物流センターや工場で使用するコンベア、自動倉庫、仕分け設備などの設置工事を請け負う場合、工事の内容や請負金額によって建設業許可が必要になります。
搬送設備・物流設備は、小規模な工場から大型物流センターまで幅広く使用され、その設置には専門的な技術や施工管理が求められます。
また、設備メーカーだけでなく、据付工事を請け負う専門施工会社や協力会社にも、建設業許可が必要になる場合があります。
この記事では、搬送設備・物流設備の設置工事に必要な建設業許可の判断基準、許可業種、新規取得の要件について解説します。

目次
①搬送設備・物流設備の設置工事の具体例
搬送設備・物流設備には、工場内で製品を運ぶコンベアから、大型物流センターの自動倉庫や仕分けシステムまで、さまざまな種類があります。
これらの設備は、荷物や製品の搬送、保管、仕分けなどを自動化し、工場や物流施設の効率的な運営を支えています。
主な搬送設備・物流設備には、次のようなものがあります。
| 分類 | 主な設備の例 |
|---|---|
| コンベア設備 | ベルトコンベア、ローラーコンベア、チェーンコンベア |
| 自動倉庫設備 | スタッカークレーン、ラック式自動倉庫、シャトル式自動倉庫 |
| 仕分け設備 | ソーター、自動仕分けシステム |
| 垂直搬送設備 | 垂直搬送機、パレットリフター |
| 無人搬送設備 | AGV(無人搬送車)、AMR(自律走行搬送ロボット) |
| その他の物流設備 | パレット搬送システム、入出庫設備 |
なお、AGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)は、機器の納入や初期設定だけでは建設工事に該当しないことがあります。走行設備や関連機器の設置工事を伴うときは、その施工内容を確認する必要があります。
こうした設備の設置では、機器の搬入や組立て、固定、レールの敷設、制御機器の取付けなど、設備の種類に応じた作業が行われます。
特に、自動倉庫や大型搬送システムでは、複数の機器を組み合わせ、施設全体の搬送設備として設置する工事が必要になります。
これらの設備のうち、どのような設置作業が建設工事に該当するかは、実際の施工内容によって判断します。
工場で使用する工作機械や生産ライン、産業用ロボットなどの据付工事については、工場・製造設備の据付工事と建設業許可の記事で詳しく解説しています。
なお、マンションやオフィスビルなどに設置する乗用エレベーターについては、乗用エレベーターの据付・更新工事と建設業許可で詳しく解説しています。

②搬送設備・物流設備の設置に建設業許可が必要な理由
搬送設備・物流設備の設置工事には、専門的な施工技術や安全管理が求められます。
そのため、建設工事に該当する設置工事は建設業法の対象となり、請負金額に応じて建設業許可が必要です。
コンベアや自動倉庫などは、複数の機械や制御装置を組み合わせて稼働する設備です。施工に不備があれば、設備の故障や作業中の事故だけでなく、工場の生産停止や物流センターの運営にも影響を及ぼすおそれがあります。
建設業法は、こうした建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護することなどを目的としています。そのため、建設業許可制度では、工事を請け負う事業者に一定の経営基盤や技術力などを求めています。
この制度は、建設業を本業とする会社だけでなく、設備メーカーや機械商社、専門施工会社にも適用されます。
例えば、設備メーカーが自社製コンベアを物流センターに納入し、設置工事まで請け負う場合や、機械商社が自動倉庫の設置工事を含めて一括受注する場合も、建設業許可の対象となります。
また、発注企業や元請会社が施工品質や安全管理を重視し、取引条件として建設業許可の取得を求める場合もあります。
建設業許可の取得は、法令上の義務への対応に加え、発注企業や元請会社からの信頼を得ることにもつながります。
③搬送設備・物流設備の設置に建設業許可が必要となる条件
搬送設備・物流設備の設置工事を請け負う場合、1件の工事の請負代金が500万円以上(税込)であれば、原則として建設業許可が必要です。
建設業許可は、建設業を本業とする会社だけに求められるものではありません。設備メーカーや機械商社であっても、建設工事に該当する設置工事を請け負う場合には、許可の対象となります。
一方、1件の請負代金が500万円未満(税込)の工事は「軽微な建設工事」に該当し、そのような工事のみを請け負う場合は、建設業許可は不要です。
ただし、この500万円の基準は、据付工事費だけで判断するものではありません。 設備の販売と据付を一体として請け負う場合は、設備本体の代金を含め、契約の実態に基づいて建設工事の請負代金を判断する必要があります。
例えば、設備メーカーが物流センターにコンベア設備を販売し、据付工事まで一括して請け負う場合、次のような契約が考えられます。
| 契約内容 | 金額(税込) |
|---|---|
| コンベア設備の本体価格 | 800万円 |
| 据付工事費 | 200万円 |
| 契約総額 | 1,000万円 |
