【初心者向け】遺言の種類を徹底解説!あなたに合った遺言の選び方

遺言書は、遺産分配や家族への感謝の気持ちを形にする重要な書類です。しかし、遺言書の種類や作成方法について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。本記事では、遺言の種類をわかりやすく解説し、自分に合った遺言書の選び方を紹介します。これから遺言書を作成しようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

遺言とは?基本的な知識を押さえよう

遺言とは、遺言者(遺言を残し亡くなった人)が自分の意思を明確にし、死後にその意思を実現するための法的文書です。これにより、遺産分割におけるトラブルや、家族間の争いを防ぐ効果が期待できます。

遺言書の定義と目的

遺言書は、遺言者が死後に実現したい内容を記載する法的効力のある書類です。具体的には、財産の分配方法や特定の人への感謝の気持ち、さらには葬儀に関する希望などを記載できます。遺言書があることで、法定相続とは異なる分割方法が実現可能です。

遺言書が法的トラブルを防ぐ理由

遺産相続では、相続人間の意見が食い違うことがよくあります。遺言書があれば、遺言者の意思に基づいて分割されるため、法定相続に基づくトラブルを未然に防ぐことができます。

遺言書の作成に必要な条件

遺言書は、形式を守らなければ法的効力を持ちません。例えば、自筆証書遺言では、遺言の全文、日付、署名を自書することが求められます。また、押印も必要です。不備があると無効になる可能性があるため、注意が必要です。

遺言の種類を分かりやすく解説

遺言書には、主に次の3種類があります。それぞれの特徴とメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。

(普通の方式による遺言の種類)
第九百六十七条 遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。

(普通の方式による遺言の種類)民法第九百六十七条

01

自筆証書遺言

遺言者自身が作成した遺言書です。全文自筆、日付、署名、押印が要件ですが、財産目録についてはパソコンでの作成や、通帳のコピー添付などが可能です。内容に不備があると無効になる場合もあります。

02

公正証書遺言

口述した遺言内容を公証人が聞き取りして作成した遺言書です。筆談や通訳人を通じた申述も認められます。作成された遺言書の原本は公証役場で保管されます。財産の価額で手数料が異なります。

03

秘密証書遺言

第三者に対し内容を秘密にしておける遺言書です。遺言書を作成し封をした上で証人2名立ち合いのもと、公証役場で遺言を作成した事実が記録されます。内容に不備があると無効になる場合もあります。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者が全文を手書きで作成する形式です。費用がかからず、最も手軽に作成できる点が特徴です。

しかし、形式不備により無効となるケースが多いのが難点です。例えば、日付の記入漏れや押印忘れは、遺言書全体の無効につながるため注意が必要です。

2020年の民法改正以降、法務局で保管できる制度が導入され、紛失や改ざんのリスクが軽減されました。この制度を利用する場合、手数料が必要ですが、遺言書を法務局に保管してもらうことで、検認が不要になります。

(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

自筆証書遺言)民法第九百六十八条

公正証書遺言

公正証書遺言は、公証人が関与して作成する形式です。遺言者が口述した内容を公証人が筆記し、証人2名の立会いのもと作成されます。この形式は法的効力が高く、紛失や改ざんのリスクがほぼありません。

ただし、作成には手数料がかかり、その費用は遺言の内容に応じて変動します。証人には特別な資格は求められませんが、未成年者や推定相続人、受遺者の親族は証人になれないため注意が必要です。また、遺言の内容を証人に知られるため、プライバシーが完全には守られない点がデメリットです。

遺言者に死期が迫っている状況の時、公証人が出張して病院内で口述、公正証書遺言を作成することも可能です。その場合、出張費用等が別途必要になります。

(公正証書遺言)
第九百六十九条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
(公正証書遺言の方式の特則)
第九百六十九条の二 口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、前条第二号の口授に代えなければならない。この場合における同条第三号の規定の適用については、同号中「口述」とあるのは、「通訳人の通訳による申述又は自書」とする。
2 前条の遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第三号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。
3 公証人は、前二項に定める方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその証書に付記しなければならない。

(公正証書遺言)民法第九百六十九条

(公正証書遺言の方式の特則)民法第九百六十九条の二

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言者が内容を秘密にしたまま作成する形式です。遺言書を封印し、公証人と証人2名以上の前で手続きを行います。遺言内容を誰にも知られたくない場合に適しています。

秘密証書遺言は、実務上あまり利用されていないため、他の2つの遺言に比べて一般的ではありません。内容を秘密にできる利点がある一方で、無効になるリスクが高く、検認が必要な点も考慮する必要があります。証人と公証人が必要なため手間がかかる点がデメリットです。

(秘密証書遺言)
第九百七十条 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
三 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
四 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
2 第九百六十八条第三項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。
(方式に欠ける秘密証書遺言の効力)
第九百七十一条 秘密証書による遺言は、前条に定める方式に欠けるものがあっても、第九百六十八条に定める方式を具備しているときは、自筆証書による遺言としてその効力を有する。
(秘密証書遺言の方式の特則)
第九百七十二条 口がきけない者が秘密証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、その証書は自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を通訳人の通訳により申述し、又は封紙に自書して、第九百七十条第一項第三号の申述に代えなければならない。
2 前項の場合において、遺言者が通訳人の通訳により申述したときは、公証人は、その旨を封紙に記載しなければならない。
3 第一項の場合において、遺言者が封紙に自書したときは、公証人は、その旨を封紙に記載して、第九百七十条第一項第四号に規定する申述の記載に代えなければならない。

