個人事業主でも、必要な条件を満たせば建設業許可を取得できます。
そのためには、自分がどの要件を満たしているかを確認し、それを資料で証明できることが重要です。
たとえば、経営経験や実務経験、営業所や財産的基礎などは、それぞれ確認する資料が異なります。
この記事では、大田区で建設業を営む個人事業主のケースをもとに、行政書士と一緒に許可取得まで進んでいく流れを紹介します。
目次
①個人事業主が建設業許可を取るまで|今回のケース
今回、建設業許可の取得を目指すのは、大田区で建設業を営む個人事業主の佐藤さんです。
| 項目 | 佐藤さんの状況 |
|---|---|
| 事業形態 | 個人事業主 |
| 営業地域 | 大田区 |
| 独立後の期間 | 2年 |
| 従業員 | 4名(事務員1名・現場作業員3名) |
| 現場体制 | 佐藤さん本人+現場作業員3名 |
| 前職 | 建設会社に10年間勤務 |
| 前職での仕事 | 小規模工事を2~3現場担当する現場監督 |
| 学歴 | 高専卒 |
| 許可取得のきっかけ | 元勤務先から大口工事の受注相談を受けた |
| 元勤務先の協力 | 経験を証明するために必要な資料提供に協力予定 |
独立後は、これまで建設業許可を必要としない範囲の工事を中心に受注してきました。
そんな中、以前勤務していた会社から、これまでより規模の大きな工事を請け負ってほしいという相談が入ります。
今後の受注を考えると、建設業許可を取得しておきたい状況です。今回相談を受けた工事は、建設業許可が必要になる規模です。

これを機会に許可を取りたいんですが、自分の場合、何から見ればいいんでしょうか?
建設業許可について調べてみると、常勤役員等、営業所技術者等、財産的基礎、営業所など、いくつもの条件が出てきます。
建設業許可の取得条件を先に確認したい方は、こちらの記事で全体像を解説しています。
建設業許可の取得条件・申請要件
そこで佐藤さんは、申請書を作り始める前に、自分の場合はどの要件がポイントになり、何を用意すれば許可取得まで進められるのかを行政書士に相談することにしました。
②行政書士を探すところから許可取得が始まった
建設業許可を取ろうと考えた佐藤さんは、まずインターネットで行政書士事務所を探しました。
最初に問い合わせたのは、料金の安さを大きく打ち出している事務所です。
問い合わせ自体はできたものの、佐藤さんとしては、自分の経歴で要件を満たせるのか、どんな資料が必要になるのかについて、もう少し具体的に相談したいと感じました。
そこで改めて、大田区周辺で建設業許可について情報発信している行政書士事務所を探してみることにします。
料金だけを見ると最初の事務所より少し高めでしたが、Webサイトには常勤役員等、営業所技術者等、財産的基礎、営業所要件などについて詳しい説明がありました。
佐藤さんは、まず話を聞いてみることにしました。

前の会社から大きめの工事をお願いしたいと言われていて、建設業許可を取りたいと思っています。独立してまだ2年なんですが、取れますか?

まずは、営業所技術者等と常勤役員等の2つを見ましょう。ここがクリアできるかで、申請まで進められるかの見通しがかなり立ちます。
いきなり申請書や料金の話をするのではなく、まず取得条件の中で難しいところから確認するという説明を受けたことで、佐藤さんも許可取得までの進め方をイメージしやすくなりました。
ここから、佐藤さんと行政書士で一つずつ条件を確認していきます。
個人事業主でも、実際に請け負っている工事内容に合わせて申請する業種を選びます。
建設業許可29業種の選び方
足場、外構、コンクリート工事などを行う個人事業主が、とび・土工工事業の許可を取得する場合の条件はこちらで解説しています。
とび・土工工事業の建設業許可
LAN配線や防犯カメラなどを請け負う個人事業主が、電気通信工事業の許可を取得する場合の条件はこちらで解説しています。
電気通信工事業の建設業許可
③ステップ1|まず営業所技術者等と常勤役員等を確認する

最初の相談で行政書士から提案されたのは、建設業許可の条件を最初から全部確認するのではなく、まず営業所技術者等と常勤役員等の見通しを立てることでした。
どちらも人の経験や資格が関係する要件で、申請直前になって簡単に用意できるものではありません。
今回の佐藤さんの場合は、次のように確認していくことになりました。
| 最初に確認する要件 | 佐藤さんの場合 |
|---|---|
| 営業所技術者等 | 高専の卒業学科+前職での実務経験を使えるか確認 |
| 常勤役員等 | 独立2年の本人だけでは難しいため、要件を満たす経験者を探す |
営業所技術者等は高専卒+実務経験で検討する
まず確認したのは、営業所技術者等です。

佐藤さん、高専では何科を卒業しましたか?

