建設業許可を取得するには、営業所ごとに、許可を受けようとする建設業について一定の技術要件を満たす人を置く必要があります。現在は「営業所技術者等」と呼ばれていますが、以前の「専任技術者」という名称の方がなじみのある方も多いでしょう。
営業所技術者等になるために、必ずしも国家資格が必要なわけではありません。資格で要件を満たす場合のほか、指定学科の卒業歴と実務経験を組み合わせる場合、一定期間の実務経験で要件を満たす場合もあります。
この記事では、営業所技術者等(旧:専任技術者)の資格・学歴・実務経験の考え方を整理し、自社で誰を営業所技術者等として置けるのか判断するポイントを解説します。
目次
①営業所技術者等(旧:専任技術者)とは
建設業許可を受けるには、営業所ごとに、許可を受けようとする建設業について一定の資格または実務経験を持つ営業所技術者等を置く必要があります。
東京都外にも建設業の営業所を新設する場合は、新しい営業所にも必要な営業所技術者等を配置したうえで、大臣許可への切替を検討します。
他県に営業所を新設する場合の許可換え新規を見る
たとえば、内装仕上工事業の許可を取るのであれば、内装仕上工事業について要件を満たす人が必要です。電気工事業や管工事業など、別の業種について許可を取る場合は、それぞれの業種に対応する技術要件を確認します。
消防施設工事業について、営業所技術者等になれる資格や指定学科、実務経験の考え方はこちらで詳しく解説しています。
消防施設工事業の営業所技術者等の要件
電気通信工事業について、営業所技術者等になれる資格・学歴・実務経験を具体的に知りたい方はこちらをご覧ください。
電気通信工事業の営業所技術者等の要件
営業所技術者等は何をする人?
営業所技術者等は、建設工事の請負契約が適正に締結され、工事が適切に施工されるよう、営業所において技術面を支える立場の人です。
そのため、「建設会社で働いている人なら誰でもよい」というわけではありません。許可を受ける建設業について、法律で定められた資格や実務経験などの要件を満たしている必要があります。
また、複数の建設業種について要件を満たしている人であれば、同じ営業所で複数業種の営業所技術者等を兼ねることもできます。
現在の営業所技術者等が別の業種についても要件を満たしている場合は、その人材を活用して業種追加できることがあります。
営業所技術者等を活用した業種追加について見る
営業所技術者等の要件を考える前に、自社がどの業種の許可を申請するのかを決めておく必要があります。
自社に必要な許可業種の選び方
「営業所技術者等」と「専任技術者」は何が違う?
以前は「専任技術者」という名称が一般的に使われていましたが、現在は「営業所技術者等」という名称が使われています。
そのため、建設業許可について調べていると、「専任技術者」「専技」という表現が残っている資料や解説を目にすることがあります。
この記事では現在の名称である「営業所技術者等」を基本として説明しますが、旧称の専任技術者について調べている場合も、資格や実務経験を判断する考え方として読み進めることができます。
代表者や役員自身を営業所技術者等にすることもできる
営業所技術者等は、必ず従業員から選ばなければならないわけではありません。代表取締役や役員本人が必要な資格・実務経験などの要件を満たしていれば、その人を営業所技術者等とすることもできます。
また、前の記事で解説した常勤役員等の要件と営業所技術者等の要件を両方満たす人であれば、同一営業所で両者を兼ねることも可能です。
したがって、建設業許可を検討するときは、代表者・役員・従業員の中から候補者を挙げ、誰が許可を取りたい建設業種について技術要件を満たしているかを見ていくことになります。
営業所技術者等以外にも、常勤役員等、財産的基礎、営業所、社会保険など、建設業許可では複数の条件を満たす必要があります。
建設業許可の取得条件・申請要件
②営業所技術者等になるための資格・実務経験を一覧で比較
営業所技術者等になるための方法は、一つではありません。許可を取りたい建設業種に対応する資格を持っている人もいれば、学歴と実務経験を組み合わせる人、実務経験だけで要件を満たす人もいます。
まずは、代表者・役員・従業員などの候補者が、どの方法に当てはまりそうかを確認すると分かりやすいです。
