会社を経営していると、取締役の就任・退任や代表者の交代など、会社の経営体制を変更する場面があります。
このような変更を行った場合、法人では必要に応じて変更登記を行いますが、建設業許可についても変更届が必要です。
この記事では、東京都知事許可を前提に、役員等の就任・退任、代表者の変更、常勤役員等の変更について、必要な届出や書類、手続のポイントを具体的に解説します。
また、複数の変更が同時に発生した場合についても、必要となる手続を整理します。
目次
① 会社・役員の変更で確認する建設業許可の要件と手続
会社では「役員」「代表者」といった言葉を一般的に使いますが、建設業許可では、「役員等」「常勤役員等」など、それぞれ対象となる人の範囲や位置づけが異なります。
会社・役員に変更があったときは、まず建設業許可上、その人がどの立場に該当しているのかを確認します。
建設業法上の「代表者」「役員等」「常勤役員等」とは
代表者
法人を代表する人です。株式会社であれば代表取締役などが該当し、建設業許可の申請書にも代表者として記載します。
役員等
建設業法上の「役員等」には、取締役、業務執行社員、執行役などのほか、これらと同等以上の支配力を有すると認められる者や、相談役・顧問、一定の個人株主等が含まれる場合があります。
そのため、会社の登記上の役員と、建設業法上の「役員等」の範囲は必ずしも一致しません。
建設業の経営業務の管理体制という許可要件を担う人です。
法人では常勤の役員等のうち、必要な経営経験等の要件を満たす人が該当します。
常勤役員等の経験要件や確認資料については、別記事で詳しく解説しています。
建設業許可の常勤役員等の要件
個人事業主の場合は、事業主本人または支配人のうち、必要な経営経験等の要件を満たす人が該当します。
この3つの違いを整理すると、次のようになります。
| 確認項目 | 代表者 | 役員等 | 常勤役員等 |
|---|---|---|---|
| 位置づけ | 許可申請者である法人を代表する人 | 法人の経営への関与・支配という観点から建設業法上確認される人 | 建設業の経営業務の管理体制という許可要件を担う人 |
| 法人の場合 | 代表取締役など | 取締役、業務執行社員、執行役等のほか、相談役・顧問や一定の個人株主等も含まれる場合がある | 常勤の役員等のうち、必要な経営経験等の要件を満たす人 |
| 個人事業主の場合 | 事業主本人 | 事業主本人など | 事業主本人または支配人のうち、必要な経営経験等の要件を満たす人 |
| 具体的には誰か | 許可申請書に代表者として記載した人。変更している場合は、直近の変更届を反映した現在の代表者 | 別紙一「役員等の一覧表」に記載する人。変更している場合は、直近の変更届を反映した現在の役員等 | 様式第7号または第7号の2等で届け出ている人。変更している場合は、直近の変更届を反映した現在の常勤役員等 |
| 変更時の主な確認ポイント | 代表者の変更だけか、役員等の就任・退任も伴うか | 誰が新たに役員等になり、誰が役員等でなくなるのか | 後任者が経営業務の管理体制に関する許可要件を満たしているか |

同じ人が複数の立場を兼ねている場合
「代表者」「役員等」「常勤役員等」はそれぞれ定義が異なりますが、同じ人が複数の立場を兼ねることがあります。
たとえば、代表取締役が「代表者」であると同時に建設業法上の「役員等」に該当し、さらに要件を満たして「常勤役員等」を兼ねているケースです。
この場合、一人の人事変更によって、代表者・役員等・常勤役員等の複数の変更が同時に発生することがあります。
そのため、人事変更があったときは、その人がどの立場を兼ねているのかを確認し、代表者・役員等・常勤役員等のそれぞれについて変更が生じるかを確認します。
会社の売却に伴って代表者や役員が交代する場合も同様です。現在の経営者が常勤役員等を兼ねている場合は、退任後も建設業許可の要件を満たせるか確認する必要があります。