〇〇科です。卒業してから前の会社に入って、現場監督を10年くらいやっていました。

それなら、卒業した学科と今回取得する業種が対応しているか、それから必要な実務経験を証明できるかを見てみましょう。
営業所技術者等は、高専を卒業しているだけで要件を満たすわけではありません。
取得しようとする建設業種に対応する指定学科を卒業していることと、所定の実務経験があることを確認します。
佐藤さんの場合は、前職で10年間現場監督をしているため、次に問題になるのは、その経験年数だけではなく、今回取得する業種に関する実務経験として証明できるかです。
そのため、高専の卒業証明書などに加えて、前の会社で担当していた工事についても資料を確認していくことになりました。
営業所技術者等の資格・学歴・実務経験による要件については、営業所技術者等(専任技術者)の要件で詳しく解説しています。
常勤役員等は佐藤さん本人だけでは難しかった
次に確認したのが、経営業務の管理に関する要件です。

個人事業を始めてからは2年ですよね。前の会社では役員や経営を任される立場でしたか?

いや、現場監督ですね。小さい現場なら2~3件まとめて見ていましたけど、経営側ではなかったです。

佐藤さんご本人の経営経験だけでは、今回は要件を満たすのが難しそうです。要件を満たせる経験者を、支配人として迎えられる可能性はありますか?
現場監督として長く勤務していたことと、建設業の経営業務を管理していた経験は別です。
佐藤さんには独立後2年間の経営経験がありますが、今回のケースでは、本人だけで常勤役員等の要件を満たすのは難しい状況でした。
個人事業主の場合、本人だけで要件を満たせないときは、必要な経営経験を持つ人を支配人として迎える方法も考えられます。個人の申請では、常勤役員等となる人は事業主本人または支配人である必要があります。

もし要件を満たせる経験者を迎えられる可能性があれば、その方の経歴を確認してみましょう。ただ、経験があるだけではなく、実際にこちらの事業で常勤できることも必要です。
佐藤さんは、まず元勤務先に相談してみることにしました。
元勤務先への相談から候補者が見つかった
元勤務先に事情を話したところ、以前会社で長く経営に携わっていたOBを紹介してもらえることになりました。
その人は定年退職後も再雇用で勤務していましたが、現在は再雇用期間も終了しています。まだ健康で、「もう少し仕事をしたい」と考えているとのことでした。

前の会社から、経験の長い人を紹介してもらえそうです。もう再雇用も終わっているんですけど、まだ働きたいと言っているみたいで。

では、その方が以前どのような立場で建設業の経営に携わっていたのかを確認しましょう。要件を満たせるのであれば、支配人として迎える方法を検討できます。
ここで初めて、その人を個人事業の支配人として迎え、経営業務の管理に関する要件を満たせるかを具体的に検討します。
確認する主なポイントは、
- 元勤務先でどのような立場にあったか
- 建設業の経営業務に携わった期間
- その経験を資料で証明できるか
- 佐藤さんの事業で実際に常勤できるか
です。
候補者が見つかっただけで要件を満たすわけではありません。過去の経験と現在の立場の両方について要件を確認し、証明できる見込みが立って初めて申請へ使える人材となります。
常勤役員等の経験要件や証明方法については、常勤役員等(経営業務の管理責任者)の要件で詳しく解説しています。
④ステップ2|その他の取得条件を確認する

営業所技術者等と常勤役員等について、申請まで進められそうな見通しが立ったら、次はその他の取得条件を確認します。

人の要件がクリアできそうなら、あとは何を見ればいいですか?