| 主な方法 | 必要な実務経験 |
|---|---|
| 資格だけで要件を満たせる国家資格等 | 不要 |
| 指定学科を卒業した学歴+実務経験 | 学歴に応じた年数 |
| 実務経験のみ | 原則10年以上 |
| 一定の資格・検定+実務経験 | 資格・検定に応じた年数 |

とび・土工工事業について、営業所技術者等になれる資格・学歴・実務経験を具体的に知りたい方はこちらをご覧ください。
とび・土工工事業の営業所技術者等の要件
資格を使う場合は、どの資格でもよいわけではありません。許可を取りたい建設業種に対応する資格かどうかを確認する必要があります。
また、資格がなくても、許可業種に対応する指定学科を卒業していれば、学歴と実務経験を組み合わせて判断できる場合があります。
さらに、資格や指定学科を卒業した学歴がない場合でも、許可を取りたい建設業種について原則10年以上の実務経験があれば、営業所技術者等の要件を満たせる場合があります。
一方で、一定の資格や検定については、資格だけでは足りず、実務経験と組み合わせて判断するものもあります。
そのため、経営者が候補者を選ぶときは、単に「資格を持っているか」「建設会社で長く働いているか」だけを見るのではなく、許可を取りたい建設業種に対して、どの資格・学歴・実務経験が使えるのかを確認することが重要です。
一般建設業から特定建設業へ切り替える場合は、営業所技術者等についても特定建設業側の要件を満たす必要があります。般・特新規を検討している場合はこちらもご覧ください。
特定建設業へ切り替える般・特新規を見る
電気工事業で営業所技術者等になるための資格・実務経験はこちらで解説しています。
電気工事業の営業所技術者等の要件
③資格・学歴・実務経験を判断するときの注意点
営業所技術者等の候補者を確認するときは、資格名や勤務年数だけで判断せず、許可を取りたい建設業種との対応関係まで見る必要があります。
| 確認するポイント | 注意点 |
|---|---|
| 資格 | 取得したい建設業種に対応する資格か |
| 学歴 | 取得したい建設業種に対応する指定学科を卒業しているか |
| 実務経験 | 取得したい建設業種についての経験か |
| 複数の勤務先での経験 | それぞれの勤務先での経験を通算できるか |
資格を使う場合は、その資格が取得したい建設業種に対応しているかを確認します。資格を持っていても、すべての建設業種について営業所技術者等になれるわけではありません。
学歴を使う場合は「卒業しているか」まで確認する
学歴を使う場合は、単に高校や大学で土木・建築を学んでいたというだけでは足りません。許可を取りたい建設業種に対応する指定学科を卒業していることが必要です。
実務上、「高校の土木科を卒業した」と聞いて候補者として検討していたものの、卒業証明書を取得する段階で、実際には中退していたことが分かるケースもあります。
そのため、学歴を使う場合は、本人の申告だけで候補者を決めず、卒業していることまで確認しておく方が安全です。
当事務所では、候補者が複数いるのであれば、取得したい業種に対応する資格を持っている人や、対象業種について10年以上の実務経験がある人を優先して検討することをおすすめしています。
学歴を使う方法も有効ですが、後から卒業歴の確認で問題が出ると、人選をやり直すことになるためです。
高専卒と前職での実務経験を使って、個人事業主が営業所技術者等の要件を確認するケースはこちらで紹介しています。
高専卒と実務経験で建設業許可を目指す個人事業主のケース
実務経験は「建設会社にいた年数」では判断できない
実務経験を使う場合は、建設会社に何年勤務していたかだけでは判断できません。必要なのは、取得したい建設業種についての実務経験です。
たとえば、建設会社に10年間在籍していても、その期間に担当していた工事が今回許可を取りたい業種とは異なるのであれば、その10年間すべてを実務経験として扱えるとは限りません。
また、実務経験は現在の勤務先だけでなく、以前の勤務先での経験を含めて判断できる場合もあります。前職での経験を使う場合については、後ほど詳しく説明します。
④経営者は誰を営業所技術者等として置けばいい?