このケースでは、据付工事費が200万円だからといって、直ちに建設業許可が不要になるわけではありません。設備の販売と据付工事が一体となった契約なのかを確認し、許可の要否を判断します。
また、設備メーカーや元請会社からコンベアなどの機器を支給され、据付工事のみを請け負う専門施工会社にも注意が必要です。
注文者から支給される機器・設備が、工事に使用する材料に該当するときは、その市場価格と運送費を請負代金に加えて判断します。
例えば、据付工事費が200万円でも、支給された機器の市場価格が800万円であれば、合計1,000万円となり、許可が必要となる金額基準を超えます。
設備メーカー・商社・専門施工会社のいずれも、据付工事費だけでなく、設備の販売・支給方法を含めて建設業許可の要否を確認することが重要です。

④搬送設備・物流設備の設置で検討する建設業許可の業種
搬送設備・物流設備の設置工事では、機械器具設置工事業を中心に、実際の工事内容に応じて必要な建設業許可の業種を判断します。
建設業許可は、設置する設備の名称ではなく、実際に請け負う工事内容によって業種が区分されるためです。
機械器具設置工事業には、機械器具を組み立てて工作物を建設したり、工作物に機械器具を取り付けたりする工事が含まれます。国土交通省の工事区分でも「運搬機器設置工事」が代表例として挙げられています。
ただし、搬送設備・物流設備の設置が、すべて機械器具設置工事業に該当するわけではありません。
例えば、完成した機器をクレーンなどで運搬・配置する工事は、とび・土工工事業に該当することがあります。一方、複数の機器を現地で組み立て、搬送システムとして設置する工事は、機械器具設置工事業が検討対象となります。
必要な許可業種は、設備の名称だけでなく、実際の施工内容によって判断します。
搬送設備・物流設備に関連する主な工事と許可業種は、次のとおりです。
| 建設業許可の業種 | 工事内容の例 |
|---|---|
| 機械器具設置工事業 | コンベア、自動倉庫、垂直搬送機などの設置工事 |
| 電気工事業 | 搬送設備への電源供給、動力配線などの電気設備工事 |
| 電気通信工事業 | 物流施設の情報通信設備、ネットワーク設備などの設置工事 |
| とび・土工工事業 | 搬送設備の設置に伴う重量物の配置、基礎工事など |
例えば、物流センターに自動倉庫を設置する場合、搬送装置の組立てや据付に加え、電源設備の工事や通信設備の設置が必要になることがあります。
この場合、設備メーカーや機械商社が関連するすべての建設業許可を自社で取得する必要があるとは限りません。
主たる機械器具設置工事に伴う電気工事や通信工事が「附帯工事」に該当すれば、機械器具設置工事業の許可で一体として請け負うことができます。
附帯工事とは、主たる建設工事の施工に伴って必要となる、別の業種に属する工事のことです。
例えば、設備メーカーが自動倉庫の据付を主たる工事として請け負い、附帯する電気工事を必要な許可を持つ専門業者に外注する方法があります。
なお、附帯工事に該当しない独立した工事については、原則としてその業種の許可が必要です。附帯工事を自社で施工する場合にも、法令に応じた専門技術者の配置などが求められます。
新規に建設業許可を取得する際は、自社が主に請け負う工事を明確にし、専門業者への外注も含めて必要な許可業種を検討することが重要です。
建設工事の業種区分や、工事内容から必要な許可業種を判断する方法については、建設業許可29業種の選び方でも解説しています。
搬送設備への電源供給や動力配線など、電気工事業に該当する工事の範囲や許可取得の条件については、電気工事業の建設業許可と取得条件の記事で解説しています。
⑤搬送設備・物流設備の設置で建設業許可を取得するための要件
搬送設備・物流設備の設置工事で新規に建設業許可を取得するには、建設工事の経営経験、営業所技術者等の配置、財産的基礎などの要件を満たす必要があります。
これらの要件は、設備メーカーや機械商社、専門施工会社のいずれにも適用されます。既存の経営体制や従業員の経験を確認し、許可取得に必要な条件が整っているか判断します。
経営業務の管理体制
建設業許可を取得するには、建設工事の経営を適切に管理できる体制が必要です。
代表的な要件として、法人では常勤役員のうち1人が、建設業に関して5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有することが挙げられます。このほかにも、一定の経営経験と補佐体制を組み合わせる方法などがあります。
例えば、搬送設備メーカーの経営者が、設備の製造・販売だけでなく、据付工事の請負についても継続して経営管理を行ってきた場合、その経験を要件の確認に利用できる可能性があります。
製造業や販売業の経営経験の長さだけでなく、建設工事の請負に関する経営経験があるかどうかが重要です。
営業所技術者等の資格と実務経験
建設業許可を取得するには、許可を受ける営業所ごとに、取得する業種に対応した資格や実務経験を持つ「営業所技術者等」を専任で配置する必要があります。
一般建設業許可では、国家資格や指定学科の学歴などによる要件を利用しない場合、原則として取得する業種に関する10年以上の実務経験が必要です。