次は、財産的基礎、営業所、欠格要件、社会保険ですね。ここは一つずつ確認していけば大丈夫です。
今回の佐藤さんのケースでは、次のように確認していきます。
| 確認する条件 | 佐藤さんの場合 |
|---|---|
| 財産的基礎 | 個人事業主として一般建設業の500万円要件を確認 |
| 営業所 | 現在使用している事務所が営業所要件を満たすか確認 |
| 欠格要件・誠実性 | 佐藤さん本人や、支配人として迎える予定の人について確認 |
| 社会保険 | 従業員4名を雇用している個人事業所として適用関係を確認 |
財産的基礎は個人事業主として確認する
一般建設業の許可では、工事を継続して請け負えるだけの財産的基礎や資金調達能力があることも求められます。
その判断方法の一つとして、自己資本が500万円以上あることや、500万円以上の資金を調達できる能力があることなどが基準になります。
佐藤さんは法人ではなく個人事業主なので、法人の決算書にある純資産ではなく、個人事業主としての自己資本や資金調達能力をもとに要件を確認します。

500万円は、銀行口座にずっと置いておかないといけないんですか?

必ずしも“預金残高が常に500万円以上”という意味ではありません。まず決算内容を見て、どの方法で財産的基礎を満たせるか確認しましょう。
個人事業主の場合、確定申告書や青色申告決算書などから自己資本を確認するほか、必要に応じて500万円以上の資金調達能力を確認する方法もあります。
特に独立してまだ年数が浅い場合は、現在の決算内容で要件を満たせるのか、それとも別の方法で確認するのかを早めに見ておくと申請準備が進めやすくなります。
この要件については、建設業許可の財産的基礎・500万円要件で詳しく解説しています。
現在の事務所を建設業の営業所として使えるか
建設業許可では、実際に建設業の営業を行う場所についても要件があります。
佐藤さんの場合は、現在使用している事務所について、見積りや契約などの営業活動を行える状態になっているか、使用する権利があるか、営業所としての実態があるかを見ます。

いま使っている事務所の契約書はありますか? あわせて、どんな使い方をしているのかも確認したいです。

あります。普段は事務員がいて、見積書や請求書もそこで作っています。
このように、単に住所があるだけではなく、実際に建設業の営業を行う場所として使用していることがポイントになります。
賃貸物件であれば契約上事業利用が可能か、自宅兼事務所であれば居住部分との区分や動線なども確認します。
営業所の詳しい要件については、建設業許可の営業所要件で解説しています。
欠格要件・誠実性は本人だけでなく支配人も確認する
建設業許可では、一定の欠格要件に該当しないことや、請負契約に関して誠実性があることも求められます。
今回のケースでは、佐藤さん本人だけでなく、常勤役員等の要件を満たすために支配人として迎える予定の人についても確認が必要です。

今回新しく支配人を迎えるので、その方についても欠格要件に該当する事情がないか確認しておきましょう。
たとえば、破産して復権を得ていない場合、一定の刑罰歴、建設業許可の取消歴、暴力団関係などが問題になります。
過去に刑罰や許可取消しなどに関係する事情がある場合は、その内容や時期を確認し、現在も欠格要件に該当するかを判断します。
詳しくは、建設業許可の欠格要件と誠実性で解説しています。
社会保険は個人事業所として適用関係を見る
佐藤さんは個人事業主で、従業員を4名雇用しています。
この場合、健康保険・厚生年金保険と雇用保険では、適用の考え方が異なります。

従業員が4人いますけど、社会保険はどうなりますか?

健康保険・厚生年金と雇用保険は分けて考えます。まず今の雇用状況を確認して、どの保険に加入義務があるか見ていきましょう。
建設業を営む個人事業所で常時使用する従業員が4名の場合、健康保険・厚生年金保険は原則として強制適用の対象外です。
一方、雇用保険については、対象となる労働者を雇用していれば加入が必要です。
そのため、「社会保険」という一括りで考えるのではなく、保険ごとに適用関係を確認します。
詳しくは、建設業許可の社会保険加入要件と確認資料で解説しています。
こうして、営業所技術者等・常勤役員等だけでなく、財産的基礎、営業所、欠格要件、社会保険についても見通しが立ったら、次は実際の申請で使う証明資料を集める段階に進みます。
⑤ステップ3|個人事業主として必要な証明資料を集める

許可要件を満たせる見通しが立っても、それだけで申請できるわけではありません。
建設業許可では、その経験や事業実態を資料で証明できることが重要です。

自分が10年働いていたことは間違いないんですけど、それを証明する書類って、具体的に何が必要なんですか?

