遺言で指定された人が先に亡くなっていた場合
遺言で財産を受け取る人として指定された人が、遺言者より先に亡くなっていた場合、その指定部分は効力を失う可能性があります。
たとえば、
自宅を長男に相続させる
という遺言があり、長男が遺言者より先に亡くなっていたケースです。
この場合、長男の子どもが法定相続上の代襲相続人になったとしても、遺言で指定された自宅まで当然に引き継ぐとは限りません。
長男の子どもがその財産を受け取れるかどうかは、遺言全体の内容や、ほかにどのような定めがあるかによって変わります。
「相続させる」と「遺贈する」では扱いが異なる
遺言では、「相続させる」と書かれている場合と、「遺贈する」と書かれている場合があります。
「相続させる」は、主に法定相続人に財産を承継させる表現です。一方、「遺贈する」は、相続人以外の人にも財産を渡すことができる表現です。
どちらも財産を渡す内容ですが、法律上の扱いは同じではありません。
そのため、指定された人が先に亡くなっていた場合も、単に「その人の子どもが代わりに受け取る」とは判断できません。
遺言の文言だけでなく、誰に、どの財産を、どのような形で承継させる内容なのかを確認する必要があります。
予備的な指定があるかで結果が変わる
遺言では、指定した人が先に亡くなった場合に備えて、次に財産を受け取る人を決めておくことがあります。
たとえば、
自宅を長男に相続させる。長男が私より先に死亡していた場合は、長男の子に相続させる
と定めておけば、長男が先に亡くなっていた場合の扱いも明確になります。
このような定めは、一般に予備的な指定や予備的遺言と呼ばれます。
予備的な指定がなければ、遺言者が想定していたとおりに財産が承継されないことがあります。家族構成が変わった場合や、遺言で指定した人が亡くなった場合は、遺言内容を見直すことが大切です。
⑧自分の家庭で代襲相続が起こるか確認する方法
代襲相続に該当するかを確認するには、家族関係だけでなく、誰がいつ亡くなったのか、相続放棄や廃除などがないかを順番に整理する必要があります。
特に、親の相続で兄弟がすでに亡くなっている場合は、亡くなった兄弟に子どもがいるかどうかで相続人が変わります。
本来の法定相続人を確認する
まずは、被相続人が亡くなった時点で、本来誰が法定相続人になるのかを確認します。
たとえば、父が亡くなり、妻と長男・次男がいる場合、原則として妻と長男・次男が相続人です。
ただし、長男が父より先に亡くなっている場合は、長男本人は相続人になれません。そこで、長男に子どもがいるかを確認し、代襲相続が発生するかを判断します。
最初から孫や甥・姪だけを見るのではなく、まず「本来の相続人は誰だったのか」を整理すると、関係がわかりやすくなります。
誰がいつ亡くなったかを確認する
代襲相続か数次相続かを判断するうえで、死亡した順番は非常に重要です。
父より先に長男が亡くなっていれば、長男の子どもが代襲相続人になる可能性があります。
一方、父が亡くなった時点では長男が存命で、その後に長男が亡くなった場合は、代襲相続ではなく数次相続です。
見た目の家族構成が同じでも、死亡した順番によって相続人が変わるため、戸籍や死亡日がわかる書類で正確に確認する必要があります。
相続放棄・相続欠格・廃除の有無を確認する
本来の相続人が相続できない場合、その理由によって代襲相続の扱いが変わります。
相続人が被相続人より先に死亡していた場合や、相続欠格・廃除に該当する場合は、その子どもが代襲相続人になることがあります。
一方、相続放棄をした人の子どもには、原則として代襲相続は発生しません。
「相続しない人がいる」という事実だけで判断せず、死亡、相続放棄、相続欠格、廃除のどれにあたるのかを確認することが大切です。
亡くなった相続人に子どもや孫がいるか確認する
本来の相続人が先に亡くなっていても、その人に子どもがいなければ代襲相続は発生しません。
たとえば、父より先に長男が亡くなっていたとしても、長男に子どもや孫などの直系卑属がいなければ、長男の系統に代襲相続人はいません。
反対に、長男に子どもがいれば、その子どもが父から見た孫として代襲相続人になる可能性があります。
子どもも先に亡くなっている場合は、さらにその子であるひ孫が再代襲することもあるため、直系の親族関係をたどって確認します。
行政書士が受任した事例|家系図を作成して代襲相続人を整理

※本事例は、実際の相談・受任事例をもとに、個人が特定されないよう家族構成や事情の一部を変更しています。
当事務所が受任した相続案件では、親が亡くなり、相続人となる子どものうち1人が、親より先に亡くなっていました。