営業所技術者等を選ぶときは、「社内で一番技術力が高い人」をそのまま候補者にすればよいとは限りません。まず、許可を取りたい建設業種について、資格・学歴・実務経験のいずれかで法定の要件を満たす人を候補者として絞り込む必要があります。
そのうえで、実際の社内体制も踏まえて誰を営業所技術者等として置くか考えます。
技術力が高くても許可要件を満たすとは限らない
たとえば、Aさんは現場経験が豊富で、社内でも技術力を高く評価されているとします。
しかし、取得したい建設業種に対応する資格がなく、その業種について必要な実務経験年数も満たしていなければ、技術力が高いという理由だけで営業所技術者等にすることはできません。
建設業許可では、本人の能力に対する社内評価とは別に、資格・学歴・実務経験について定められた要件を満たしているかで判断します。
要件を満たす人が社内で最も技術力の高い人とは限らない
反対に、Bさんは取得したい建設業種に対応する資格を持っていて、営業所技術者等の要件を満たしているものの、現場ではAさんの方が経験豊富というケースもあります。
この場合、「Aさんの方が仕事ができるから」という理由で要件を満たしていないAさんを営業所技術者等にすることはできません。
一方で、営業所技術者等に選んだ人が、必ず社内で最も技術力の高い人でなければならないわけでもありません。
許可上の要件と、会社として現場で誰を中心に配置するかは、分けて考える必要があります。
候補者が複数いる場合は許可要件と社内体制の両方を見る
候補者が複数いる場合は、まず誰が法定要件を満たしているかを整理します。
そのうえで、担当する建設業種、日頃の業務、今後の人員配置なども考えて、営業所技術者等を決めていくとよいでしょう。
ただし、要件を満たす人の名前だけを借りて置くという考え方ではいけません。 営業所技術者等として選ぶ以上、その人が実際にその立場を担うことを前提に人選する必要があります。
⑤営業所技術者等の退職に備えて後任者も育成しておく

経営者自身が要件を満たさず、従業員を営業所技術者等として置く場合は、その従業員が退職した場合のことも考えておく必要があります。
その人が退職し、ほかに要件を満たす人がいなければ、建設業許可を維持するうえで大きな問題になります。
そのため、待遇や働きやすさを見直して長く在籍してもらえる環境を整えるとともに、資格取得や実務経験の蓄積を進め、後任となる人材を育成しておくことも大切です。
⑥前職での実務経験を使う場合は慎重に進める
営業所技術者等の要件を確認するとき、現在の勤務先だけでは実務経験年数が足りなくても、以前の勤務先での経験を含めて判断できる場合があります。
たとえば、現在の会社で4年、前の会社で6年、同じ建設業種の実務経験があるのであれば、前職での経験を含めて検討することになります。
ただし、前職での経験を使う場合は、現在の会社だけで完結するケースより慎重に進めた方がよいです。
前職でどの工事に何年間携わっていたかを整理する
まず確認したいのは、「前の会社に何年間勤めていたか」ではなく、その期間に、今回許可を取りたい建設業種の工事にどのくらい携わっていたかです。
前職で10年間勤務していても、そのすべてが対象業種の実務経験になるとは限りません。
そのため、勤務期間だけではなく、担当していた工事内容や期間まで整理しておく必要があります。
前職への確認が必要になる場合は、先に行政書士へ相談する
前職での実務経験を使う場合、以前の勤務先への確認が必要になることがあります。
ただ、退職時の事情や会社との関係によっては、突然連絡することで話がこじれることもあります。特に、かなり前に退職した会社や、円満退職ではなかった会社に確認を依頼する場合は注意が必要です。
そのため、前職の経験を使いたい場合は、自分で元勤務先へ連絡する前に、どの期間について何を確認する必要があるのか、行政書士に相談してから進めることをおすすめします。
⑦営業所技術者等についてよくある質問
Q:資格がなくても営業所技術者等になれますか?