まず、どの経験を何の要件に使うのかを分けましょう。そのうえで、在籍していたことと、実際にどんな工事を担当していたのかを確認できる資料を探します。
今回のケースでは、佐藤さん本人の実務経験と、支配人として迎える予定の経験者について、それぞれ必要な資料を集めていきます。
佐藤さん本人の実務経験を証明する
佐藤さんは、前職の建設会社で10年間、現場監督として勤務していました。
営業所技術者等の要件にこの経験を使う場合は、単に「10年間勤務していた」という事実だけではなく、取得しようとする建設業種に関する実務経験があったことを証明する必要があります。
そこで元勤務先に協力してもらい、まず、
- 在籍していた期間が分かる資料
- 担当した工事の内容が分かる資料
- 工事の請負や施工実績を確認できる資料
などを探していきます。
具体的には、工事請負契約書、注文書・注文請書、請求書、工事台帳、入金関係資料などが候補になります。
ただし、これらを全部そろえればよいという意味ではありません。 どの資料を使うかは、証明したい経験の内容や元勤務先に残っている資料によって変わります。

前の会社なら、昔の注文書や工事台帳は残っていると思います。
ここで、元勤務先が資料提供に協力してくれることが大きな助けになります。
支配人候補の経営経験を証明する
次に確認するのが、支配人として迎える予定の経験者です。
この人については、建設業の経営業務に携わっていたことを証明できるかがポイントになります。

それなら、まず元勤務先にどんな資料が残っているか確認してみましょう。その資料で、今回の業種に必要な実務経験を証明できるか見ていきます。
元勤務先には、
- 在籍していた期間
- 当時の役職や立場
- 建設業を営んでいたこと
- 経営業務に携わっていた期間
などを確認できる資料について協力をお願いすることになります。
今回のケースでは、元勤務先が佐藤さんへの大口案件の発注を予定していることもあり、許可取得に必要な資料の確認にも協力してもらえる状況です。

本人にも確認して、前の会社にも必要な書類が残っているか聞いてみます。

お願いします。資料を見ながら、どの期間を経験として使えるかを一緒に確認していきましょう。
常勤役員等の経験要件と証明方法については、常勤役員等(経営業務の管理責任者)の要件で詳しく解説しています。
独立後2年間の事業実績も資料として残しておく
佐藤さん自身も、独立してから2年間、個人事業主として建設業を営んでいます。
この期間については、
- 確定申告書
- 請負契約書
- 注文書・注文請書
- 請求書
- 入金が確認できる資料
など、自分の事業実績を確認できる資料をまとめておきます。

これからは、契約書や注文書、請求書だけでなく、入金までつながる資料をできるだけ残しておくといいですよ。

今までは請求書だけで終わっていた仕事もあるので、これからは意識して保管します。
佐藤さんには、これからの工事について、契約内容や工事実績を確認できる資料を残しておくようにしてもらいます。
個人事業主の場合、自分の経験を後から証明できるよう、日頃から資料を保管しておくことが大切です。
⑥ステップ4|必要資料がそろったら新規申請へ進む
人的要件やその他の取得条件について見通しが立ち、必要な証明資料もそろってきたら、いよいよ新規申請の準備に入ります。
佐藤さんのケースでは、
- 営業所技術者等について、本人の学歴と実務経験を確認できる
- 経営業務の管理について、支配人として迎える予定の人の経験を確認できる
- 財産的基礎、営業所、欠格要件、社会保険についても確認できる
- それぞれの要件を証明するための資料がそろっている
という状態になってから、申請書類の作成へ進みます。

ここまでそろえば、あとは申請書を書けばいいんですね。

そうですね。ただ、実際には申請書を書く前の確認がかなり大事なんです。どの要件を、どの資料で証明するのかが決まっていれば、その後の申請書作成も進めやすくなります。
建設業許可の申請では、申請書そのものだけでなく、記載した内容を裏付ける資料との整合性も重要です。
たとえば、営業所技術者等の実務経験について記載した内容と、元勤務先から集めた工事資料の内容が合っているか。支配人の経営経験について、申請書上の経歴と証明資料の期間が一致しているか。
こうした点を確認しながら、申請書類を組み立てていきます。
申請書を作る前に証明方法を決めておく
建設業許可の準備では、「とりあえず申請書を書いて、足りない資料を後から探す」という進め方だと、途中で要件の証明ができないことが分かる場合があります。
そのため、先に、
誰がどの要件を満たすのか
その要件を何の資料で証明するのか
を決めてから申請書類を作成する方が、全体を進めやすくなります。