建設会社を売却する場合の建設業許可については、「建設会社を売る・事業を譲ると建設業許可はどうなる?」で詳しく解説しています。
次に、変更内容ごとにどの届出が必要になるのかを整理します。
② 役員等・代表者・常勤役員等の変更と必要な届出
会社で人事変更があった場合、誰が変わったかだけでなく、その人が建設業許可上どの立場にあるのかによって必要な届出が変わります。
まず、主な変更と届出の関係を整理すると次のとおりです。
| 変更内容 | 役員等の変更 | 代表者の変更 | 常勤役員等の変更 |
|---|---|---|---|
| 役員等が就任した | 〇 | △ | △ |
| 役員等が退任した | 〇 | △ | △ |
| 代表者を変更した | △ | 〇 | △ |
| 常勤役員等を変更した | △ | △ | 〇 |
〇:その変更について届出が必要
△:役員等・代表者・常勤役員等の兼任状況や、同時に行われる人事変更によって届出が必要
〇と△の考え方
役員等が就任・退任した場合は、役員等の変更を届け出ます。
その人が代表者や常勤役員等にもなる場合、または退任によってそれらの立場からも外れる場合は、代表者や常勤役員等についても変更が生じるため△としています。
代表者を変更した場合は、代表者の変更を届け出ます。
ただし、代表者の交代と同時に新しい取締役が就任したり、旧代表者が取締役からも退任したりすれば、役員等の変更も発生します。 また、代表者が常勤役員等を兼ねていて、その立場も交代する場合は常勤役員等の変更も必要です。
常勤役員等を変更した場合は、常勤役員等の変更を届け出ます。
前任者・後任者について役員等としての就任・退任も発生する場合や、代表者も同時に交代する場合には、それぞれの変更についても届出が必要になります。
つまり、一人の人事変更でも、「役員等」「代表者」「常勤役員等」のどの立場が変わったのかを一つずつ確認することがポイントです。
次から、それぞれの変更について必要な手続と書類を具体的に見ていきます。
③ 役員等の就任・退任があった場合
建設業法上の役員等が新たに就任した場合や退任した場合は、役員等の変更を届け出ます。
法人の取締役など登記事項となる役員に変更があった場合は、先に役員変更の登記を行い、その内容を反映した登記事項証明書を準備して、建設業許可の変更届を行います。
建設業許可の変更届に使用する様式は、東京都都市整備局のWebサイトからダウンロードできます。
以下では、東京都が公開している様式名に沿って説明します。
東京都都市整備局「建設業許可 手引、申請書類等」
役員等が就任した場合
新たに取締役などが就任した場合は、建設業許可についても役員等の就任を届け出ます。
主な書類は次のとおりです。
- 変更届出書(様式第22号の2・第一面)
- 役員等の一覧表(別紙一)
- 役員等の氏名、生年月日等に関する調書(様式第12号)
- 誓約書(様式第6号)
- 許可申請者の住所、生年月日等に関する調書(様式第12号)
- 登記事項証明書
- 身分証明書
- 登記されていないことの証明書(※一定の場合は、医師の診断書による取扱いがあります。)
新任者については、氏名を追加するだけではなく、建設業法上の欠格要件に該当しないことを確認するための書類も必要になります。
なお、「役員等」に該当する人でも、その立場によって必要となる確認書類が異なる場合があります。
役員等が退任した場合
取締役などが退任した場合は、建設業許可についても役員等の退任を届け出ます。
主な書類は次のとおりです。
- 変更届出書(様式第22号の2・第一面)
- 登記事項証明書
- 役員等の一覧表(別紙一)など、役員等の変更を伴う場合に必要となる書類
退任の場合は、新任者について行う欠格要件の確認がないため、就任の場合とは必要書類が異なります。
なお、退任する人が代表者や常勤役員等を兼ねている場合など、複数の立場に変更が生じるケースについては、後ほどまとめて説明します。
④ 代表者を変更した場合