例えば、物流センターのコンベアや自動倉庫の据付工事について、施工や施工管理に長年携わってきた従業員は、その経験を営業所技術者等の要件に利用できる可能性があります。
また、指定学科を卒業している場合は、学歴に応じて必要な実務経験が3年または5年に短縮されることがあります。対象となる国家資格等によって要件を満たす方法もあります。
必要な資格や実務経験は取得する許可業種によって異なるため、担当者の経歴と実際に施工した工事内容を照らし合わせて確認することが重要です。
資格・学歴・実務経験によって営業所技術者等の要件を証明する方法や、申請時に必要となる資料については、営業所技術者等の要件を証明する資料の記事で詳しく解説しています。
財産的基礎・営業所・社会保険などの要件
建設業許可の取得には、経営経験や技術者の配置に加え、財産的基礎や営業所などの要件も満たす必要があります。
東京都知事・一般建設業許可では、主に次の事項を確認します。
| 確認項目 | 主な要件 |
|---|---|
| 財産的基礎 | 自己資本500万円以上、または500万円以上の資金調達能力など |
| 営業所 | 建設工事の請負契約に関する営業活動を行う実体のある営業所 |
| 社会保険 | 健康保険・厚生年金保険・雇用保険への法令に応じた適切な加入 |
| 誠実性 | 請負契約に関して不正・不誠実な行為をするおそれがないこと |
| 欠格要件 | 建設業法に定める欠格要件に該当しないこと |
例えば、既存の物流設備メーカーや機械商社が建設業許可を取得する場合、現在の事務所が建設業法上の営業所としての要件を満たしていれば、新たに建設業専用の事務所を設ける必要はありません。
また、メーカーの協力会社として搬送設備の設置工事を行う小規模事業者も、必要な経営経験や技術者を確保し、その他の要件を満たせば建設業許可を取得できます。
新規許可の取得を検討する際は、自社の経営体制や従業員の経験、営業所の状況を整理し、不足する要件を確認することが重要です。
建設業許可の申請に必要な経営経験や営業所技術者等の実務経験について、東京都が求める確認資料は、東京都「建設業許可申請の手引(令和8年度)」で確認できます。

⑥搬送設備・物流設備の設置工事で新規許可を取得するときの注意点
搬送設備・物流設備の設置工事で新規に建設業許可を取得する際は、過去の設置工事の実績と、その経験を証明できる資料を確認することが重要です。
設備メーカーや機械商社、専門施工会社では、事業内容や契約形態によって、建設業許可の要件に利用できる経験が異なります。
設備の製造・販売実績と設置工事の実績の違い
建設業許可の申請では、設備の製造・販売実績と、建設工事に該当する設置工事の実績を区別します。
例えば、自動倉庫やコンベアを10年以上販売してきた機械商社でも、販売実績だけでは建設工事の経験として認められません。
一方、設備の販売とともに設置工事を請け負ってきた場合は、その工事内容や経営者の関与、従業員の施工経験などを確認することで、許可要件に利用できる可能性があります。
設備の販売年数ではなく、建設工事の請負や施工に関する経験があるかどうかが判断のポイントです。
メーカーの下請工事と実務経験の証明資料
メーカーから搬送設備・物流設備の据付工事を請け負ってきた専門施工会社は、下請としての工事実績を建設業許可の申請に利用できます。
元請工事である必要はなく、実際に施工した工事の内容や期間を証明できることが重要です。
例えば、大手物流設備メーカーからコンベアや自動倉庫の据付工事を継続して請け負ってきた会社では、次のような資料を確認します。
| 確認資料 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 工事請負契約書 | 工事内容、契約当事者、契約時期 |
| 注文書・請書 | 元請メーカーから受注した工事の内容 |
| 請求書・入金確認資料 | 工事の取引実績、施工時期、入金状況 |
| 工事内訳書・施工記録 | 実際に施工した搬送設備・物流設備の内容 |
| 登記事項証明書・在籍資料等 | 経営者の役員経験や技術者の在籍期間 |
特に、メーカーから機器の支給を受けて設置工事のみを請け負っていた場合は、契約書や注文書などから、実際にどのような工事を施工したのか確認できることが重要です。
また、経営業務の管理体制に関する経験と、営業所技術者等の実務経験は別の要件です。
経営業務の管理体制では、建設工事の請負に関する経営経験などを確認します。一方、営業所技術者等の実務経験では、取得する業種に該当する工事に従事した経験と、その期間を確認します。
例えば、専門施工会社として10年間の据付工事実績があっても、それだけで従業員個人の10年間の実務経験が証明できるわけではありません。
新規許可を検討する際は、会社の工事実績と担当者個人の経験を分けて整理し、それぞれを証明できる資料が残っているか確認することが重要です。
⑦搬送設備・物流設備の設置工事と建設業許可についてよくある質問
Q:コンベアの設置工事には建設業許可が必要ですか?