最初に相談したときは、申請書を作ってもらうのが行政書士の仕事だと思っていました。

もちろん申請書も作りますが、その前に要件を確認して、証明できる形にしておくところが大切なんです。
今回のように、本人の実務経験を使いながら、別の経験者を支配人として迎えるケースでは、特にこの事前確認が重要になります。
申請後もすぐに許可が出るわけではない
申請書類を提出したからといって、その場で建設業許可が出るわけではありません。
申請後は行政庁による審査が行われ、問題がなければ許可となります。
そのため、元勤務先から「許可が必要な工事をお願いしたい」と言われている場合は、実際にいつからその工事を請け負えるのかも考えて、余裕を持って申請準備を始めることが重要です。
東京都知事の新規許可申請について、必要書類や申請の流れを詳しく確認したい場合は、東京都知事・一般建設業の新規許可申請で解説しています。
⑦申請を終え、無事に建設業許可を取得

申請後の審査を経て、佐藤さんのもとに建設業許可の通知が届きました。

先生、許可の通知が届きました。無事に取れました!

よかったです。これで、今回予定していた工事を請け負うための大きな条件をクリアできましたね。
佐藤さんは、元勤務先から相談を受けていた工事に向けて、ようやく準備を進められる状態になりました。
今回のケースでは、佐藤さん本人の実務経験だけでなく、支配人として迎える人の経営経験も活用し、それぞれを資料で証明できる形にしたことで、許可申請まで進めることができました。
⑧個人事業主の建設業許可では「経験を証明できるか」が重要
個人事業主が建設業許可を取るときは、必要な経験があるだけでなく、その経験を申請時に資料で証明できるかが重要になります。
たとえば、前の会社で長く建設工事に携わっていたとしても、「10年間働いていました」という説明だけで営業所技術者等の実務経験を証明できるわけではありません。
どの会社で、どのくらいの期間働き、どのような工事に携わっていたのかを、資料から確認できる必要があります。
経営業務の管理に関する経験も同じです。
長年建設会社に勤務していた人であっても、勤務年数だけで判断するのではなく、どのような立場で建設業の経営業務に携わっていたのかを確認します。
今回の佐藤さんのケースでは、元勤務先との関係が続いており、過去の経験を確認するための資料についても協力してもらえる状況でした。さらに、経営業務の管理に関する要件についても、元勤務先から経験者を紹介してもらうことができました。
一方で、実際の相談では、
- 元勤務先がすでに廃業している
- 昔の工事資料が残っていない
- 元勤務先に資料提供をお願いするのが難しい
- 当時担当していた工事の内容を資料から確認できない
といったケースもあります。
そのため、「自分には経験があるから許可を取れるはず」と考えるのではなく、その経験をどの資料で証明するのかまで確認してから申請の見通しを立てることが大切です。