代表取締役など、建設業許可で届け出ている代表者を変更した場合は、代表者の変更を届け出ます。
法人の場合は代表者変更の登記を行い、その内容を反映した登記事項証明書を準備して、建設業許可の変更届を行います。
なお、会社そのものは変わらず、父から子へ代表者を交代するような場合は、通常は事業承継の「承継認可」を行うわけではありません。一方、個人事業や建設事業そのものを後継者や別会社へ引き継ぐ場合は扱いが異なります。「建設業許可の事業承継・承継認可」で、この違いをケース別に整理しています。

代表者の変更に必要な書類
主な書類は次のとおりです。
- 変更届出書(様式第22号の2・第一面)
- 役員等の一覧表(別紙一)
- 登記事項証明書
代表者の変更では、新旧の代表者が役員等として残るのか、それとも役員等の就任・退任も伴うのかによって、必要な届出や書類が変わります。
代表者だけを変更する場合
たとえば、代表取締役Aから既存の取締役Bへ代表権を移し、A・Bとも引き続き取締役として残るケースです。
この場合、建設業許可上は代表者の変更を届け出ます。A・Bの役員等としての地位には変更がないため、役員等の就任・退任は発生しません。
一方、新しい代表者の取締役就任や、旧代表者の取締役退任を伴う場合は、代表者変更に加えて役員等の変更も発生します。
このように複数の変更が同時に発生するケースは、後ほどまとめて説明します。
⑤ 常勤役員等を変更する場合

常勤役員等を変更する場合は、まず後任者が経営業務の管理体制に関する許可要件を満たしているかを確認します。
常勤役員等は建設業許可の要件に関わるため、単に後任者を決めて変更届を提出すればよいわけではありません。後任者について、必要な経営経験や常勤性などを確認したうえで手続を進めます。
常勤役員等の詳しい要件や確認方法については、別記事で解説しています。
建設業許可の常勤役員等(経営業務の管理責任者)の要件
常勤役員等の変更に必要な書類
常勤役員等の変更では、後任者がどの要件で常勤役員等になるのか、役員等としての就任・退任も伴うのかによって必要書類が変わります。
主な書類は次のとおりです。
- 常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書(様式第7号)
- 常勤役員等の略歴書(様式第7号別紙)
- 常勤性を確認する資料
- 経営経験を確認する資料
- 役員等の就任・退任を伴う場合は、その変更に必要な書類
経営業務の管理体制を補佐者を置く体制で確保している場合などは、様式第7号の2や補佐者に関する書類が必要になります。
また、後任者が新たに取締役へ就任する場合や、前任者が取締役からも退任する場合などは、常勤役員等の変更だけでなく役員等の変更も発生します。
こうした複数の変更が同時に発生するケースについては、次のセクションでまとめて説明します。
⑥ 複数の変更が同時に発生する場合
一人の人事変更でも、その人が複数の立場を兼ねている場合などは、複数の変更が同時に発生することがあります。
この場合は、「誰が交代したか」だけではなく、役員等・代表者・常勤役員等のどの立場に変更が生じたのかをそれぞれ確認します。

代表的なケースを整理します。
・新任の役員等が代表者になる場合
たとえば、社外のBが新たに取締役へ就任し、同時に代表取締役になるケースです。
この場合は、役員等の就任と代表者の変更をそれぞれ届け出ます。
新たに役員等となるBについては、役員等の就任に必要な書類も準備します。
・代表者と常勤役員等を同時に変更する場合
たとえば、代表取締役兼常勤役員等のAから、既存の取締役Bへ代表者と常勤役員等の両方を引き継ぐケースです。
A・Bとも取締役として残るのであれば、代表者の変更と常勤役員等の変更を届け出ます。役員等としての就任・退任は発生しません。
・代表者・役員等・常勤役員等がすべて変更になる場合
たとえば、代表取締役兼常勤役員等のAが取締役からも退任し、新たにBが取締役へ就任して、代表取締役兼常勤役員等になるケースです。