コンベアの設置が建設工事に該当し、1件の請負代金が500万円以上(税込)となる場合は、原則として建設業許可が必要です。
コンベアの組立て・据付工事は、機械器具設置工事業の「運搬機器設置工事」が主な検討対象です。実際の施工範囲を確認して、必要な許可業種を判断します。
Q:自動倉庫の設置工事は機械器具設置工事業に該当しますか?
自動倉庫の搬送装置やスタッカークレーンなどを組み立てて設置する工事は、機械器具設置工事業の「運搬機器設置工事」に該当することがあります。
ただし、自動倉庫の導入に伴う電気設備工事や建築工事などは、工事内容に応じて別の業種に区分されます。
Q:物流用垂直搬送機の設置にはどの業種の許可が必要ですか?
物流用垂直搬送機の組立て・据付工事では、機械器具設置工事業の「運搬機器設置工事」が主な検討対象となります。
ただし、完成した機器の単純な運搬・配置など、作業内容によっては別の業種に該当することがあります。
必要な許可業種は、垂直搬送機の構造や施工範囲を確認して判断します。
Q:電気工事を伴う場合、電気工事業の許可も必要ですか?
機械器具設置工事業の許可で主たる設置工事を請け負い、電気工事がその附帯工事に該当する場合は、電気工事業の許可を別途取得せずに一体として請け負うことができます。
例えば、自動倉庫の据付工事に附帯する電源設備工事を、必要な許可を持つ専門業者に外注する方法があります。
ただし、附帯工事に該当しない独立した電気工事を請け負う場合は、原則として電気工事業の許可が必要です。
附帯工事を自社で施工する場合は、軽微な建設工事を除き、その業種に対応する専門技術者の配置が必要です。専門技術者を配置できない場合は、必要な許可を持つ専門業者に施工を依頼します。
Q:設備メーカーから機器を支給される場合、500万円の基準はどう判断しますか?
設備メーカーや元請会社から工事に使用する機器を支給される場合は、支給された機器の市場価格と運送費を請負代金に加えて判断します。
例えば、据付工事費が200万円、支給されるコンベア設備の市場価格が800万円の場合、合計1,000万円となり、建設業許可が必要となる金額基準を超えます。
据付工事費だけで判断せず、支給機器の価格も確認することが重要です。
Q:資格がなくても設置工事の実務経験で許可を取得できますか?
はい。一般建設業許可では、国家資格や指定学科の学歴などによる要件を利用しない場合でも、取得する許可業種に該当する建設工事について10年以上の実務経験があり、その内容と期間を証明できれば、営業所技術者等の要件を満たすことができます。
例えば、コンベアや自動倉庫の設置工事に10年以上携わってきた技術者は、その経験を利用できる可能性があります。
ただし、実務経験の内容や期間を資料で証明する必要があります。また、建設業許可を取得するには、経営業務の管理体制や財産的基礎など、ほかの要件も満たす必要があります。
まとめ|搬送設備・物流設備の設置工事で建設業許可を取得するために
コンベアや自動倉庫、垂直搬送機などの設置工事は、工事内容や請負金額によって建設業許可が必要になります。
設備メーカーや機械商社、専門施工会社など、建設業を本業としない事業者も対象です。
特に、設備の販売と据付を一括して請け負う場合や、メーカーから機器の支給を受ける場合は、設備本体の価格を含めた請負金額の判断が重要です。
また、機械器具設置工事業を中心に必要な許可業種を確認し、電気工事などの附帯工事については、専門業者への外注も含めて施工体制を検討します。
新規に建設業許可を取得する際は、経営業務の管理体制や営業所技術者等の要件に加え、過去の据付工事の経験を証明できる資料を確認することが大切です。
搬送設備・物流設備の設置工事で建設業許可をご検討の方へ
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