経験年数だけ分かればいいわけじゃないんですね。

そうなんです。経験そのものと、その経験を申請で証明できるかは分けて考える必要があります。だから、最初の段階で資料まで確認しておくんです。
特に、会社員としての経験を使って個人事業主が許可を取ろうとする場合は、元勤務先にどのような資料が残っているのかが申請の進め方に大きく関わります。
大きな工事の相談が来てから慌てて確認するよりも、建設業許可が必要になりそうな段階で、自分の経験や手元の資料について一度確認しておくと、申請までの見通しを立てやすくなります。
⑨個人事業主の建設業許可についてよくある質問
Q:個人事業主でも建設業許可を取れますか?
はい。個人事業主でも、建設業許可の取得条件を満たせば申請できます。
法人でなければ許可を取れないわけではありません。
ただし、個人事業主の場合も、営業所技術者等、経営業務の管理に関する要件、財産的基礎、営業所、欠格要件、社会保険など、それぞれの条件を満たす必要があります。
Q:独立して2年でも建設業許可を取れますか?
独立してからの年数だけで、建設業許可を取れるかどうかが決まるわけではありません。
今回の佐藤さんのように独立後2年であっても、前職での経験を営業所技術者等の要件に使える場合や、経営業務の管理に関する要件を別の方法で満たせる場合があります。
そのため、「独立してまだ数年だから無理」と判断するのではなく、これまでの経歴を含めて確認することが大切です。
Q:前職の経験を使って申請できますか?
要件に合う経験であり、その経験を資料で証明できれば、前職での経験を使える場合があります。
たとえば営業所技術者等の実務経験として使う場合は、単にその会社に在籍していたことだけでなく、取得する業種に関する工事に携わっていたことを確認する必要があります。
Q:元勤務先からどのような資料をもらえばいいですか?
必要な資料は、何の経験を証明するかによって変わります。
在籍期間を確認する資料だけでなく、工事内容や建設業の経営業務に携わっていたことを確認できる資料が必要になる場合があります。
そのため、最初から特定の書類だけを元勤務先へ依頼するより、どの要件をどの期間の経験で満たすのかを決めてから、必要な資料を確認する方が進めやすくなります。
Q:自分が経営業務の管理に関する要件を満たさない場合はどうなりますか?
本人だけで要件を満たせないからといって、必ずしも許可を諦めることになるわけではありません。
個人事業主の場合、要件を満たす経験者を支配人として迎える方法を検討できる場合があります。
ただし、単に経験のある人を従業員として雇えばよいわけではありません。支配人としての立場に加え、その人自身が必要な経営経験を持ち、実際に常勤できることなどを確認する必要があります。
Q:高専卒なら営業所技術者等になれますか?
高専を卒業しているだけで、自動的に営業所技術者等になれるわけではありません。
取得しようとする建設業種に対応する指定学科を卒業していることと、その学歴に応じて必要となる実務経験を満たしているかを確認します。
今回の佐藤さんのケースでも、高専卒という事実だけではなく、卒業した学科と取得する業種との対応、前職での実務経験をあわせて確認しています。
Q:個人事業主のまま許可を取るか、法人化してから取るか、どちらがいいですか?
どちらがよいかは、今後の事業計画によって変わります。
個人事業主のまま要件を満たせるのであれば、そのまま許可取得を進める選択肢があります。一方で、近いうちに法人化する予定が決まっている場合は、許可取得の時期と法人化のタイミングを一緒に考えた方がよいケースもあります。
「許可を取ってから法人化すればそのまま同じ許可を使える」と単純に考えず、法人化の予定がある場合は申請前に確認しておくと安心です。
大田区・品川区で個人事業として建設業を営んでいる方は、地域の事業拠点や東京都知事許可の申請についてこちらでも解説しています。
大田区・品川区の建設業許可ガイド
まとめ|個人事業主が建設業許可を取るためのポイント
個人事業主でも、必要な条件を満たせば建設業許可を取得できます。
まず重要なのは、営業所技術者等と経営業務の管理に関する要件を、誰が満たすのかを確認することです。本人の学歴や前職での実務経験を活用できる場合もあれば、本人だけでは経営経験の要件を満たせず、要件を満たす経験者を支配人として迎える方法を検討する場合もあります。
そのうえで、財産的基礎、営業所、欠格要件・誠実性、社会保険など、その他の取得条件も確認していきます。
そして、建設業許可では経験があることと、その経験を申請で証明できることは別です。前職での実務経験や経営経験を使う場合は、在籍期間だけでなく、どのような工事や業務に携わっていたのかを確認できる資料までそろえる必要があります。
そのため、申請書を作り始める前に、
・誰がどの要件を満たすのか
・その要件をどの資料で証明するのか
・必要な資料をそろえて申請する
という順番で進めることが大切です。
独立してからの年数が短いからといって、すぐに許可取得を諦める必要はありません。これまでの勤務経験や現在の事業状況、人員体制まで含めて確認することで、許可取得への道筋が見えてくることがあります。
大きな工事を受注する可能性が出てきたら、実際に契約の話が進んでから慌てるのではなく、早い段階で自分がどの要件を満たせるのか、必要な証明資料を用意できるのかを確認しておくことが重要です。