先に亡くなった子どもには実子がいなかったため、依頼者は、代襲相続人はいないと考えていました。
しかし、戸籍を確認したところ、先に亡くなった子どもが、学生時代の友人の子どもと普通養子縁組をしていたことがわかりました。友人が亡くなった後、その子どもを金銭面で支援する目的で養子縁組をしていたという事情がありました。
普通養子縁組が成立すると、養子は養親の法律上の子どもになります。そのため、養親が自分の親より先に亡くなっていた場合、養子が代襲相続人になることがあります。
この事例では、次の関係を戸籍から確認しました。
- 被相続人:亡くなった親
- 被代襲者:親より先に亡くなった子ども
- 代襲相続人:被代襲者と普通養子縁組をしていた養子
依頼者は、その養子の存在や、相続人になる可能性を十分に把握していませんでした。そこで、被相続人と先に亡くなった子どもの戸籍を収集し、養子縁組の事実や成立時期、親族関係を確認しました。
そのうえで相続関係を家系図に整理し、誰が相続人で、誰が代襲相続人になるのかを明確にしました。
戸籍上の親子関係には、実子だけでなく養子も含まれます。家族が把握している関係だけで判断すると、相続人を見落とすことがあります。特に、普通養子縁組がある場合は、戸籍を確認したうえで相続関係を整理することが重要です。
養子は法律上の子として相続人になりますが、普通養子と特別養子では実親との相続関係が異なります。また、養子縁組をしていない連れ子には、再婚相手の相続権はありません。養子・連れ子・胎児の相続権については、「養子・連れ子・胎児に相続権はある?相続分や婿養子との違いも解説」で詳しく解説しています。
⑨代襲相続に関するよくある質問
Q:遺言で指定された人が先に亡くなっていたら、その子どもが相続しますか?
当然に相続できるとは限りません。法定相続では子どもが代襲相続人になる可能性がありますが、遺言で指定された財産をそのまま引き継げるかは、遺言の文言や予備的な指定の有無によって変わります。
Q:相続放棄した人の子どもは代襲相続できますか?
原則としてできません。相続放棄をした人は、初めから相続人ではなかったものとして扱われるため、その子どもにも代襲相続は発生しません。
Q:親より先に亡くなった兄弟の配偶者は相続できますか?
代襲相続はできません。亡くなった兄弟に子どもがいれば、その子どもが代襲相続人になります。ただし、親の死亡後に兄弟が亡くなった数次相続では、兄弟の配偶者が関係することがあります。
Q:孫が複数いる場合は、全員が代襲相続人になりますか?
原則として全員が代襲相続人になります。先に亡くなった親が受け取るはずだった相続分を、孫たちで分けます。
Q:普通養子も代襲相続人になりますか?
普通養子は養親の法律上の子どもになるため、代襲相続人になることがあります。養子縁組の成立時期や戸籍上の関係を確認して判断します。
Q:世襲と代襲相続は同じ意味ですか?
同じ意味ではありません。世襲は地位や家業などを子孫が受け継ぐ一般的な言葉で、代襲相続は法律上の相続制度です。
まとめ
代襲相続とは、本来相続人になるはずだった人が、被相続人より先に亡くなっている場合などに、その人の子どもが代わって相続人になる制度です。
親の相続で兄弟がすでに亡くなっている場合、その兄弟に子どもがいれば、亡くなった親から見た孫が代襲相続人になる可能性があります。存命の兄弟から見ると、甥や姪が相続に加わることになります。
一方で、相続放棄をした人の子どもには、原則として代襲相続は発生しません。また、親が亡くなった後に兄弟が亡くなった場合は、代襲相続ではなく数次相続として扱われます。
さらに、遺言で指定された人が先に亡くなっていた場合、その子どもが当然に同じ財産を受け取れるとは限りません。法定相続の代襲相続と、遺言による財産の承継は分けて考える必要があります。
代襲相続に該当するかを判断するときは、次の点を確認することが大切です。
- 本来の相続人は誰か
- 誰が先に亡くなったか
- 亡くなった人に子どもや孫がいるか
- 相続放棄・相続欠格・廃除があるか
- 遺言がある場合、その内容はどうなっているか
家族関係が複雑な場合や、養子縁組など戸籍上の関係がある場合は、見た目だけでは相続人を正確に判断できないことがあります。戸籍を確認し、家系図に整理することで、誰が相続人になるのかを把握しやすくなります。
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特定行政書士 野中雅敏(IT行政書士事務所)
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