はい。資格がなくても、取得したい建設業種について必要な実務経験があれば、営業所技術者等の要件を満たせる場合があります。
また、許可業種に対応する指定学科を卒業している場合は、学歴と実務経験を組み合わせる方法もあります。
Q:10年以上建設会社に勤務していれば要件を満たしますか?
建設会社に10年以上勤務しているだけでは判断できません。
実務経験で要件を満たす場合は、許可を取りたい建設業種について必要な実務経験があることが必要です。
たとえば、建設会社に10年間勤務していても、そのうち対象業種の工事に携わった期間が一部だけであれば、単純に「10年の実務経験がある」とは判断できません。
Q:前の会社での実務経験も使えますか?
前職での実務経験を含めて判断できる場合があります。
ただし、勤務していた年数ではなく、前職で対象となる建設業種の工事にどのくらい携わっていたのかが重要です。
前職への確認が必要になりそうな場合は、元勤務先へ連絡する前に行政書士へ相談することをおすすめします。
Q:代表取締役を営業所技術者等にできますか?
できます。
代表取締役本人が、取得したい建設業種について営業所技術者等の要件を満たしていれば、代表取締役を営業所技術者等として置くことができます。
Q:常勤役員等と営業所技術者等を同じ人が兼ねることはできますか?
できます。
同じ人が常勤役員等の要件と営業所技術者等の要件をそれぞれ満たしている場合は、同一営業所で両者を兼ねることができます。
常勤役員等として必要な経営経験があるから営業所技術者等にもなれる、という意味ではありません。それぞれの要件を別々に判断します。
常勤役員等として必要な経営経験については、常勤役員等(経営業務の管理責任者)の要件で詳しく解説しています。
営業所技術者等が役員や令3条使用人を兼ねている場合は、その立場で欠格要件の確認対象になることがあります。
建設業許可の欠格要件と誠実性
Q:1人で複数業種の営業所技術者等になることはできますか?
できます。
同じ人が複数の建設業種について必要な資格や実務経験などの要件を満たしていれば、同一営業所で複数業種の営業所技術者等を兼ねることができます。
ただし、ある資格が複数業種に対応している場合もあれば、業種ごとに異なる資格・実務経験が必要になる場合もあります。
管工事業で営業所技術者等になるための資格・学歴・実務経験については、こちらの記事で具体的に解説しています。
管工事業の営業所技術者等の要件
Q:技術力のある従業員が要件を満たさない場合はどうすればいいですか?
実際の技術力が高くても、営業所技術者等として必要な資格・学歴・実務経験の要件を満たしていなければ、その人を営業所技術者等として置くことはできません。
この場合は、まず社内にほかの候補者がいないか確認します。
営業所技術者等になる人と、現場で中心となって働く人が必ずしも同じである必要はありません。ただし、要件を満たす人の名前だけを使うのではなく、営業所技術者等として選んだ人が実際にその役割を担うことが前提です。
まとめ
建設業許可を取得するうえで、大きな関門となるのが、常勤役員等と営業所技術者等の要件を満たすことです。
なかでも営業所技術者等は、取得したい建設業種ごとに、資格・学歴・実務経験を確認して候補者を選ぶ必要があり、建設業許可の取得を検討する会社にとって大きなハードルになりやすい要件です。資格がない場合には長期間の実務経験が必要になることもあり、前職での経験を使わなければ要件を満たせないケースもあります。
そのため、営業所技術者等は「経験のある従業員がいるから大丈夫」と簡単に判断できるものではありません。誰が、どの建設業種について、どの方法で要件を満たすのかを早い段階で整理しておくことが重要です。
また、従業員を営業所技術者等として置く場合は、許可を取得した後のことも考える必要があります。特定の一人に要件を依存するのであれば、待遇の改善などによる定着と、将来の後任者の育成もあわせて考えておきましょう。
営業所技術者等の候補者を判断できない場合や、前職での実務経験を使う必要がある場合は、申請を進める前に行政書士へ相談することをおすすめします。
営業所技術者等を含め、建設業許可の取得条件を満たせる見込みが立ったら、必要な準備を進めて新規申請に移ります。
東京都知事の建設業許可を新規申請する方法


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