この場合は、次の変更が同時に発生します。
- Aの役員等としての退任
- Bの役員等としての就任
- 代表者の変更
- 常勤役員等の変更
⑦ 変更届の期限
役員等・代表者・常勤役員等の変更では、変更内容によって届出期限が異なります。
特に、代表者兼常勤役員等の交代など、複数の変更が同時に発生する場合は、それぞれの変更事項について、令和8年度の東京都の手引で提出期限を確認して手続を進めます。
変更事項ごとの届出期限や、変更届全体の手続については、次の記事で一覧にまとめています。
建設業許可の変更届|変更事項別の期限・必要書類を解説
役員等・代表者・常勤役員等の変更届を出し忘れていた場合や、更新前に未提出が見つかった場合の対応はこちらで解説しています。
役員変更の届出を出し忘れた場合の対応を確認する
⑧ 特定建設業・国土交通大臣許可との相違点
ここまで東京都知事・一般建設業を前提に説明してきましたが、役員等・代表者・常勤役員等の変更について、基本的な考え方は特定建設業でも同じです。
一般建設業と特定建設業では財産的基礎や営業所技術者等の要件などに違いがありますが、今回説明している役員等の就任・退任、代表者の変更、常勤役員等の変更という手続の考え方に基本的な違いはありません。
国土交通大臣許可の場合も、これらの変更を届け出る基本的な考え方は同じです。
ただし、届出先や提出方法などは東京都知事許可と異なるため、国土交通大臣許可を受けている場合は、管轄する地方整備局等の案内を確認して手続を行います。
⑨ よくある質問
Q:非常勤の取締役が変わった場合も届出が必要ですか?
はい。非常勤の取締役であっても、建設業法上の「役員等」に該当するため、就任・退任した場合は変更届が必要です。
一方、常勤役員等は常勤であることが前提のため、非常勤の取締役は常勤役員等には該当しません。
Q:議決権の5%以上を持つ個人株主が変わった場合も届出が必要ですか?
議決権の5%以上を有する個人株主については、その人が建設業法上の「役員等」に該当するかを確認する必要があります。該当する場合は、その変更について必要な届出を行います。
Q:常勤役員等と代表者は同じ人でなければいけませんか?
いいえ。代表者と常勤役員等は別の立場であり、必ず同じ人である必要はありません。
代表取締役が常勤役員等の要件を満たして両方を兼ねることもあれば、別の常勤取締役などが常勤役員等になることもあります。
Q:役員等が変わらなくても、常勤役員等だけを変更できますか?
はい。役員等としての地位に変更がなくても、後任者が常勤役員等の要件を満たしていれば、常勤役員等だけを変更することができます。
常勤役員等は、役員等とは別に、建設業の経営業務の管理体制に関する許可要件を担う人として届け出ているためです。
たとえば、取締役A・Bがともに役員等として残ったまま、常勤役員等をAからBへ変更する場合は、常勤役員等の変更を届け出ます。
この場合、後任のBが常勤役員等の要件を満たしていることを事前に確認する必要があります。
Q:商号や資本金を変更した場合も変更届が必要ですか?
はい。商号や資本金額を変更した場合も、建設業許可の変更届が必要です。
商号・資本金を含む変更事項ごとの届出については、別記事でまとめています。
建設業許可の変更届|変更事項別の期限・必要書類を解説
役員等・代表者・常勤役員等の変更でお困りの場合
役員等の就任・退任や代表者の変更では、変更内容や兼任状況によって必要な届出が変わります。
また、常勤役員等を変更する場合は、後任者が経営業務の管理体制に関する要件を満たしているかの確認も必要です。
IT行政書士事務所では、大田区・品川区を中心に、東京都知事許可の各種変更届をサポートしています。
「どの変更届が必要か分からない」「複数の変更が同時に発生した」という場合も、お気軽にご相談ください。
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