(秘密証書遺言)民法第九百七十条

(方式に欠ける秘密証書遺言の効力)民法第九百七十一条

(秘密証書遺言の方式の特則)民法第九百七十二条

遺言書の作成で失敗しないためのポイント

遺言書を作成する際は、以下のポイントを押さえておくと失敗を防げます。

不備があるとどうなる?無効になるケース

特に自筆証書遺言では、形式に不備があると無効になることがあります。具体的には、次のような例があります。

  • 全文を手書きせず、パソコンや他人に代筆してもらった場合
  • 日付が明確でない場合(例:「〇年〇月」や「吉日」)
  • 押印を忘れた場合

形式を守ることが何よりも重要です。

専門家に依頼する際の注意点

遺言書作成を弁護士や行政書士に依頼すると、形式の不備を防ぐことができます。また、相続に詳しい専門家であれば、相続税の観点からもアドバイスが受けられます。ただし、費用が発生するため、事前に料金を確認しましょう。

家族との話し合いが重要な理由

遺言書が法的に有効であっても、家族がその内容に納得しない場合、感情的な対立が生じる可能性があります。遺言書作成後に家族と話し合いの場を設けることも大切です。

遺言に関するよくある質問

遺言書はどこに保管すればよいのか?

自筆証書遺言の場合、家庭で保管するよりも法務局の「遺言書保管制度」を利用するのが安全です。公正証書遺言は公証役場で保管されるため、紛失の心配はありません。

故人の自宅で遺言書が見つかった場合はどうする?

自筆証書遺言が自宅等で見つかった場合、家庭裁判所で「検認手続き」を行う必要があります。

自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言
作成者本人(自筆)公証人本人(パソコン、代筆可)
証人不要2人以上2人以上
費用比較的安い証書の作成手数料証書の作成手数料
保管本人か法務局原本は公証役場、正本は本人本人
紛失の可能性あり(法務局保管ならなし)なしあり
裁判所の検認必要(法務局保管なら不要)不要必要
遺言書の比較

遺言に関するよくある質問

Q1: 遺言書には有効期限がありますか?

A: 遺言書そのものに有効期限はありません。ただし、遺言書の内容が現状に合わなくなった場合(例:財産の状況が変わった、相続人が増えたなど)、適宜内容を見直して書き直す必要があります。

Q2: 遺言書を作成するのに費用はどれくらいかかりますか?

A: 自筆証書遺言は自分で作成するため費用はかかりませんが、法務局で保管する場合は手数料(1通3,900円)が必要です。公正証書遺言は公証人の手数料や証人の謝礼が発生し、遺産総額に応じて数万円~数十万円になることがあります。

Q3: 家族に遺言書の内容を事前に伝えるべきですか?

A: 必須ではありませんが、家族との話し合いを通じて意思を共有しておくと、死後のトラブルを未然に防ぐことができます。特に分配に不公平が生じる場合は、事前説明が重要です。

Q4: 遺言書を法的に有効にするための条件は何ですか?

A: 遺言書は形式を守る必要があります。自筆証書遺言の場合、全文を自書し、日付と署名を記載し、押印することが必須です。公正証書遺言や秘密証書遺言でも、法律で定められた条件を満たす必要があります。

Q5: 遺言書が見つかった場合、すぐに開封してもよいですか?

A: 自筆証書遺言が見つかった場合、勝手に開封してはいけません。家庭裁判所で「検認手続き」を行う必要があります。この手続きでは、遺言書の内容が改ざんされていないか確認されます。

Q6: 遺言執行者は必ず選任する必要がありますか?

A: 遺言執行者の選任は必須ではありませんが、選任することで遺言内容が確実に実行されやすくなります。特に、特定の財産を指定して分配する場合や遺産分割の調整が必要な場合は、弁護士や信頼できる家族を遺言執行者に指名するのがおすすめです。

あなたの財産と想いを守るために

遺言書を作成することで、家族に感謝の気持ちを伝えつつ、財産を適切に分配できます。早めに準備を始め、安心できる未来を実現しましょう。

今すぐ始められる遺言作成の第一歩

まずは、自分の財産をリスト化し、分配方法を考えましょう。その上で、どの形式の遺言書が適しているかを検討してください。

無料相談窓口を活用しよう

市区町村や弁護士事務所、行政書士事務所で提供されている無料相談窓口を利用すると、専門家から具体的なアドバイスが受けられます。

専門家と連携して安心の遺言作成を

遺言書は一度作成して終わりではありません。ライフステージの変化に応じて内容を見直し、適切に管理することが大切です。専門家のサポートを受けながら安心して進めましょう。

まとめ

遺言書には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。それぞれの特徴を理解し、自分に最適な形式を選びましょう。早めの準備と専門家の力を借りることで、家族と遺産を守ることができます。

あなたの未来を安心で包むために、今すぐ遺言書の作成を始めましょう!